イタリア車界の大ベテラン、大倉哲也さんが語るイタリア車の醍醐味とアバルトの魅力

新旧のアバルトに通じる味わい

そしてアバルト・グランデプント、今の595シリーズや695の源流であるアバルト 500が発表されました。

「アバルトのクルマには、クルマ好きの人たちをそそのかしてサソリの毒に侵してしまうようなところがあって、アバルトの精神性だとか世界観のようなものは昔と共通してるな、って感じました。嬉しかったですね。それに、今の595には標準で備わってるものも多いですけど、最初のうちは標準型のアバルト 500をもっと速くしたい人のためにesseesseキットが用意されていたりオプションパーツが豊富にラインアップされていたりして、そういうところもかつてのアバルトと同じ。現代のアバルトでは、自分の好みの仕様に近づけられるMake Your Scorpionが時々行われていますけど、それもかつてのアバルトのユーザーが自分だけの仕様にクルマを仕立てていけたことの名残というか、その現代版みたいなところがありますよね。そんなところにも心がくすぐられます」


695 SSの「SS」とは、スーパースポーツの略。イタリア語の読みで、esseesse(エッセエッセ)と呼ばれ、その命名法は現代に受け継がれている。

仕事柄、現代のアバルト 595シリーズに触れる機会も多いかと思うのですが、どんな印象をお持ちですか?

「基本姿勢は何ひとつ変わってないと思いますよ。良くも悪くも昔のまま(笑)。知らない人には普通のクルマに思えるかもしれませんけど、オーナーとしては“ごめんね、ちょっと違うんだよ”ってニヤリとできるところも、かつてのアバルトと今のアバルトに共通する魅力だと思ってます。古典的といえば古典的ですけど、だからこそクルマ好きが本能的に惹かれてしまうところがたっぷりあって、本当に楽しいクルマです。EVを否定する気持ちはまったくありませんし、EVにはEVのよさがあると感じてるんですけど、こういう時代になってもその対極にあるようなクルマを作り続けてくれていることに、ただただ感謝です。また、そういうクルマを支持してお求めくださる方がたくさんいらっしゃるっていうのも嬉しいですね。クルマ好きの方が今もたくさんいる、ということの証ですから」


現行の595シリーズ。

現行の595シリーズはグレードごとに乗り味が少しずつ異なっていたりしますよね?

「ただ作ってくれているだけじゃなくて、選べるっていうのは本当に嬉しいことですよね。基本的な楽しさや気持ちよさの方向性は一緒ですけど、乗り味や個性がそれぞれ少しずつ違っているから仕様の好みでお選びいただくこともできますし、予算に合わせて選んでいただくこともできます。お悩みになったときにはスタッフに相談していただければ、一緒に考えさせていただきます。これはまぁ、どこのアバルトのショールームでも同じだとは思うんですけどね(笑)。さっきも申し上げたとおり595シリーズは普通のクルマとは“ごめんね、ちょっと違うんだよ”っていうモデルなので、まだ体験したことがない方にはぜひとも試乗だけでもしてみていただきたいですね」


好みの仕様を選べたり、自分好みに作り上げたりして楽しめるのも、新旧に通じるアバルトの魅力という。

「ダメですね、クルマの話をしてると時間が過ぎるのを忘れちゃって」とおっしゃる大倉さん。本当にクルマがお好きであることが伝わってきます。この日、撮影のために乗ってきてくださったご自身の695 SSは、実はアバルト・ファクトリーで組まれた数少ない個体。コレクターズアイテムといっていい1台です。


大倉さんの695 SSは、アバルトのファクトリーで組み上げられた貴重な個体。ボディパネルの繋ぎ目が補強されるなど、ボディ自体の強化も図られている。他にもオーバーフェンダー化や、カンパニョーロのホイール、4連メーターの採用といったチューニングが施されている。

大倉さんの695 SSは、飾ったり自慢したりするために所有しているのではなく、大切にしてはいるけどちゃんと走らせて楽しんでいるということがありありとわかる状態でした。こうしたベテランのクルマ好きでありアバルトにも造詣の深い方も太鼓判を押す595シリーズ。まだステアリングを握ったことのない方には、ぜひ試乗をしてみていただきたいと思います。ご自身の中で、何かが変わるかもしれませんよ。

■アバルト京都
今回の取材に協力いただいた、京都市左京区に位置するアバルト京都。展示・試乗車の用意はもちろん、フィアット・アバルト好きのスタッフの方々が、親身にクルマに関する様々な相談に乗ってくれます。店舗の地下には、ゆったりくつろげるラウンジスペースも。イタリアの世界観を気軽に味わえるショールームです。

京都市左京区上高野諸木町47-1
TEL:075-706-1100
営業時間:10:00-18:00
定休日:水曜日
URL:https://kyoto.fiat-abarth-dealer.jp/fab/

文 嶋田智之