新旧アバルトが大集合! フジスピードフェスティバル2023に集まったアバルト乗りたち

由緒正しきビンテージアバルトが大集合

さて、往年のビンテージアバルトが展示される「アバルトクラシケ」のブースも覗いてみた。会場には、ビンテージモデルを大切に動態保存しているCLUB ABARTH GIAPPONEの会員さんたちのクルマが、約30台ほど集まっていた。


歴代アバルトが一堂に会したアバルト クラシケ デモランの会場。

どれも貴重な車両ばかりだが、CLUB ABARTH GIAPPONE会長の原田徹也さんによると、今年はアバルトの創始者、カルロ・アバルトのパーソナルカーだった「Fiat Abarth 2400 Coupé Allemano(クーペ アレマーノ)」が展示されているとのことで、さっそく現車を見せてもらった。聞くところによると、カルロ・アバルトは2400 Coupé Allemanoを2台乗り継いだようで、初期の個体が日本に、後年の愛車をFCAヘリテージハブが所有しているとのこと。会場に展示された2400 Coupé Allemanoで本邦初披露という。


かつてカルロ・アバルトのパーソナルカーだったというFiat Abarth 2400 Coupé Allemano。

他にも、1965年に船橋サーキットで開催された第1回全日本自動車クラブ選手権レース(CCCレース)を出走した個体を含む、「Fiat Abarth 1000 Bialbero(ビアルベーロ)」が3台並んだ姿も壮観だった。


Fiat Abarth 1000 Bialbero。右の2台はロングノーズ。左のモデルは、第1回全日本自動車クラブ選手権レースに出走した個体。

また、量産車をベースとし、ツーリングカー選手権への参戦を果たしたレースモデルの代表格といえる「フィアット アバルト 1000 TCR」が6台も集まっていた。1000 TCRが6台も集まったのは、CLUB ABARTH GIAPPONE創設以来、初とのこと。


フィアット アバルト 1000 TCR。

その脇には、「フィアット アバルト 750レコード モンツァ」が2台並べられていた。こちらも由緒正しいモデルで、フランクリン・ルーズベルト・ジュニア(ルーズベルト大統領の第3子)が運営に携わり、北米におけるフィアット・アバルトのディストリビューターを務めたチーム ルーズベルトにかつて在籍していたという個体だ。


フィアット アバルト 750レコード モンツァ。

こうしたモデルを間近で見られるだけでも貴重な体験だが、同イベントでは有志によるデモ走行も行われた。走行時刻が近づくと暖機のためにエンジンに火が灯され、ピットにはエキゾーストノートがこだました。その迫力のサウンドはまごうことなきレーシングカー。気分は1950-60年代のモンツァサーキットだ。


フォーミュラ フィアット アバルト 2000を先頭に、ビンテージアバルトがピットレーンに整列。息を呑むような光景だった。

また、夕方には舞台をマルチパーパスコースに移して、アバルトクラシケや現行アバルトによるフリー走行が行われた。このようなショートサーキットでは、軽量なアバルトのハンドリング性能が俄然光る。コース上には、695 トリブート 131 ラリーの着想の原点となった「131 アバルト ラリー」や、現代の「124 spider」といったFRアバルトも姿を見せ、迫力の走りを披露してくれた。

131 アバルト ラリー(左)をはじめ、様々な年代のアバルトがマルチパーパスコースを駆け回った。

フリー走行が終わる頃には、富士スピードウェイに夕日が差し込み、車体はセピア色の赤みを帯び始めた。楽しかった1日に閉幕の時が近づいていた。サソリ遣いたちは、熱き思いを胸にしまい、日常という現実へと戻っていったのだった。

文 曽宮岳大

アバルトオフィシャルWEBサイト