アバルトエピソード集:なぜアバルトは“小さな巨人”であり続けるのか
“唯一無二”の存在であり続ける
“小さなクルマ”で世界を驚かせ続けるアバルト。かわいらしさとスリリングな走りを兼ね備えたそのクルマは、これまで世界中のドライバーを熱狂させてきたが、アバルトの活躍の場は路上だけにとどまらない!? 下の写真をご覧いただきたい。どう見てもアバルトなのに、その舞台は路面ではなく、なんと海の上なのだ。
実はこれ、アバルトとイタリアのボートメーカー「CAR OFF SHORE」とのコラボレーションによって誕生したもの。2024年、モナコで開催された自動車ショー「トップマルケス」で発表された。製造はCAR OFF SHOREが担当し、デザインはアバルト・チェントロスティーレ(アバルトデザインセンター)が協力したとのこと。スポーティでアグレッシブ、鮮やかなボディカラー、そしてスリリング。これらの特徴は、まさにアバルトのクルマづくりと共通するといえるだろう。
CAR OFF SHOREとアバルトのコラボにより誕生したボート。アバルトファンなら誰もが憧れるであろう存在だ。
さらにアバルトファンの心をくすぐるのが、Riva製エキゾーストシステムを搭載している点だろう。Rivaといえばイタリアを代表する高級ボートメーカーであり、過去にもアバルトとコラボレーションしている。限定車「695 Rivale」では、Rivaのボートをイメージしたボディカラーやマホガニーのインテリアパネルなどが採用されていた。このボートは世界限定500台でリリースされたとのこと。海を愛するアバルト乗りにとって、喉から手が出るほどたまらない“オモチャ”といえるだろう。
アバルトらしさ、それは普通を非凡に変えること
アバルトらしさとは何か——。その答えを探るため、改めてアバルトの歴史やこれまで手掛けてきた数々のモデルを振り返ると、浮かび上がってくるキーワードがある。それは「パフォーマンス」「クラフトマンシップ」、そして「技術革新」だ。
常に記録更新を目指し続けてきたアバルトは、創業翌年の1950年4月、タツィオ・ヌボラーリがパレルモ-モンテ・ペッレグリーノ戦で勝利を収めたことを皮切りに、1950年代半ばには「フィアット・アバルト750レコードカー」や「フィアット・アバルト500エラボラツィオーネ」など、数多くのモデルで記録を打ち立ててきた。
さらに1965年には、カルロ・アバルト自身が厳しい減量を経て、フィアット600をベースにした1000ccエンジン搭載の1人乗りのレコードカーをドライブ。クラスGカテゴリーで0-400mと0-500mの加速記録を樹立した。さらに翌日には2000ccエンジンへ換装し、同距離でクラスEの記録も更新した有名なエピソードも残っている。これらの記録はアバルトの挑戦のスピリットを象徴したものといえるだろう。
フィアット・アバルト750レコードカー。
そしてその精神は、現行の「595/695シリーズ」や「500e」にも脈々と受け継がれている。ひとたびステアリングを握れば、そのスリリングな走りから、創業当初から変わらない「普通を非凡に変える」哲学が息づいていることを感じるはずだ。
アバルトはこれからも挑戦を続け、唯一無二のクルマを生み出していくことだろう。
関連記事
1957 FIAT 500 ELABORAZIONE ABARTH RECORD|アバルトの歴史を刻んだモデル No.042
FIAT ABARTH 750 RECORD CAR|アバルトの歴史を刻んだモデル No.030
1961 FIAT ABARTH 2400 Coupé Allemano|アバルトの歴史を刻んだモデル No.041