生活に潤いを与え、心を掻き立ててくれる存在。アバルトライフFile.57 西崎さんと695 esseesse

■金やマグネシウムを売って購入資金を捻出!?

「家を建てた2-3年ぐらい前に自営業をやめたんですけど、経済状況が悪化して仕事が減っていた時期に同級生の友人がうちの会社に来ない? と声をかけてくれたんです。それで会社勤めになったんですけど、その通勤路のとあるマンションの駐車場に、黄色と水色のフィアット 500が2台並んで停まっていたんです。それがすごく綺麗でお洒落だなと思い、興味が湧いてきました。しばらくして通勤で利用していた豊橋駅の一角に、ガラス張りのブースが設けられ、その中にアバルトが展示されたんです。屋根が開いた状態で、内装は赤いレザーシートの595C Turismoでした。それを見て、“これすごくいいな”、“気持ち良さそうだな”と思いましたね。毎日その姿を見ることになって、いつかはこのクルマに乗ろうと考えるまでになりました」


豊橋駅に展示されていた595C Turismo。写真は当時、西崎さんが撮影したもの。

心の中でアバルトへの想いが膨らんでいったのですね。

「アバルトについて色々調べるようになって、最初は595C Turismo狙いだったんですけど、ちょうどその頃本国で695 esseesseが発売されたのを知って、そのモデル名と仕様に強く惹かれたんです。ただ、子育ての真っ只中でミニバンに乗っていたので、最初のうちは今のクルマに乗りながら2-3年お金を貯めて、そのうち買えたらいいなぐらいに思っていたんです。ところが“貯金をするなら、その分をクレジットに回せば今すぐに乗れるよ”、とアドバイスしてくれた人がいて、なるほど確かにその通りだなと思い、色々調べたりクルマを見たり触れたりしているうちに買いたいモードに火がついてしまったんです」


免許をとった頃からスポーツカーに慣れ親しんできた西崎さんが選択したのは、マニュアル車。限定車には右ハンドル仕様も設定されたが、あえて左ハンドル仕様を選んだ。

その時のご家族はどんな反応でした?

「最初はあまり反応は良くなかったですね。もう1台のクルマがあるとはいえ、5人家族なのに4人乗りのクルマを買おうとしているわけですし(笑)。同意を得るのに1年ぐらいかかりました。もちろん生活費を削って買うわけにはいきませんので、自分が長年趣味で集めてきたものなどを手放して、購入資金を集めました。例えば、天皇即位とか御在位60周年とかそういう節目に出る10万円の記念金貨を換金したり、以前持っていたドイツのスポーツカーに装着されていてそのままとっておいたマグネシウム製ホイールを売りに出したり。とにかく家族には迷惑を掛けないという約束だったので、ありとあらゆるものを手放し、購入資金を積み上げましたね」

そうした努力をされた結果、手にした695 esseesse。限定車ですけど、やはり特別な想いを感じていますか?

「そうですね、買うのに苦労はしましたけど、その甲斐あって努力に見合った所有満足感は得られていると思います。このクルマはアルミニウムボンネットやアクラポビッチ製エキゾーストシステムなど、特別な装備が多いのでそこもすごく気に入っていますし、昔の695 SSのオマージュというところも満足しています。雰囲気というか、色だったり使われている素材だったり、作り出されている世界観が695の限定車としてふさわしいものだと感じますし、クルマ固有の個性が欲しくて選んでいますのでとても気に入っています」


背面に白が用いられたシートも西崎さんのお気に入り。695 SSにオマージュを捧げ、随所にスポーティなテイストが与えられたこのクルマのストーリー性も西崎さんの心を揺り動かした。

走った印象はいかがでしたか?

「まだ慣らし運転が終わったばかりであまり試せていないんです。1000kmまではエンジン回転数3000rpm以下で走っていましたから。ディーラーさんで1000km点検を受けたあと、帰りのバイパスでスコーピオンモードを試したのですが、無茶苦茶速いなと思いましたね。マフラーの音もノーマルモードとは全然違って、これはすごいなと」

先ほどラゲッジルームを見せてもらった時、床下のカーペットがめくられた状態でしたね。

「あれはマフラー音を聞こえやすくするためです。ネットでそういう情報を見たのでやってみようかと。595系がシリーズ5になってバルブの制御が変わったようですけど、どういうタイミングで開くのか。探りながら試していきたいと思っているんです」

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