イタリアのABARTH DAYS 2019を現地レポート 70周年記念限定車の初披露も!

Abarth days 70° anniversario a mind milano

来場者数5000人以上

10月5日-6日の週末の2日間、ミラノ万博の跡地である「MIND=ミラノ・イノベーション・ディストリクト」において、ヨーロッパ最大、いや、世界最大級のアバルトファンの集い、“ABARTH DAYS 2019”が開催されました。ご存知のとおり、今年はアバルトの創立70周年にあたる年。イベント内ではそれにまつわるコンテンツも用意され、会場に集まった5000人を越えるアバルトユーザーやファンがアニバーサリーを祝いました。その5000分の1として現場に足を運んできたのでレポートします。

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会場にはアバルトが次々と来場。数え切れないほどの台数が集まった。

昨年のこのイベントはヨーロッパ各国のサーキットで7回にわたって開催されましたが、今回はミラノの市街地での開催。そのメインはやっぱり“走り”。自分のアバルトを持ち込んだり、あるいはメーカー側が用意したアバルトの最新ラインナップをテストしたりできるよう、万博跡地の広大な敷地の中に3km近い長さの特設コースが設けられました。また最新ラインナップの試乗は一般道に躍り出ることも許され、いずれの受け付け場所も常に多くの人が集まっていました。“アバルト好き=走り好き”なのはいうまでもないことですが、さすがはその大元、アバルトを生み出した国です。

Abarth Days 70esimo anniversario a Mind Milano
会場には特設コースが用意され、様々な走行イベントが実施された。

“走り”に関するアトラクションはそれだけじゃありません。別の特設コースではラリーのR-GTクラスを戦う124 Rallyの同乗試乗コーナーが、さらには一定以上のGがかかるとタイヤが滑り出す車両で、挙動が不安定になった時の扱い方をインストラクターから学べるブースも用意されていました。

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124 Rallyの同乗体験プログラム。レーシングドライバーがそのポテンシャルの一端を引き出して見せてくれた。

僕も124 Rallyの同乗試乗を体験させてもらいました。ドライバーは、強豪ベルニーニ・チームの124 Rallyを駆ってヨーロッパ選手権などを戦い、結果を残しているアンドレア・ヌチータ選手。距離はそれほど長くはないものの、スタンディングスタートからの全開加速、直角ターンに入る手前の直線区間から始まるテールスライド、グリップとスライドの境目で次の直角ターンを曲がってからの全開加速、そしてドリフトしながらの360度ターンとそこからの全開加速……。124 Rallyが市販のクルマとは異次元といえるくらい速いクルマであることと、腕の立つドライバーが走らせると極めて正確にクルマが反応するということを存分に理解することができました。……というのは冷静になってから思い浮かんだことで、隣に乗せてもらっているときには笑いが止まらないくらいのエクストリームな体験でした。124 Rally、凄いです!

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会場内には他にもドライビングシミュレーターを楽しめたり、アバルトのオフィシャルグッズを購入できるショップがあったり、アバルトの歴史に残る名車達の展示コーナーがあったり、イタリアらしく手抜かりのない食を楽しめるキッチンカーのエリアがあったり、と1日を飽きずに過ごせる工夫が様々。

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アバルトの歴史を彩るヒストリックモデルの展示コーナー。

695 70° ANNIVERSARIOが世界初披露

ステージでは、ひっきりなしに催しが行われていました。ステージで行われた催しの白眉は、アバルトの70周年を記念したスペシャルエディション「ABARTH 695 70° ANNIVERSARIO (アバルト 695 70th アニヴェルサーリオ)」のアンベールです。

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会場でベールを脱いだアバルトの70周年を記念した限定車「695 70° ANNIVERSARIO」。

フィアット500ベースのアバルトの中でも特別なモデルだけに冠される“695”の最新モデルは、間違いなくアバルトファンに刺さる1台となりそうです。というのも、外観はアバルトが持つ歴史の奥深さを薫らせたクラシカルな仕様に感じられ、中身はパフォーマンスアップのための新しい要素が採り入れられた、ルックスも走りも極めてアバルトらしいクルマに仕上げられているからです。

Abarth Days 70esimo anniversario a Mind Milano

絶妙なグリーンのボディカラー。これはデザイナーやカラリストの思いつきなどではなく、アバルトの歴史にしっかりと刻まれたものなのです。アバルトは1957年にデビューした「NUOVA 500(ヌオーヴァ 500)」のポテンシャルを見抜いて即座にチューニングキットを開発、翌1958年にはキットを組み込みつつさらにチューンナップを進めたクルマをモンツァに持ち込み、速度記録に挑戦しました。「FIAT 500 ELABORAZIONE ABARTH RECORD(フィアット500 エラボラツィオーネ・アバルト・レコルド)
と名付けられたそのクルマは、見事6つの世界記録を打ち立てました。最初のABARTH 500というべきそのクルマが身にまとっていたのが、このグリーンだったのです。

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ボディカラーは、6つの世界記録を樹立したFIAT 500 ELABORAZIONE ABARTH RECORDと同じVerde Monza 1958を身にまとう。

“Verde Monza 1958”と呼ばれるこのグリーンが採用されたというのは先人が築き上げた歴史に対するリスペクトなのでしょう。

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往年のものを思い起こさせるエンブレムを身につけるなど、細部にまでこだわりが貫かれている。

また、ボディ下部にはアバルトの象徴的なカラーであるGrigio Campovolo(グレー)が採用されているのが特徴で、フロントのエアダム、前後のフェンダーアーチ、サイドスカート、ミラーハウジング、ルーフの市松模様、ボンネット上のサソリのデカール、そしてルーフスポイラーが淡く華やかに彩られています。

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所々にグレーを取り入れ、スポーティ感をさらに高めている。

注目すべきは、そのルーフスポイラー。最大60度、12段階の角度調整式で、最も立てた状態では、200km/h走行時に42kgのダウンフォースを生み出すという立派なチューニングパーツです。“695”の名を持つアバルトはいずれも基本的なパフォーマンスの高いモデルではありますが、クルマのパフォーマンスをさらに高めるためのチューニングが盛り込まれたのは、サスペンションのジオメトリーなどが変更された「695 BIPOSTO(ビポスト)」に次ぐ2番目。力を入れて開発されたことが、そんなところからも伝わってきます。

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695 70° ANNIVERSARIOのもっとも特徴的な装備である角度調整式のルーフスポイラー。

695 70° ANNIVERSARIOに一番乗り

このクルマを、一般道45分ほど、会場内の特設コース2周のみという限られた時間でしたが、ドライブさせてもらいました。ベースとされているのは「595」の最強版である「595 Competizione(コンペティツィオーネ)」で、普通に走らせた感じはそれそのものです。中回転域からの伸びが気持ちいい180psと250Nmを生み出すエンジン、前後にコニのFSDダンパーを備える引き締まったサスペンション、曲がる姿勢作りに役立つブレンボ製キャリパーを含むブレーキシステム。基本パフォーマンスに不満はなく、常に口元が緩むような楽しさを感じました。なかにはここにもっと特別な何かがなかったのかと思う人もいるかもしれませんが、僕はこれが正解、これこそアバルトらしい選択だな、と感じました。なぜなら、昔からアバルトはロードカーを作るときに、スピードと引き替えに乗りやすさを捨てるようなチューンアップは絶対にしてこなかったから。この1.4リッターターボのエンジンでは595 Competizioneのチューニングが速さと乗りやすさのバランスを保てるギリギリのラインだろう、と僕は以前から感じていました。乗りにくさは楽しさを阻害するからストリート向きではないということを熟知しているアバルトならではの寸止め感が、このクルマにも活かされているのです。

Abarth Days 70esimo anniversario a Mind Milano
短時間ながら試乗の機会に恵まれた。いつも通りのファンな走りを披露。高速でルーフスポイラーが威力を発揮しそうな気配も確認できた。

そうそう、肝心のルーフスポイラーの効果なのですが、今回のコースの基本的な速度域が高くなかったし、角度を変えてのテストもできなかったので、限定的なお話しかできませんが、1箇所だけ3速全開からわずかにアクセルを戻す程度の減速で入っていく高速コーナーがあって、そこは路面のμも低めだったのに、通常の595よりもリアが安定しているような気配が確かにありました。なので、速度域がもっと高くなるサーキットなどではさらに効果的だろうな、と感じたことをお伝えしておきましょう。

Abarth Days 70esimo anniversario a Mind Milano

ちなみにこのルーフスポイラーに関しての資料には、アバルトが1970年代、
1000 TCRなどでリアのエンジンフードを空力向上のため水平に固定したことにインスピレーションを受けたことが記されていたのですが、僕はむしろアバルトが開発に関わったことを示す “SE”コードが与えられている、LANCIA DELTA INTEGRALE(ランチア・デルタ・インテグラーレ)のそれを連想したりしていました。そうしたストーリーが裏側に幾つも隠れているあたり、70周年を記念するスペシャルエディションにふさわしい、と思わされたのでした。

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695 70° ANNIVERSARIOのインテリア。シートにも専用の加飾が施されている。

695 70° ANNIVERSARIOは、アバルトが誕生した年にちなんだ世界1949台のみの限定車。日本導入に関する情報は、今しばらくお待ちください。

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会場にはカスタマイズやラッピングを楽しむアバルトオーナーの車両も多数集まった。

このほかイタリアを中心とした欧州各国から参加したアバルト公認クラブのメンバー達のクルマにも、見るべきものはたくさんありました。集まったアバルトは、何と3000台以上。それらを見て回り、たっぷりと目を楽しませてもらいました。それらについて語るゆとりはありませんが、ひとつお伝えしておきたいのは、アバルトの楽しみ方は世界共通なのだな、と強く感じたこと。例えばカラーの選び方、例えばそのボディに貼るステッカーのあつらえ方。そんなところからはじまって、すべて自分流、とにかく“自由”な何かが感じられるのです。その突き抜けた明るさこそがアバルトなのだな、と……。

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もうじき日本のABARTH DAYS 2019の開催日がやってきます。日本独自のコンテンツの準備が進んでいて、もしかすると本国のイベントを凌駕するようなものになるかもしれないという期待感が膨らんでいます。

11月9日(土)、アバルトファンは富士スピードウエイに全員集合! ですね。

文 嶋田智之

ABARTH DAYS 2019@Fuji Speedwayの詳細はコチラ

ABARTH 70周年特設サイトはコチラ