幼少期からの夢を満たしてくれる等身大の戦闘機 アバルトライフFile.51 タルンドル伶奈さんと595 Competizione

航空自衛隊に入りたかった

「いつかは2台持ちがいいけどアバルトが製造されなくなるまで一生1台はアバルトだと思う」

「今日はアバルトで2〜300kmのはずが600km走ってる。そしてまだ家につかない。しかしアバルトは疲れなくていいのう……」

今回登場していただくオーナーさんの、Twitterから拝借した言葉です。つぶやきの主は、タルンドル伶奈さん。愛車である英国製のスーパースポーツ級バイクとアバルトにまつわるツイート、そして伶奈さん自身の写真が注目されて、Twitterのフォロワー数は2万5000人超。アバルトのオーナーさんたちの楽しみ方を拝見するのにときどきTwitterをチェックしているので、伶奈さんのことも以前から存じ上げていました。が、ある日突然、溺愛している様子だった595 Competizione Performance Package II(コンペティツィオーネ パフォーマンスパッケージ2)から同じ色の595 Competizioneに乗り換えたことを知りました。ツイートには双子のような2台が並んだ写真と“これからもアバルト愛を深めていきます”との言葉。その愛について、うかがいに行きました。


595 Competizioneオーナーのタルンドル伶奈さん。Twitterのフォロワー数は2万5000人、インスタは3万3000人超!

待ち合わせ場所は、山梨県某所。20代、ひとり暮らし。以前は都内にお住まいでしたが、大好きなバイクとアバルト、それに足代わりのスクーターと一緒の生活を心地好く維持するために、まわりに走る環境があって家賃もリーズナブルな土地へ引っ越したのだそうです。めちゃめちゃアクティブ。

「そうでもないんです。昔はものすごく明るくておてんばな女の子でしたけど、今はちょっと人見知りなんです。愛想がないって思われるかもしれないですけど、そんなつもりはありませんし、悪気もないので……」

確かにTwitterでの印象と少し違って、一生懸命考えながら答えてくださるところからも、かなり物静かでシャイなご様子です。スーパースポーツ級のバイクとアバルトが愛車、ということにギャップを感じてしまうほど。でも、もともとはバイクからスタートしたんでしたよね?


伶奈さんのガレージ。クルマとバイクをこよなく愛する伶奈さんは、ガレージハウスに住むために都内から引っ越し、憧れの生活を満喫中。

「はい。18歳のときからバイクに乗っていて、バイクだけの生活の方が長いですね。バイクであちこちに行くのが好きだったし、サーキットも走ってました。過去に転んでケガをして仕事に支障をきたしちゃったことがあるので、今はバイクでサーキットを走るのはやめてますけど……」

バイクの世界に飛び込んだのは、何がきっかけだったんですか?

「最初は興味がなかったんですけど、大学の学費を払うためにアルバイトして、その先で知り合った中にバイクに乗ってる人がいて、カッコいいなぁって思ったんです。それが18歳のとき。最初は250ccに乗って、1年間転ばなかったら大型免許を取って憧れのバイクを買おうと思ってたんですけど、結局、買ったのは4年後の2017年でした(笑)。アバルトを買うまではバイク一筋、みたいな感じでしたね。私、高校の頃に原因不明の高血圧症をわずらってしまい、夢を諦めたことがあったんですよ。航空自衛隊に入って、戦闘機に関わる仕事をしたかったんです。カッコいいな、できれば操縦してみたいな、という憧れがあったんですね。でも、試験を受けに行ったそのときにやっぱりそこが引っ掛かって、諦めるしかなかったんです。その後のアルバイトをしながら大学に通うだけの毎日に幸せを与えてくれたのがバイクだったんです。カッコいい乗り物を操縦したいっていう夢の半分以上を、バイクに乗ることで叶えられたような気がしてます(笑)。今もバイクが好きで好きで……」


バイクに憧れ、ライダーとなった伶奈さん。そんな彼女の心を鷲掴みにしたクルマが、595 Competizioneだった。

首都高で見た衝撃

そこまで熱心なバイク乗りがアバルトに惹かれた理由は何となくわかる気もしますが、何かきっかけはあったんですか?

「今のバイクを買う前に、一度だけクルマを所有したことがあるんです。すごく安く譲っていただいたんですけど、ほとんどレース仕様みたいなカリカリにチューニングしてあるクルマでちゃんと乗れなくて、楽しさがわからないまま1年で手放しちゃいました(笑)。その後はバイクに熱中してたこともあって、クルマにはあまりこだわりがなかったんです。ところがある日、友達のクルマの助手席で首都高速を走っているときに、白くて丸っこいカタマリが合流のところでものすごい加速をして抜いていったんですよ。“速っ! なんていう速さで飛んでくるんだ!”って。そのときに友達からアバルトっていうクルマだと教えてもらって、初めて知ったんです」

よく聞くのがそれで興味を持ってショールームに……っていうお話なんですけど、もしかして伶奈さんも……?

「です(笑)。当時住んでたところから歩ける距離にショールームがあったことを知って、雨でバイクに乗れなかった日に覗いてみたんですよ。ショールームで見たときには、ほんとにこれがあんな加速をするのかな? って思ったんですけど、スタッフの方の隣に乗せてもらって同乗試乗させてもらったら、ヤバイでしょコレ! って(笑)。加速とレコードモンツァの音があまりにも強烈で。思わず“欲しい”って言ったら、来週ちょうどいいクルマが入ってきますと教えていただいて。それが最初のアバルト、595 Competizione Performance Package IIでした。マニュアルに乗りたかったし、色も気に入ったし、限定車だったのも大きかったですね。“限定”に弱いので(笑)。私、買うか買わないかで悩んだら買わないタイプなんですけど、その場で“それください”ってお伝えしたくらい、迷いなしでした。最初に見たときも衝撃だったけど、乗せてもらっても衝撃、でした」

自分で走らせてないのに、その場で“それください”だったんですか?

「前に買ったクルマをちゃんと乗りこなせていなかったので遠慮したんですけど、隣に乗ってるだけでこんなに楽しいんだから、自分で運転して楽しくないわけがない、って思ってましたね。それは間違っていませんでした」


伶奈さんにとってクルマは、単なる移動手段ではなく、気持ちを高めてくれる大切な存在。

かくして2019年3月、伶奈さんの最初のアバルトが納車となり、初めてステアリングを握ることになったのでした。

「ショールームからの帰りに、慣れるために箱根まで走りに行ったんです。けど、途中で怖くなって、一緒に行ってくれた人に交代してもらいました(笑)。恥ずかしくてTwitterにも書けなかったんですけど、マニュアルのシフトアップ、シフトダウンがうまくできなくて。考えてみたら、いきなり箱根に行く方が悪いんですよね。バイクで走り慣れてた道だからクルマでも大丈夫だと思ったんですけど、甘くなかったです。慣れるまでにしばらくかかりました」

楽しめるようになったのは、どれくらい後ですか?

「自分でもう完全に慣れたなって思えたのは、その年の秋頃ですね。オートバイとアバルトのローンがあるのでほとんど休みなしで働いてたんですけど、転職することになって1週間ほど休めることになったんです。そこで九州、四国、関西を走ってきました。行きたい場所がひとつあったので、それだけ決めてあとは成り行きで5日間。総走行距離は3,068kmだったかな。何千回シフトチェンジしたかわからないぐらいシフトチェンジして、もう大丈夫って思えました。まだヒール&トウは完璧にはできないんですけど(笑)」


伶奈さんの595 Competizioneは、5速MT。バイク乗りらしく、マニュアル車であることがクルマを選ぶ際の絶対条件だったという。

ずっと乗っていきたい

それ以来、アバルトは毎日の相棒になったわけですね。

「普段、アバルトはアシには使ってなくて、休みの日にしか乗ってないんです。雨の日も、基本は乗りません。通ってる病院がちょっと遠いんですけど、そのときもアバルトじゃなくてスクーターで行ってます。バイクも手放さずに所有してるので、休みの日にしか乗らない乗り物が2台です(笑)。休みの前の晩に翌日の気温とか湿度の予報を見て、どっちで出掛けようか考えます。バイクは朝ちょっと山の方を走りに行って帰ってくることが多くて、アバルトはどこか景色を見たいなとか、あのワインディングロードを走りたいなとか、そういうときに1日走って帰ってくることが多いですね。どちらも走ることが目的で所有してるような感じです。大好きで、手放すことは考えられないんですよね、2台とも」

アバルトのどんなところに惚れ込んじゃったんですか?

「そうですねぇ……。サイズもいいからどこを走っても苦にならないし、かわいらしいし、パワーは十分にあるし、ワインディングロードも楽しめるし、高速道路も楽だし、乗り心地も私のバイクと比べたら快適だし……。私にとってはパーフェクトなんですよ。120%満足してます。それと、アバルトってバイクに似てるところがあると思うんですよ。バイクってものすごくカッコいいし、それに速い。パーンと加速してスパッと曲がるのが楽しいんです。アバルトの加速してるときの感覚だとか迫力はとってもバイクっぽいし、曲がるときもそう。同じような感覚でどこでもスイスイっていけるし、5分乗ったら気分転換ができるところも一緒。走っている間、ずっと楽しいのも一緒。そこがいちばん大きいかもしれませんね。自分に合ってる気がするんです」


アバルトに、バイクに近い楽しみを感じているという伶奈さん。“アバルトが作られている限り、ずっと乗り続けたい”と愛車への愛情を話してくれた。

Twitterを拝見していて、595 Competizione Performance Package IIを溺愛しているように感じていたんですけど、今年に入って新しい595 Competizioneに乗り換えたのはなぜですか?

「走行7000kmのユーズトカーを買って、3年足らずで4万キロまで走行距離が伸びちゃったんですね。あるときショールームで担当の方が、またアバルトに乗り換えるなら今がタイミングだと思います、ってアドバイスしてくださったんです。私がずっとアバルトに乗っていたいって思ってることを知っていてくださったので。そのときは“自分のアバルトが好きなので乗り換えません”って答えたんですけど、少しずつ“そもそも私はアバルトっていうクルマに長く乗り続けたいわけよね。それならば……”という気持ちになっていきまして……。Make Your Scorpionでボディカラーが選べたのも大きかったですね。それで頑張って新車に乗り換えることに決めました。自分に馴染んでいた前のクルマのシートにつけ替えてもらって、4月1日に納車していただきました」


伶奈さんの595 Competizioneは、シリーズ5と呼ばれる最新世代のモデル。乗り換えの際、お気に入りのカーボンシートをシリーズ4の愛車から取り外し、現在も愛用している。

ということは、これからもアバルトを溺愛する日が続くわけですね。以前に“アバルトが製造されなくなるまで一生1台はアバルト”というようなことをツイートしていらっしゃいましたけど……?

「そうですね。まだまだアバルトで行きたいところがたくさんあるので、また走行距離が伸びちゃうかもしれません。いずれアバルトもEVになるって聞いているので、乗ってみないとわからないけどEVになったアバルトに乗るのか、それともEVになる前にもう一回エンジンのアバルトを買っておこうっていう気持ちになるのか……どっちなんでしょうね(笑)」

最初のうちは確かにシャイそうな雰囲気でしたが、クルマやバイクのことを話しているうちに少しずつ熱が入ってきて、楽しそうな笑顔で言葉を返してくださるようになった伶奈さん。本当に好きなんだな、ということがしっかり伝わってきます。バイクとアバルトは、きっと伶奈さんが元気でいるために必要な、ビタミンのような存在なのかもしれません。SNSの投稿、これからも楽しみにしていますからね!

文 嶋田智之
撮影協力=河口湖ステラシアター

 
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