イタリア車界の大ベテラン、大倉哲也さんが語るイタリア車の醍醐味とアバルトの魅力
乗れば気分はイタリア人
まさに仕事もイタリア車、私生活もイタリア車、ですね(笑)。今も個人として複数のイタリア車を所有されていますが、イタリア車の魅力ってどんなところにあると思いますか?
「観て楽しい、乗って楽しい、所有して楽しい。にせイタリア人にもなれる(笑)。イタリアのクルマと一緒にいるだけで自分までカッコよくなれたような不思議な満足感があるし、走っていると自然と気持ちが盛り上がったりスッキリしたりするじゃないですか。それにちょっと生き物みたいなところもあるし。イタリア車って、クルマを好きな人がクルマに求めたいもののすべてが、1台1台につまってると思うんです。ちょっと特別な乗り物、っていう感じですね」
現在、595 SSに695 SSという2台のクラシック・アバルトを所有されていますが、どんなところに魅力を感じて購入されたのでしょう?
「古いチンクエチェントってイタリアの大衆車じゃないですか。それにチューニングを加えて、見た目も乗り味も変えてしまっているところ、ですね。チンクエチェントはチンクエチェントの楽しさがありますけど、アバルトにはアバルトの楽しさがあります。似てるところもあるけど、ぜんぜん違うところもある。カルロ・アバルトさんの想いが詰め込まれたクルマ、っていうところもいいですね」
595 SSと695 SS、それぞれお気に入りのポイントを教えてください。乗り味はだいぶ違うものなのでしょうか?
「595 SSはもう15年くらい僕の手元にあって、長いこと一緒にいたから、いちばん愛着があるクルマですね。ベースになったチンクエチェントと見た目はほとんど変わらないところが魅力のひとつです。馬力は10psぐらい上がっていて、“君らには負けへんぞ“っていう気持ちになれるのが楽しいところですね。実際はそんなに大きくは変わらないと思うんですが(笑)。アバルトらしさという点でいうと、695 SSが勝ってるでしょうね。オーバーフェンダーにカンパニョーロのホイール、4連メーターと見た目もそうなんですけど、エンジンのチューニングも高度で、乗るとまったく違うクルマに仕上がっています。今の時代の中ではものすごく速いっていうわけじゃないですけど、595 SSと比べたらはっきりと速さを感じますよ。小さくて誰が見ても速くなさそうなのに“いかにも”なクルマを追っかけまわして追撃したっていう逸話や記録が残っていますけど、その片鱗というか、雰囲気が味わえますね」
2007年にアバルトがブランドとして正式に復活しました。新生アバルトに関して、当時、アバルト好きとしてどのように捉えましたか?
「かつてのアバルトが本気で手掛けた市販車はアウトビアンキ A112アバルトあたりが最後で、それ以降はフィアット・グループのモータースポーツ部門のようになって、それらしい市販車がなかったことにはちょっと寂しく感じていたところがありました。だから復活のニュースを聞いたときには素直に嬉しかったですね。期待に胸を膨らませました」