The SCORPION SPIRIT Vol.3 布袋寅泰さん 変化することの美学
心の奥底に眠る本能が呼び醒まされるストーリーを展開するキャンペーン「The SCORPION SPIRIT」。 フォトグラファー・ケイ オガタ氏を迎え、アバルトの世界観を表現する本キャンペーンの第3弾に出演するのが、ギタリストの布袋寅泰さん。 日本はもちろん、海外でも活躍する布袋さんに、チャレンジングなアーティスト人生について語ってもらった。
日常を変えた音楽との出逢い
デビューから37年を迎え、トップアーティストとしてさらに輝き続けるギタリスト・布袋寅泰さん。現在、日本やロンドンを中心に、世界各国で精力的に活躍している布袋さんの音楽との出逢いについて尋ねてみた。
「子供の頃ピアノを習っていて、その後テニスやサッカーもしていたのですが、何か夢中になれるものが見つけられずにいたんです。
そんな時に、デヴィッド・ボウイや T-Rexなど、1970年代のグラムロックと呼ばれるとてもファンタジックで、アバンギャルドで、ショッキングな音楽と出逢って、日常が大きく変わりましたね。ギターでコードを鳴らすことで感じる、身体が痺れる感覚に夢中になりました。
レコードを聴きながら、ジミー・ペイジになった気分で弾いたり 、デヴィッド・ボウイの隣で演奏している気分になったり。
そんな僕が、実際にデヴィッド・ボウイやザ・ローリング・ストーンズなどのライブにゲスト出演して、同じステージに立つことができた。夢にまで見た人たちと近づけたのも、ギタリストだったから。こうして話をしていても、本当に夢のような話だと思います」
変化し続けることがクリエイティブ
自身の楽曲だけではなく、数多くのアーティストのプロデュースや楽曲提供を手掛ける布袋さん。その魅力は、セルフプロデュースとの違いにあると語る。
「僕は、人を幸せにするのが好きなタイプだと思っています。それもあって、コラボレーションや人のための楽曲提供、そしてプロデュースをとても楽しんでいます。
プロデュースには、コミュニケーションの中で、その人の良い部分を引き出せた時のよろこびや達成感など、自分だけでは生み出せない楽しさがありますからね。
むしろ、自分自身のプロデュースの方が苦しんでいますよ。
僕は、結構器用な方でいろいろと出来てしまう。だけど、個性を出すには、何かに限定することが必要なんです。オールマイティであることが、良い点でもあり、強みでもあり、弱みでもあるというか。
ただ僕の場合、どのギターを持っても、どんなビートで弾いても 『布袋の音』ってすぐに分かると思うんですよね。それが分かってからは、音楽のスタイルだけじゃなくて、サウンドやそこに込めた歩みや自分らしさみたいなものを直感的に信じればいいと思えるようになりました。デビュー37年目のいまでも、作品を生み出すことは簡単ではない。それでも、常に最新作が最高傑作になるよう作品を制作しています。
変化することの美学。僕が影響を受けたデヴィッド・ボウイや他のアーティストもそうだったけど、新しいものにチャレンジして、そこから得たものをまた破壊したり、構築し直したり、ドンドン変化していく。それこそが、本当のクリエイティブだと僕は思っています」
ロンドンへの熱き想い
6年前、50歳を迎えた布袋さんが決断したロンドンへの移住。そこには、以前から心に秘めていた熱き想いがあったという。
「元々ギターを始めたのが14歳の時。群馬の高崎という、星空しかない素敵な街で過ごしていました。『いつかは世界のミュージシャンと戦ってみたい』という想いを抱いていた頃、年上の仲間たちとの出逢いがきっかけでBOØWY(ボウイ)を結成し、デビューすることができました。解散まで短い時間だったけど、メンバーと共に夢を叶えることができたと思っています。
その後ソロになって、ギタリストとしてはもちろん、役者をしたり、他のアーティストのプロデュースをしたり、様々なクリエイティブに関わることができ、とても充実した30年を過ごすことができました。
でも、50歳になった時、自分の中で『もう一歩、先に行けるんじゃないか?』『14歳、15歳で見た夢はどこに行ったんだろう?』という想いが芽生え、自分自身に問いかける瞬間があったんです。そこで思い切って、すべてを手放してロンドンに移り住みました。
生活の拠点や目線を変えるだけでも、すごくモノ作りの視点が変わるし、当たり前だったことが当たり前じゃなくなる。いまは悔しさも味わいながらも、その悔しさがエネルギーになっているし、結果的にはあの時思い切ってよかったと思っています。
また、現在様々な国でライブハウスツアーを行なっているのですが、5年後、10年後に、日本やイギリスはもちろん、世界中に『ただいま』と言える場所が増えていったら、ミュージシャンとしての夢は叶ったことになるんじゃないかなぁと思っています」
夢に見た憧れの存在との共演
世界の名だたる大物アーティストとの共演を果たしている布袋さん。その中でも、特別な出逢いがあったと語る。
「憧れのデヴィッド・ボウイが、すぐ横にいる。あれ以上の興奮は、いままでになかったです。人生で一番の緊張というか、手が震えて、涙が出て、言葉が出ないっていうくらい感動しました。
先日、ヴェネツィアのサンマルコ広場でイタリアのシンガー・ズッケロと共演したのですが、ありえない光景が目の前に広がっていて、とても感動したし、自分自身でも驚いたけれど、こうして大きなチャンスを掴んでいく状況の中『これが最後ではない』と思っている自分がいるんです。ザ・ローリング・ストーンズのライブ出演の話が来た時も『まさか?』と思った反面『いよいよ来たな!』という思いもありましたね。
運を追いかけ夢を掴んでいくというのも、努力のひとつというか。チャンスが巡ってきた時に、その期待に応えるサウンドやプレーが出来るって、とても大切だと思っています。
オファーをもらっても、自分のことばかり気にしているギタリストや、独りよがりの人間だったら、せっかく呼んでくれたアーティストに申し訳ないと思いますし。そういった意味でも、コラボレーションする時は、自分の個性を出しながらも、相手の個性を高めるプレーをする。そういったことを、長いキャリアの中で学べた気がしています」
クルマ選びは人生とともに変化する
これまでに、数々のクルマを所有してきたという布袋さん。そのクルマ選びも年々変化してきたという。
「僕は、これまで一貫して、自分をエレガントに見せるのではなく、自分の気持ちがエレガントになるような、そういうクルマを選んできた気がします。いたずらに心拍数を上げるだけのクルマというよりも、自分らしくいられるクルマを。
でも、クルマ選びのポイントって、年齢によっても変わりますよね。
人生や音楽作りもそうですが、20代、30代の時はエネルギーと瞬発的な思いで駆け抜ける気持ちよさがあって、それが若さの象徴だし、良い点だと思います。
だけど、年齢を重ねて50代になると、突っ走っているだけというのもカッコ悪いというか、でもギアを落として歩くにはまだ早いというか。50代になったいま、クルマだけではなく、ライフスタイルも、若い頃とは違った視点で楽しめていると思います。
クルマには、パワーやテクノロジーだけではなくて、デザインや空間や時間を共にする場所としての楽しみ方もある。
そういった意味でも今回乗った『アバルト 595C ツーリズモ』は、軽快で楽しくて迫力があって、大人の男をその気にさせる、とても刺激的でかっこいいクルマですね。エレガントで、コンパクトで、可愛らしい雰囲気もあるけれど、走り出したらまた違った印象を与えてくれる。走る楽しさを感じさせてくれるクルマでした」
現在、チャレンジ進行中
世界の音楽シーンに挑み続ける布袋さん。そのチャレンジする想い、そして今後の目標とは一体どのようなものなのか。
「世界という見えない相手に向かって、正直どうしていいか分からないし、いつどうなるかも分からないけれど、想いは常に前に進んでいます。
バンドを解散した後にソロデビューした時もひとつのチャレンジであり転機だったし、
50歳になってからロンドンに移住してもう一度やり直したこともチャレンジだったし。
ただ僕からすると、アーティストとして生きているからには、挑戦し続けることは絶対に必要なことだと思っています。『日本にいたら何も心配しなくていいのに、何故あえてゼロから始めたんですか?』とよく言われるけれど、僕からすると当たり前なこと。それをやらなくなったら、もう自分ではなくなるっていう気持ちの方が強いかもしれませんね。
とにかく、現在もチャレンジ進行中なので、いつもワクワクしていますよ。
また、僕の名前は知っていても、僕の音楽を聴いたことのない若い世代もいっぱいいると思うので、今後もフェスなどへ積極的に出演して自分の魅力を多くの人たちに伝えていきたいと思っています。
人を興奮させて、人を気持ちよくさせる。布袋のギターを聴くと気分が上がって、笑顔になれて、やる気が出てくる。そんなポジティブな存在のミュージシャンでい続けたいと思っています。
ザ・ローリング・ストーンズやポール・マッカートニー、エリック・クラプトンもそうですが、年齢って関係ないですね。それよりも、信念というか、そっちの方が大切だし。成功っていうのも、売れたとか、お金とか、名声とかじゃないだろうし。楽しんでいる人、やり続けている人、挑み続けている人の勝ちというか、そんなふうに思いますね。
そう言うと、順風満帆に聞こえるかもしれないけれど。見えないところでもがき苦しみながらも、一歩ずつ前進しているつもりです。僕の56歳は「こうきたか!」という驚きと悔しさで、とても刺激的で楽しいですよ(笑)」
布袋寅泰 プロフィール
日本を代表するギタリスト。伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍後、1988年よりソロへ転向。プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されている。国内外問わず、精力的な活動を続けている。
布袋寅泰さんが登場するWEBムービーは、特設サイトThe Scorpion SPIRITにて公開中。
こちらも、ぜひチェック!