『ABARTH 500 RALLY R3T』全日本ラリー選手権初戦クラス優勝!@ツール・ド・九州 2015 in 唐津

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皆さん、こんにちは!
mCrt(ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム)のラリー部門でドライバーを務めさせていただいている眞貝(しんかい)です。

初めての方もいらっしゃるかと思いますので簡単に自己紹介させていただくと、学生時代からラリーを始め、キャリア10年目の2012年には<ホンダ インテグラ>で全日本 JN-3 クラス(当時:現在の JN-5 クラスに相当)のチャンピオンを獲得し、2014年からは mCrt のラリードライバーとして 『ABARTH 500 Rally R3T(ラリー R3T)』をドライブする大役を仰せつかっています。

9652唐津恒例のスタート前のお清め。イタリア車でも違和感なしですね!

私にとって ABARTH とは、イタリアラリー界での伝説のマニュファクチャラーで、まさに「憧れ」という言葉がぴったり。ターマック(舗装路)ラリーの本場イタリアで、世界のドライバーたちを相手に勝負をすることが目標の私にとって、ABARTH でラリーに出場できることはまさに運命のめぐり合わせとしかいいようのない幸運なことだと思っています。

『ABARTH 500 Rally R3T』は、FIA(国際自動車連盟)の新しい車両規定である“グループ R” のR 3 クラスに属するマシンであり、昨年までの<全日本選手権>には正式な参加が認められていませんでした。そんなこともあり、昨年は 「オープン(選手権外)クラス」としての参加でしたが、その努力が実って(?)今年からは晴れてグループ R 3 が<全日本選手権>に正式に組み込まれることになりました。

仮に今年、私が<全日本ラリー>で優勝することができれば、新世代の『ABARTH 500 Rally R3T』がナショナル選手権レベルで ”初めて”優勝することになると聞いています。憧れの ABARTH の歴史に、ひょっとしたら自分の名前を刻めることになるかと思うと、気合いが入りすぎて座っているだけでも汗が噴き出すくらいでした。

さて、そんな ”気合十分”な状況で望んだ今年の<全日本ラリー開幕戦>は、4月10日(金)〜12日(日)の日程で、佐賀県の唐津市を舞台に開催されました。もはや唐津で開幕することが定番化した全日本ラリーですが、長い冬を一気に忘れさせるような暖かく安定した天候に恵まれることが多く、ツイスティなコーナーが連続するコース特性も相まって、タイヤの消耗が激しい過酷なターマックラリーとして知られています。

9730こちらも恒例の唐津神社からのスタート。

昨年のこのラリー、私と『ABARTH 500 Rally R3T』にとってはまさに初戦であったために慎重な走りに終始しましたが、一年間かけて煮詰めてきたマシンのセットアップを駆使すれば、きっと堂々と優勝争いができる!と信じて臨みました。

ところで、近年の<全日本ラリー>は、皆さんにとってもお馴染みの<世界ラリー選手権(WRC)>と同様に、公道を閉鎖したスペシャルステージ(SS)と、一般道を一般車と同じルールに従って移動するリエゾン区間から構成されており、基本的にはSSの合計タイム、つまり純粋な速さ勝負で争われます。それぞれの大会はいわゆる「本番」の前に、「レキ」と呼ばれる下見走行の日が設けられており、その日は大会の SS で使われる道を2回だけ、法定速度未満で走行することができます。

意気揚々と現地入りした私たちを出迎えたのは、唐津らしからぬ(?)ぐずついた雨模様の天気でした。
4月10日(金)に実施されたレキの天候は本降りの雨。一方で、翌日からの大会本番では天気が回復するという予報でしたから、下見走行では単に道の形状を記録するだけでなく、「この道が乾くとどういう路面になるのだろう?」、「乾きにくい場所や、水が残る場所はどこにあるのだろう?」という、経験や勘を基にした想像力の勝負でもありました。

0454サービスでは細かくマシンのセットアップを変更します。

そしてついに迎えた本番当日。
天気予報どおり雨は上がったものの、思ったよりも日差しは弱く、路面の回復は遅れている状況。ドライタイヤで湿った路面を走るという難しい状況でラリーがスタートしました。

今回、私自身の作戦は「序盤はとにかく自分のペースを守り、焦らず勝負所を待つ」というものでした。自身のクセとして序盤オーバーペース気味に入ってしまうこともあるのですが、何といっても戦力バランスが大きく変わった今シーズン、最初から焦って自滅してしまうことだけは避けたい、という思いからくるものでした。

果たして、SS 1は幸先よくクラスベストタイムを奪取できたものの、SS 2 は『プジョー 208 GTi』、そして SS 3 は『トヨタヴィッツターボ』といった、同じ今シーズンからの新規参入車両にベストを奪われ、まさに目くるめく展開に。伊・仏・日のマシンによるガチンコのベストタイム奪取戦はチームのメンバーやファンの皆さんにはさぞ心臓に悪い展開だったと思いますが、コ・ドライバーの漆戸(うるしど:女性)さんを含め、私たちクルー二人は至って冷静。事前に厳しい戦いを十分覚悟できていたので、むしろこの白熱の勝負を楽しむ余裕がありました。

0363厳しい勝負でも楽しむ余裕があったのが勝因、かな??

お昼のサービス(車両整備)時間を経て迎えた午後のセクション。ラリーの勝負所はこの SS 4 ~ 8 のどこかで訪れると予感していました。その予感は見事に的中!ベストタイムこそライバルとの取り合いは続きましたが、コンスタントにミスなく良いタイムを並べられたこともあり、一日目終了時点で二位に13.1 秒をつけるクラストップで折り返すことができました。

明けて二日目、最終日。
天気は完全に回復してギャンブル的要素が少なくなったこともあり、作戦は「二位との差を保つ」ことにスイッチ。ベストタイムは敢えて狙わず、ミスの確率を最小限に抑え、淡々とラリーをこなしていきました。

5109日本の林道を全開で攻める ABARTH。いい感じですね!

それでも最終ステージ、サービスパークにほど近い埠頭で行われたギャラリー SS は少し、いや、かなり(!)緊張しました。

多くの皆さんに ABARTH を全日本ラリーの晴れ舞台に引き上げていただき、まさに伝説のブランドの歴史的な一ページを開く大役。感極まる中でのステージとなりましたが、何とかミスなく無事にゴール。

無事、「全日本ラリー初のイタリア車優勝(ひょっとしたら外車初かな?)」、「新世代 チンクエチェントにとって世界初の優勝」を、正式参戦の初ラリーで達成することができました!

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まさに喜び爆発!!

この優勝は私にとってもちろん記念すべき一勝ですが、ABARTH 500 を愛している世界中のオーナーの皆さんにとっても大切な一勝になることと思います。私自身、プライベートで ABARTH のオーナーでもあるのですが、「毎日がちょっと幸せになる」アバルト生活が、より充実したものになった気がするのは、私だけではないと思います。

シーズンは始まったばかりで、次に続くラリーでもさらに厳しい戦いが待ち受けていることと思いますが、まずは良い結果を皆様に報告することができ、本当に安心しています。

第二戦は5月8日(金)〜10日(日)に四国 愛媛県で開催される<久万高原ラリー2015>。日本のラリーのど真ん中で活躍し始めた『ABARTH 500 Rally R3T』の勇姿を、ぜひ見に来てくださいね!

INFORMATION

★ABARTH DRIVING ACADEMY @オートポリス
4/29に富士スピードウェイにて開催されるABARTH専用スポーツ&セーフティドライビングレッスン。次回開催地、オートポリスの応募が始まりました。
受付期間:4/15〜5/23
>> https://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

text by眞貝知志