「自分の願いや挑戦を後押ししてくれる存在」アバルトライフFile.27 石川さんと124 spider

人生最大の買い物だった

2019年11月に富士スピードウェイで開催された“ABARTH DAYS 2019”の会場で、うれしい再会がありました。 2017年の同イベントの取材でコメントをいただいた石川直樹さんが参加されていたのです。石川さんは、当時納車されて3ヶ月が経過したばかりの赤い124 spiderで、オートテストに参加されていました(関連記事)。

124 spiderオーナーとなり、3年目の石川さん。ドライブでは遠くまで行くことも多いそうです。

それから2年が経過して、石川さんは30歳に、124 spiderの走行距離は3万6000kmを越えたそうです。その時間と距離の中でアバルトとの間柄がどんなふうに変化したのかを知りたく、後日、あらためてお訊ねしました。

「そうですね……変わったことといえば、124 spiderに乗るときの気負いがなくなりました(笑)。当時は乗る前に“よし!”と気合いを入れていたようなところがあったんですけど、今はジャケットをすっと羽織るぐらいの感じで乗り出せるようになりましたね。あの頃は、こんな大きな買い物をしたのは人生で初めてだったし、それまでまったく縁がないどころか意識したこともなかった輸入車の2シーターのオープンカーが納車になったばかりでしたから……」

サソリへの愛情はさらに深まっているようです。

そんなところからも察せられるように、124 spiderは石川さんが自分で買った初めてのクルマ。それ以前にもクルマに乗ってはいましたが、それは大学卒業後の就職先の配属で地方暮らしをすることになり、必要に迫られたのがきっかけ。車種選びにも特にこだわりはなく、親戚から譲り受けたファミリーカーを4年ほど乗っていたそうです。

「前のクルマに乗っていたときも“クルマって楽しいな”と思いましたし、好きでした。でも、それはクルマそのものというより、自由に色々なところに出掛けられることが楽しかったんですね。地方勤務のときには、仕事が終わって夜9時頃に自宅に帰ってネクタイだけ外してプラッと走りに出る、とか。そういうところは今も変わってないんですけど」

どちらかというとインドア派という石川さん。それでも、出掛けた先で屋根をオープンにして走る。そんなカーライフへの憧れは購入前からお持ちだったそうです。

昇進試験のモチベーションに

単純に移動の自由が欲しいのであれば、どんなクルマでもよかったはず。それなのにいきなり124 spiderを選ばれた理由が気になります。

「私の仕事はあくまでもインドアで、もともとアウトドアで遊ぶのが好きなタイプでもなかったんですけど、でも旅行に出掛けた先とかでその土地の空気に触れるのは好きでした。それに20代後半になって、ふと2シーターのオープンカーって今か引退後にしか乗れないんじゃないか? と考えたんです。360度のパノラマ、全身で浴びる空気。そういうのに憧れたのが最初のきっかけでした。それで色々なクルマを考えたんですが今ひとつピンとくるクルマがなくて、迷っていたときに何かの記事で124 spiderのデビューを知ったんです。そもそも日本車しか考えてなくて輸入車なんて意識もしてなかったので、こういう選択肢もあるのか、と。……というと、まるで冷静だったように思えちゃうかもしれませんけど、単純にひと目惚れ。すごくカッコいいヤツ見つけちゃったなぁって、ちょっと興奮しちゃいました(笑)」

石川さんのお気に入りのひとつが、124 spiderのグラマラスなフェンダーライン。クルマに乗り込む度に、後方に向け盛り上がっていくこのデザインが目に飛び込んでくることに、喜びを感じるそうです。

そして2016年の初夏、石川さんはショールームに向かいます。まだ124 spiderが飾られる前のタイミングだったにも関わらず、“カタログありますか? 試乗はいつからできますか?”と、だいぶ前のめりだった様子。けれど、ただ前のめりなだけじゃなかったのです。

「色々と計算して、頑張れば何とかなるかも、と思ったんです。実は当時、ちょっと先に昇進試験を控えていて、昇格した後の給料だったらちゃんと支払いができる、と。ちょうど124 spiderの試乗ができるくらいのタイミングで納車時期を訊ねたら結構時間があるみたいだったから、クルマの予約を入れて逃げ場がないようにして、それから必死で勉強して試験を受けました。ものすごく頑張りましたよ。その甲斐あって合格できて、支払いが発生する直前のタイミングで昇格できました。ホッとしました(笑)」

大きな買い物ゆえ、クルマの購入は誰もが慎重になるもの。石川さんは、124 spiderのオーナーになることを頭に思い描き、それを昇進試験に向けた勉強へのモチベーションにした、と話してくれました。

堅実派なのか勝負師なのか今ひとつ判断に苦しむところですが(笑)、努力の成果が実ったのは事実。かくして2017年6月、石川さんは赤い124 spiderと暮らしはじめることになったのでした。

「今はアバルトの歴史だとか特色だとか、ブランドについてある程度のことを知り、バックグラウンドがしっかりしているのにガチガチに保守的というわけではなく、発想が柔軟なところがいいな、なんて共感したりもします。でもアバルトというブランドに憧れを持つようになったのは乗り始めてから(笑)。当初は輸入車そのものに馴染みがなく、ほとんど知りませんでした。だから、イタリア車だったら赤でしょうという感じでボディカラーは赤、のんびりと長距離を走るのも好きだからオートマチック。どちらも正解でしたね」


オートテストやアバルト・ドライビング・アカデミーを経験し、“勉強になるので次も参加したい”と話してくれましたが、石川さんはゆったりと走るツーリングもお好きな様子。

「今の仕事は本社の法務部で、結構大きな契約に関わるんです。社内では色々な部署の人たちと関わって調整ごとをするのが役目ですから時々人疲れしてしまうことがあるし、契約の額が大きいこともあってかなり緊張します。そんなときにひとりで落ち着いてラジオでも聴き、景色を眺めながら、走るのが好き。このクルマは気持ちをほぐしてくれる、解放してくれるんですよね。休みの日に長距離を走るのは結構楽しいんです。124 spiderはスポーツカーだけど、GTカーとしても優れていると思うんです。シートもとても楽で、疲れないし。もちろんワインディングロードを走るのも好きですけど、彼女と一緒に、例えば“日帰りで温泉に行こう”みたいに目的を決め、せっかくならちょっと回り道して楽しい道を気持ちよく走ってこよう、みたいな感じ。彼女とは家が離れているので、遊びに行った後には家まで送っていきますが、一緒の時間はもちろん、そこからの帰り道も楽しい。普通のクルマだったら、帰り道はたぶんもっと寂しいですよね。そういうクルマだから、彼女と一緒のときもひとりのときも、ついつい遠回りしちゃいます。遠回りをさせるクルマなんですよね」

124 spiderでドライブを楽しむ一方、SNSでは同じアバルトに乗るユーザーとコミュニケーションをとったり、実際に訪問して交流を深めたりして、アバルトライフを満喫されているようです。

クルマが手元に来てから2年半ほど経過して今なお惚れ込む一方といった印象の石川さんですが、124 spiderとつき合うことで色々と生活が変わったようですね。

「いや、激変といっていいくらいです。アバルトは私の人生を確実に変えてくれましたね。自分の人生からすると、大転機みたいなものです。例えば、Twitterを通じたアバルト仲間が全国にたくさんできました。そういう仲間とABARTH DAYSのようなイベントで会ったり、知り合ったけど会ったことがなかった遠くのアバルト乗りのところに遊びにいって、別のもっと遠くから来たアバルト乗りの方と合流して皆で一緒に走りに行ったり。それに、自分から積極的に話しかけたりするのは得意な方じゃないんですけど、プラッと走りに行った先で出会って、同じクルマに乗る者同士、わりとすぐに親しくなれたり、自分より年上の方に話しかけられたり。趣味で世代を超えることって、なかなかないですよね。そういう楽しさを知り、世界が大きく広がった気がしています。124 spiderを手に入れるまで、こういう世界があるなんてまったく知りませんでした」

ということは、まだまだ乗り続けることになりそうですね。

「もちろんです。私の会社は転勤で日本全国どこに行くことになるかわからないんですけど、どこにでもアバルトは連れていきたいと思っています。さっき昇進試験の話をしましたけど、124 spiderは結構自分のやる気につながっているところがあって、さらにもう一段階昇格することができているんです。124 spiderと出会ってなかったら、ここまで仕事に熱を入れている自分にはなれてなかったかもしれませんね。いい相棒ができたような、そんな感覚です。色々なことに対して、いつも相棒が後押ししてくれているような……。だからというわけでもないんですけど、実は彼女にプロポーズしようと思っているんです」

そしてそれから数週間後。素敵なお知らせが届きました。石川さん、124 spiderのことを気に入ってくれているというお相手の方と、どうかお幸せに!

文 嶋田智之


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