SPECIAL INTERVIEWS: 大賀裕介選手
<ABARTH DRIVING ACADEMY>のインストラクターでもある大賀裕介選手は、mCrt(ムゼオ・チンクエチェント・レーシング・チーム)の『ABARTH 695 ASSETTO CORSE(アセットコルセ)』を駆ってスーパー耐久レースを戦うレーシング・ドライバー。現在29歳の大賀選手は、世代的にはスポーツ・モデルに関心がなかっただけじゃなく最もクルマ離れが激しかった、と自分達の世代を分析する。ところが今では、ABARTHにしっかり惚れ込んでいる様子。それはいったいなぜ?大賀選手に語っていただくことにしよう。
−−クルマは昔からお好きだったんですか?
「僕は好きでした。2級整備士の資格も持ってるんですよ。最初は触るのが好きで、学校に通って資格を取ったんです。でも、それと同じくらいのタイミングで初めて鈴鹿で<スーパーGT>のレースを見て、レーシング・ドライバーになりたい!ってコロッと頭が切り替わっちゃったんです。19歳くらいだったかな?免許取り立ての頃で、普通のミニバンに乗ってました。」
−−ミニバンですか?
「僕達の世代にはスポーツカーっていう選択肢はなかったんですよ。ミニバンか安い軽自動車かどっちか。一番クルマ離れが激しかった世代かも知れませんね。もうちょっと若い世代だと免許を取る頃には『86』だったりとかの選択肢ができていたんで、スポーツカーに関心を持つ人も僕達の世代よりは多いみたいですね。」
−−若いレーシング・ドライバーの中には、レースが好きなのであってクルマが好きなわけじゃないという人も少なくないようですけど、同じように大賀さんも、今もスポーツカーにはあまり関心はないんですか?
「普段のアシは、やっぱり便利なクルマにしちゃっています(笑)。何台も持てないですからね。でも、<スーパー耐久レース>でABARTHに乗っているのが縁で、<ABARTH DRIVING ACADEMY>のようなイベントで市販モデルに乗ったりすると、所有したくなる気持ちがグッと強くなりますね。走らせるとにかく楽しくて、一気に惹かれちゃいます。」
−−具体的にはどんなところに惹かれますか?
「まずはエンジンの力強さ。コンパクトなボディからはちょっと想像できないですね。1.4リッターには、とても思えないです。かわいいなと思いながらアクセルを踏んだら、2クラスぐらい上のクルマの速さを見せてくれるから、最初はずいぶんビックリしました。それからコンパクトでホイールベースが短いこともあって、とてもキビキビと走ってくれます。5リッターのエンジンとかを積んだ車重の重いクルマでは絶対に味わえないところですね。自分の頭の中に湧いてくるイメージに近い感じで動いてくれて、狙ったところを走っていけるから、手足のように操れるような楽しさも感じられます。こういうクルマを作るのって、とても難しいと思うんですよね。素晴らしくよくできていると思います。このルックスでこれだけスポーティな走りができるクルマっていうのは、日本車でもほかの輸入車でも、まずないですからね。唯一このABARTHだけ。これならおそらく、僕と同じ世代やちょっと下の世代の人が何かキッカケがあって乗ってみたりすると、結構ハマるんじゃないかな、なんて思いますね。」
−−え?それはどういうことですか?
「変な言い方かも知れませんけど、僕達の世代はスポーツカーに憧れを持たないで大人になった世代だから、あんまり尖った、いかにもスポーツカーらしいルックスよりも、見た目がかわいくてお洒落なこういうスタイルのクルマの方がすんなりと受け入れやすいところがあると思うんです(笑)。それに、クルマは便利だから乗るっていう考え方が根強かったりするととこもあるんですけど、ABARTHは実用性もちゃんとある。そういう意味ではピタリとはまる。ちょうど良い存在なんですね。そのうえ走らせて楽しいか楽しくないかはわりと誰でも解ることでしょう?僕達世代はそういうクルマの原体験がなかったっていうだけのことで、楽しい方がいいのは誰もが同じだと思うんですよ。」
−−スポーツカーに関心がなかった世代ということは、スポーツ・ドライビングにもあまり興味がなかった世代ということですよね? そういう人達にとっては、ABARTHは難しいクルマに思えたりしそうですね?
「レース仕様はまた別ですけど、市販のABARTHをドライブすること自体はちっとも難しくないですよね。それに市販モデルは電子制御がとても優秀だから、サーキットを走ってもまずスピンしないです。少々無理してもクルマがカバーしてくれますから。<ABARTH DRIVING ACADEMY>のようなイベントでも、初めてサーキットに来たような人が180km/hを超えるスピードで走って、それでもクラッシュがないでしょう?怖かったっていう人はいなくて、皆さん、楽しかったってニコニコしながら帰って行かれる。それは僕達インストラクターの教え方がどうということじゃなくて、クルマに助けられているところが大きいんです。その電子制御は運転する楽しさを全く邪魔せずにスポーツ・ドライビングをすることを許してくれて、その先の本当に危険な領域にいって初めてちゃんと止めてくれる。そういう面も、ABARTHの素晴らしいところですね。」
−−ということは、大賀さんや大賀さんより若い世代にもABARTHはマッチする、と?
「むしろ若い人にこそ乗って欲しいですね。だって、こんなに走りが楽しめて、こんなに万能なクルマは他にないですよ。普段乗りは苦もなく普通にできるし、荷物も積めるし、お洒落でかわいいし、いざサーキットに持ってくれば、そのままで通用して楽しく速く走れちゃう。それにビュンビュン連続走行しても、クルマがへこたれないんです。傷むのは消耗品ぐらいなんですよ。そんなクルマ、他にはほとんどないですからね。いや、ないわけじゃないけど、大抵の場合はすごく高価だし、やっぱり実用性の面ではABARTHの方が上。そう考えると、ABARTHってものすごくリーズナブルなんですよね。このパッケージって、本当に凄いと思います。同世代の中にも運転する喜びっていうのを知らない人もたくさんいると思うんですけど、1回ぜひ乗ってみて欲しいですね。スポーツ・ドライビングっておもしろいんだな、ABARTHってホントに楽しいんだな、って気づくと思います。<ABARTH DRIVING ACADEMY>と併催で、オーナーじゃない方でも市販モデルに試乗できたりサーキットで僕達の走らせるアバルトに同乗試乗していただける<ABARTH DRIVING EXPERIENCE PLUS>という試乗会が開催されてるので、ぜひ体験していただきたいです。」
Text:嶋田智之
Photos:YosukeKAMIYAMA