1965 ABARTH CARS|アバルトの歴史を刻んだモデル No.064

1965 ABARTH CARS
1965年のアバルトモデル

アバルトを象徴する写真のクルマたち

アバルトファンであれば、創始者のカルロ・アバルトがリンゴを片手に数々のモデルの前で微笑んでいる写真(タイトル画像)を目にしたことがあるだろう。往年のアバルトを象徴する写真だけに、雑誌やこのAbarth Scorpion Magazineにもたびたび登場している。撮影されたのは1965年時点のモデルだが、この時代のモデルが一堂に会した写真は意外と数が少なく、貴重な1枚といえる。

そこで今回は、この画像に写っているそれぞれのモデルを紹介していきたい。なお、多くのモデルは本連載ですでに紹介しているため、紹介済みのモデルについては各モデルのページにリンクを設けてある。

1965年フィアット・アバルトOT1600スポルト・スパイダー

前列右のレーシングカーは、アバルトがツーリングカーならびにGTカーと共に注力していたスポーツカークラスに向けて製作された「OT1600スポルト・スパイダー」である。1965年5月にシチリア島で行われた世界選手権のタルガフローリオでデビューを果たし、大排気量マシンを相手にクラス優勝、総合でも6位という活躍をみせた。その後もスポーツカーレースやヒルクライムで数多くの栄光を勝ち取り、アバルトの名を世界に広める貢献をした。

全長3760mm×全幅1570mm×全高1010mm、ホイールベース2015mm、車両重量590kg
エンジン形式:水冷直4 DOHC、総排気量1592cc、最高出力172hp/8000rpm、変速機6速MT+後進1速、最高速度240km/h


1965年フィアット・アバルトOT1600スポルト・スパイダー

1965年フィアット・アバルトOT1000クーペ

最前列中央でカルロ・アバルトを浮き立たせるようなホワイトの車両は、アバルトの大ヒット作となった「フィアット・アバルトOT1000クーペ」。フィアット850クーペをベースに、排気量を982ccに拡大するなど“アバルトマジック”を施し、1965年のフランクフルトショーで発表。最高出力は47hpから62hpへと高められ、最高速度も155km/hに向上。手頃な価格で痛快な走りと個性的なスタイリングが手に入ることからアバルトのベストセラーモデルとなった。

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全長3608mm×全幅1500mm×全高1300mm、ホイールベース2027mm、車両重量730kg
エンジン形式:水冷直4 OHV、総排気量982cc、最高出力62hp/6150rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度155km/h


1965年フィアット・アバルトOT1000クーペ

1965年フィアット・アバルトOT1000スパイダー

前列左の赤いスタイリッシュなオープンモデルは、フィアット・アバルトOT1000クーペと同時にデビューした「フィアット・アバルトOT1000スパイダー」だ。フィアットは主力の850にベルリーナのほか、クーペとスパイダーのバリエーションを用意し人気を博す。これに倣いアバルトもそれぞれのタイプにOT1000を用意。エンジンはクーペと同じ最高出力は62hpながら、空気抵抗が少ないため最高速度は5km/h増しの160km/hをマークした。

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全長3780mm×全幅1500mm×全高1220mm、ホイールベース2027mm、車両重量725kg
エンジン形式:水冷直4 OHV、総排気量982cc、最高出力62hp/6150rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度160km/h


1965年フィアット・アバルトOT1000スパイダー

1965年フィアット・アバルト595 SS

2列目の右端に置かれたモデルは、現在にその名を受け継がれている「フィアット・アバルト595 SS」だ。1965年にベースのフィアット500がマイナーチェンジを受け、ドアが前開きから一般的な前ヒンジ式に変更されたのを受けてアバルトもすぐに対応した。ラインアップはベースグレードが廃止され、ハイパワー版の595 SSのみの設定となった。595 SSは大きなキャブレターと吸排気系の見直しにより最高出力は32hpを発生し、最高速度は130km/hをマークした。

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全長2970mm×全幅1320mm×全高1300mm、ホイールベース1840mm、車両重量470kg
エンジン形式:空冷並2 OHV、総排気量593.707cc、最高出力32hp/6000rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度130km/h


1965年フィアット・アバルト595SS

1965年フィアット・アバルトOT1300

2列目右から2台目の背の低い赤のマシンは「フィアット・アバルトOT1300」。1300cc 以下のGTクラスで圧倒的な強さを見せたアバルト・シムカ1300の後継モデルとして1965年に登場した。リアに積む排気量1289.5ccの水冷DOHC直列4気筒エンジンは最高出力147hpを発生。デビュー以降、圧倒的な強さを発揮しワールドチャンピオンを勝ち取った。その機能と美を両立したデザインは、今も愛好家の間で高い評価を得ている。

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全長3830mm×全幅1620mm×全高1040mm、ホイールベース2015mm、車両重量655kg
エンジン形式:水冷直4 DOHC、総排気量1289.5cc、最高出力147hp/8800rpm、変速機5速MT+後進1速、最高速度245km/h


1965年フィアット・アバルトOT1300

1958年フィアット・アバルト500レコード

2列目の黄色い流線型のマシンは「フィアット・アバルト500レコード」。アバルトは1956年頃から高速で長時間連続走行し、車両の高性能さと耐久性の高さをアピールする速度記録に挑戦する。まず750ccクラスで新記録を樹立し、1000ccクラスでも記録を更新。続いてフィアット500のエンジンを使って500ccクラスに挑んだ。エンジンが小排気量のため、それに合わせてピニンファリーナが専用設計したコンパクトなボディを用意。結果、見事新記録を樹立した。

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全長4130mm×全幅1410mm×全高1200mm、ホイールベース2000mm、車両重量370kg
エンジン形式:空冷並2 OHV、総排気量479cc、最高出力36hp/6800rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度180km/h


1958年フィアット・アバルト500レコード

1959年フィアット・アバルト750/1000レコード

2列目の左端に並ぶ銀色の流線形のマシンはフィアット・アバルト750 / 1000レコード。それまでベルトーネ製ボディが採用されていたが、1959年からは自社で風洞を所有するピニンファリーナに変更。空気抵抗を大幅に削減することに成功し、750ccと1000ccクラスで新記録を打ち立てた。撮影時点で他マシンに比べて古かったが、カルロ・アバルトが入れ込んでいた速度記録を打ち立てた記念すべき1台ということで、あえて車列に加えたと思われる。

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全長4550mm×全幅1550mm×全高1200mm、ホイールベース1785mm、車両重量510kg
エンジン形式:水冷直4 DOHC、総排気量747/982cc、最高出力75hp/7300rpm-108hp/8000rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度215/220km/h


1959年フィアット・アバルト750 / 1000レコード

1965年フィアット・アバルトOTS1000クーペ

後列右端でシックなスレートグレーに塗られたクーペは、「フィアット・アバルトOTS1000クーペ」である。アバルトはOT1000クーペに続き、より高性能版でレースのホモロゲート取得用のOTS1000クーペを追加した。OT1000のチューニングを高めて最高出力を68hpまで引き上げた。またフロントにラジエターを配置し、『FIAT ABARTH 1000』と記されたアクリル製プレートの下にラジエターグリルが設けられたのがスタイリング上の特徴となる。

全長3608mm×全幅1500mm×全高1300mm、ホイールベース2027mm、車両重量730kg
エンジン形式 水冷直4 OHV、総排気量982cc、最高出力68hp/6400rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度160km/h


1965年フィアット・アバルトOTS1000クーペのカタログ

1965年フィアット・アバルトOT1000ベルリーナ

3列目右から2台目の白い車両は、「フィアット・アバルトOT1000ベルリーナ」。フィアット 600の進化版となるフィアット 850が登場した際、アバルトはその素性の良さを見抜き、デビュー2カ月後にアバルト版を製作。まずは、排気量はそのままに最高出力をフィアット850の34hpから42hpにまで高めた「OT850」を送り出し、続いて排気量を982ccにアップした「OT1000」を追加。最高出力は54hpまで引き上げられ、フロントにディスクブレーキを採用した高性能版として人気を集めた。

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全長3575mm×全幅1425mm×全高1357mm、ホイールベース2027mm、車両重量674kg
エンジン形式 水冷直4 OHV、総排気量982cc、最高出力54hp/5200rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度150km/h


1965年フィアット・アバルトOT1000ベルリーナ

1963年フィアット・アバルト1000ビアルベーロ

3列目左から2台目の赤いGTマシンは、アバルトの名を世界に知らしめた傑作モデル「1000ビアルベーロ」である。フィアット600のフロアパンをベースにアルミボディを架装し、リアにアバルト自製のビアルベーロ(DOHC)エンジンを搭載、GT1000ccクラスを制圧した。撮影時点ではやや旧式となった1963年モデルだが、カルロ・アバルトとしてはアバルトの名声を確立した傑作モデルということで、ここに並べたと思われる。

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全長3480mm×全幅1410mm×全高1165mm、ホイールベース2000mm、車両重量570kg
エンジン形式 水冷直4 DOHC、総排気量982cc、最高出力102hp/7000rpm、変速機5速MT+後進1速、最高速度218km/h


1963年フィアット・アバルト1000ビアルベーロ

1965年フィアット・アバルト1000TCコルサ

後列の左端は、アバルトを象徴するツーリングカーである「フィアット・アバルト1000TCコルサ」だ。ベーシックカーのフィアット600をベースに、アバルトがチューニングしたのがTCシリーズ。レース用にさらにチューニングされたのが1000TCコルサとなる。ノーズにラジエターをカバーするフェアリングが取り付け、982ccのエンジンは最終的に85hpにまで高められ、ツーリングカーレースの1000cc以下クラスで圧倒的な強さを見せつけた。

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全長3530mm×全幅1390mm×全高1400mm、ホイールベース2000mm、車両重量583kg
エンジン形式 水冷直4 OHV、総排気量982cc、最高出力85hp/7600rpm、変速機4速MT+後進1速、最高速度195km/ h


1965年フィアット・アバルト1000TCコルサ