「ABARTH DAY 2023」開催。アバルト 500eの“らしさ”、熱く語られる

イタリアで最初に乗ったジャーナリストの証言

熊崎氏のあいさつに続いては、イタリアで最初に500eに試乗した嶋田智之さんと吉田由美さん、りんごちゃんによるトークショーが行われた。嶋田智之さんと吉田由美さんはイタリアの試乗会で誰よりも先に500eを試した二人。そこにイベント当日の朝に初めて500eに乗ったプロドライバーのりんごちゃんが加わり、それぞれの目線で500eについて語らいあった。


日本人で最初にアバルト 500eに乗った嶋田さん、吉田さんと、アバルトドライビングアカデミーの講師を務めるプロドライバーのりんごちゃんによるトークショーの模様。

嶋田
「イタリアのミラノとトリノの間にバロッコという村があって、そこに古くからのアルファ ロメオのプルービンググラウンド(テストコース)があったんですね。 それが発展して、現在はステランティスグループ全体のプルービンググラウンドになっているんですけど、僕らは、そこのミストアルファっていう1周5.6キロほどの最も基本的なコースで500eを走らせたんです。コースは、ストレートもあればバンクの付いたコーナー、ツイスティなセクション、滑りやすい路面もあったりとバランスがいいコースなんですね。しかもその日は土砂降りだったんです。そこでシャシーがしっかりしていることや、タイヤが滑っても怖さを感じさせず、クルマがちゃんと曲がったり止まったりしてくれることなどをチェックできました」


モータージャーナリストの嶋田智之さん。

りんごちゃん
「私は今日初めて電気自動車に乗り、いろんな意味で先入観を裏切られたと感じたんですけど、お二人の500eに対する第一印象はどうでしたか?」

吉田
「テストコースは、コーナーが続くワインディングロードのようなコースで、減速して加速、また減速して加速を繰り返し、その度に楽しい! と感じていました。エンジン車だとちょっと息継ぎ、という感じで少し’’間’を感じることがあります。それが人とクルマの一体感を感じさせてくれたりもしますが、500eにはその“間”が無くて……。たとえるなら、クロールを息継ぎなしで25mぐらい泳ぎ切ってしまうような(笑)。幸せな時間がずっと続く感じです」


カーライフエッセイストの吉田由美さん。

嶋田
「確かにそうだね。由美ちゃんが言ったみたいに、内燃エンジンのクルマってアクセルを踏むと、燃料が燃焼室に送り込まれ、爆発してピストンを上下させ、その排気ガスでタービンが回ってブーストが掛かる、という具合に、わずかコンマ何秒ではあるんだけど、待ち時間があるもんね。500eはそのわずかの間にもドピューッと加速していく感覚があるよね。アバルトのエンジニアは、“普段みんなが走る環境の中で一番楽しめるクルマを作った”と言っていたんだけど、確かに500eは日常から日常+αの速度域ですごく光るクルマ。中間加速が速くて、テストコースでもコーナーからの立ち上がりや、コーナーとコーナーを結ぶ点から点までの加速が速いんだよね。それに点そのもの、つまりコーナーリングも速いし」

りんごちゃん
「電気自動車って、アクセルを踏むといきなりトルクが出て扱いにくいんじゃないかとか、あからさまに回生ブレーキが入ってきて鬱陶しいんじゃないかとか、正直そういう先入観をもって試乗したんです。運転モードが3種類あってそれぞれを試しましたけど、回生ブレーキが効くモードで走らせた時の印象は、回生ブレーキがそれほど強く介入せず、マニュアル車で少し下のギアで引っ張って走った時にアクセルオフしてエンジンブレーキがかかるような、そんな感覚でワインディングで心地いいと感じました。回生ブレーキが入ってこないモードでは、エンジン車とそれほど変わらないフィーリングだと感じましたね。さらにハンドリングは695よりさらに路面に張り付きながらコーナリングしてくような感覚があって、そこも良かったです」


ラリードライバーの石川紗織さん。

嶋田
「テストコースでは、もちろん全開走行も試したんだけど、そこで感じたのは何かミッドシップみたいなフィーリングがあるなと。500eって内燃エンジンの695や595と比べてホイールベースも伸びているんだけど、トレッドはさらに広くなってるのね。僕は初めてのクルマに乗る前に、それが曲がる方向のクルマなのか、それとも安定方向のクルマなのかということを推し量るためにホイールベース/トレッド比というのを計算するんですよ。コマを連想してください。コマってシャフトを中心にクルクルって回るでしょう。あれは真円だからで、真円ってホイールベース/トレッド比でいえば1対1なんですよ。クルマもだ1対1に近ければ近いほど基本特性として曲がりやすい。アバルト500eは内燃機関の695、595よりもホイールベース/トレッド比が1対1に近いんです。695や595よりもすんなり自然によく曲がる」

りんごちゃん
「路面にピタっと張り付いていて曲がりやすいのに、既存の695シリーズのなんですかね。危うさというか。そういう感じもちょっと残っているんですよね」

嶋田
「そう、どこかに飛んでいっちゃうわけじゃないんだけれど、695や595にはスリリングな感覚が強く残っているよね。実際にすっごい安定して曲がっているんだけど」

吉田
「時代は楽しいEVの方向に進んでいるなという感じがしますね。最近は日本の自動車メーカーも、電気自動車であっても走る楽しさみたいなところをすごいアピールしているじゃないですか。大メーカーも含めてね。その日本の大メーカーのボスもこのクルマ乗ったら痺れると思う。“うちもこういうの作れ”って言うんじゃないですかね。そんな楽しくて、しかもかわいいクルマが私達が運転できる間に登場して良かったって思います」

という具合に、トークショーはマニアックな領域まで踏み込んだ。特に500eの乗り味の話になると、それぞれの視点から感じ取ったことを率直に述べ、500eにまだ試乗していない観客の方々もその新しい乗り味に想像を膨らませていた様子だった。

さて1回目のトークショーが終わったあとは、みんなで記念撮影。この日は風が強く、バイカーズパラダイスが位置する山頂の駐車場はだいぶ寒く感じられたが、たくさんのアバルト乗りの方に集まっていただいた。


次ページ ABARTH DAYに参加されたアバルト乗りの方々の声