アバルト 500e試乗動画 現役レーサーがクルマ好きの視点で既存のアバルト・ガソリン車との乗り味の違いを解説<その1>
面白さと数値は比例しない
アバルト 500eは、フィアット 500eに対して、パワーが37ps、トルクは15Nm引き上げられているが、りんごちゃんによると、アバルトをアバルトたらしめている楽しさは、そうした数値に現れないところにあるという。
「私は“最大パワーが何馬力だからエキサイティング”だとか、数字にクルマの楽しさを求めてないというか、乗ったりハンドルを切ったり、アクセル踏んだりブレーキ踏んだりしたときに、どういう感覚なのかというのをすごい大事に思ってるんです。実際、アバルト 500eはカタログ値ではF595より馬力がちょっと抑えめだったり、だけどトルクは上回っていたりという具合に数値は異なり、どんな乗り味の違いがあるのか興味はありました」
「ただ、乗ってみて感じたのは、やっぱりアバルトは数値じゃないなと。例えば、ガソリン車のF595について言えば、アクセルを開けたときにターボが回るまでにちょっと待ち時間があって、ワンテンポ遅れてグワッとターボが効いてくるような、ちょっと野性味のある加速感があるじゃないですか。そこが魅力であり、それを操る楽しさがあると思うんです」
「その点で言うと、アバルト 500eは、そういう野性味があるような加速感ではないんです。アクセルを開けたときに、もうすぐに地面を蹴り出すような、電動アシストが付いた自転車のように、すぐに力が出る感覚です。ところが実際に乗ってみるとそれがすごい心地良くて、その心地良さを回生ブレーキが増幅してくれるんです。グッと蹴り出して加速するのに、アクセルをパッと離すとググッとフロントを制動しながら旋回に入っていく。低重心が効いていて、回頭性がよく気持ちいいんです。アクセルレスポンスと、回生ブレーキと旋回性能の高さのバランスが、すごく気持ちいい走りを実現していると感じました」
りんごちゃんのコメントをまとめると、アバルトは数値に現れないところに魅力を感じられ、例えばガソリン車のアバルトでは、ターボが効き始めるまでに若干の“間”があるものの、それがむしろ楽しさを引き立てているという。そして、その点では電気自動車のアバルト 500eにはそうした“間”はないものの、ガソリン車とはまた違った新しさがあり、その楽しさをさらに高めるひとつの要素が“回生ブレーキ”にあると言うのだ。その魅力については、続編で詳しくお伝えしていきたい。
【アバルト 500e 実車インプレッション 前編】
文 曽宮岳大