1961 FIAT ABARTH 2400 Coupé Allemano|アバルトの歴史を刻んだモデル No.041

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1961 FIAT ABARTH 2400 Coupé Allemano
フィアット・アバルト2400 クーペ・アレマーノ

カルロが愛したグランツーリズモ

それまで小型車を中心に展開していたフィアットが、1959年にEセグメント(ミドル-ラージクラス)に向けて送り出した新型車「フィアット1800/2100ベルリーナ」。アウレリオ・ランプレディが設計した直列6気筒エンジンは、OHVながら、ダブルロッカーアームを備え、半球形燃焼室を採用するなどレーシングマシン並みの凝ったメカニズムを持ち、このエンジンを強みとしてフィアットは新たなマーケットを切り開いていった。

フィアット1800/2100ベルリーナの登場を機に、カルロ・アバルトもまた、それまで未知の領域だった大排気量グランツーリズモの開発に力を注いだ。コルソ・マルケ(マルケ通り/かつてアバルトが本社工場を構えた)の開発部門ではフィアット2100のエンジンをベースに改良を施し、ボアを77mmから79mmに延ばし、排気量を2162ccへとスケールアップした改良型エンジンが誕生した。さらに燃焼室形状の最適化と吸気抵抗を減らしたインテークポートが採用され、圧縮比は7.8:1から9.5:1へとアップ。また、3基のウェーバー40DCOEキャブレターを組み合わせたことで、最高出力は135HPを発生した。

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フィアット・アバルト2400 クーペ・アレマーノ登場時のオフィシャルフォト。こちらは初期型のシリーズ1で、せり出したヘッドライトにクロームのリングを備えるのが特徴。スチール製のホイールは、メッキのセンターキャップで加飾された。

シャシーはフィアット2100ベルリーナのプラットフォームをベースに、ホイールベースを200mm縮めた2450mmとされた。先にデビューしたフィアット・アバルト850クーペ・アレマーノと同様にミケロッティがデザインを担当し、カロッツェリア・アレマーノが製作した端正な2+2のクーペボディが架装された。その高性能グランツーリズモは、「フィアット・アバルト2200 クーペ・アレマーノ」と名付けられた。また、ボディバリエーションとして同様にミケロッティとアレマーノが手掛けたオープンタイプのカブリオレも用意された。

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こちらは先に登場したフィアット・アバルト2200カブリオレ・アレマーノ。スタイリングは2400シリーズ1と同じラインのエレガントなもの。

こうして豪華絢爛なパーソナルクーペとして送り出されたフィアット・アバルト2200 クーペ・アレマーノは、端正なスタイリングとアバルトならではのパフォーマンスにより他の追随を許さない、圧倒的な存在となった。ボディサイズは全長4610mm×全幅1620mm×全高1280mmと堂々たるもので、身長190cm近い大柄のカルロ・アバルトにとってもゆとりのあるキャビンスペースが確保されていた。車重は1050kgとフィアット2100に比べ200kgも軽く仕立て上げられており、最高速度は当時としてはトップクラスとなる197km/hをマークした。

フィアット・アバルト2200 クーペ・アレマーノは、1959年のトリノショーで、カブリオレともにデビューを果たした。当時の販売価格はクーペが299万5000リラ(現在の価値で約2,965万円)で、カブリオレが309万5000リラ(約3,064万円)ときわめて高価だったが、自動車メーカーとしてのアバルトの知名度をさらに拡大することに成功した。

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フィアット・アバルト2200 クーペ・アレマーノのインテリアは、当時のイタリアンデザインに則ったもの。そこにアバルトの精緻さが加わり、自動車ファンを魅了した。2400にもほぼ同じデザインが踏襲された。

1961年、フィアット2100がマイナーチェンジで2279ccに排気量が拡大したことを受け、アバルトはさらに排気量を拡大し、2323ccへと高めた「フィアット・アバルト2400クーペ・アレマーノ」を発表した。そのエンジンは軽量ピストンを採用し、3基のウェーバー38DCOEキャブレターやツイン・テールパイプのマルミッタ・アバルト(エグゾーストシステム)を組み合わせることにより、最高出力142HP/5800rpmを発生。最高速度はついに200km/hをマークするに至った。

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フィアット2300Sのエンジンをベースに、アバルト・マジックにより、排気量が2322ccへとスケールアップしたエンジン。シリンダーヘッドは燃焼室形状の最適化と吸気抵抗を減らしたインテークを与え、3基のウェーバー38DCOEキャブレターを組み合わせ、最高出力142HPを発生した。

1962年にはさらに改良が実施され、フロントのヘッドライト回りのデザインがモダナイズされたシリーズ2へと進化、よりエレガントなたたずまいとなった。営業面では、フィアット2300Sクーペが260万リラ(現在の価値で約2,574万円)であったのに対し、アバルト2400は331万4千リラ(約3,277万円)と高価だったため販売は伸び悩み、本物を求める一部のクルマ好きに支持されるという状況だった。

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2008年11月にトリノで開催されたカルロ・アバルト生誕100周年イベントにフィアット・アバルト2400クーペ・アレマーノが展示された時のショット。この時は前オーナーが所有していた時で、モナコのライセンスプレートを付けていた。

フィアット・アバルト2400クーペ・アレマーノを語るうえで欠かすことができないのは、カルロ・アバルトがパーソナルカーとして愛用したという点だ。アバルトの動く広告塔としての意味合いもあり、その車両はレッドのボディカラーにダークレッドのインテリアという華やかな組み合わせとされ、アバルトパターンのカンパニョーロ製エレクトロンホイールを履いたスタイリッシュな仕立てとされた。カルロ自身のデイリーユースのほか、故郷ウイーンまでの長距離旅行にも使用したという。カルロはフィアット・アバルト2400クーペを相当気に入っていたようで、1964年のジュネーブ・モーターショーのアバルト・ブースにも展示した。

Heritage booth - retromobile Show - Paris
フィアット・アバルト2400クーペ・アレマーノはカルロ・アバルトのパーソナルカーとしても使用された。カルロ用の2400クーペはレッドのボディカラーにアバルトホイールを組んでいた。

カルロ亡き後はアンネリーゼ夫人が車両を受け継いだ。その後手放され、1998年11月にロンドンで開かれたクリスティズ・オークションに出品されて新たなオーナーの元へ渡ったが、現在はFCAヘリテージ部門が保持している。最近では2018年2月にパリで開催されたレトロモビルで展示されたので、目にした方も多いことだろう。

1961 FIAT ABARTH 2400 Coupé Allemano Serie 2

全長:4610mm
全幅:1620mm
全高:1280mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1075kg
エンジン形式:水冷直列6気筒OHV
総排気量:2323cc
最高出力:142HP/5800rpm
変速機:4段マニュアル
タイヤ:155R14
最高速度:200km/h