アバルト 124 スパイダー&595 ツーリズモ比較試乗 後編

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“ツーリズモ”なワケ

さて、前編の「124 スパイダー」に続き、今回試乗するのは「595 ツーリズモ」です。ボディも排気量もコンパクトなクルマをチューンして、大きなクルマをカモる! これがアバルトの真髄だとすれば、「500」系シリーズはまさにその中心に位置するモデルですよね。「アバルト 500」は、ベースとなっている「FIAT 500」のベーシックモデルに対してほぼ2倍にまでパワーアップしているのですから、ちょっとビックリな数字です。

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1.4リッター直列4気筒ターボエンジンは、最高出力160ps/5500rpm、最大トルク206Nm/2000rpm(SPORTスイッチ使用時は230Nm/3000rpm)を発生する。

今回の「595 ツーリズモ」に至っては、「FIAT 500 1.2 POP」比で約2.3倍にまでパワーアップ。いやはや、とんでもなくパワフルなわけです。それだけチューンアップしたモデルではありますが、ラインアップにはよりハードコアな「595 コンペティツィオーネ」も用意されています。その「595 コンペティツィオーネ」がサーキット走行までを視野に入れたモデルであるのに対し、「595 ツーリズモ」は、GTツアラー的な位置づけです。

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「595 ツーリズモ」には、ヘッドレスト一体型のレザースポーツシートが標準で装備される。

もちろんアバルトの名を冠するわけですから、パワフルでスポーティという基本特性は備えているのだけれど、その先の味付けの部分で「595 ツーリズモ」は、長距離移動でも気持ちよく快適に走る、しなやかな乗り心地が追求されているというわけです。

スポーツモデル好きに納得の乗り心地

実際に乗ってみると、その乗り味は高性能モデルらしい引き締まった感じはありますが、毎日の移動をこなせるだけの柔軟さを兼ね備えています。 この辺のさじ加減は、開発者も吟味を重ねたところだと思いますが、スポーツモデルを好んで選んだ方であれば、納得のいく味付けだと思います。

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足回りは引き締められているが、同時に日常ユースに耐えうる快適性も追求されている。タイヤサイズは205/40R17。

それより、初めて乗る方が最初に驚くのはエンジンのパワフルさでしょう。この大きさのボディで最高出力160psですから、速くないわけがない。最大トルクは206Nm、SPORTスイッチをオンにすると230Nmにまでアップします。というわけでスタートダッシュはかなり刺激的です。

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「595 ツーリズモ」を駆るモータージャーナリスト竹岡圭氏。

この手のホットモデルを上手に操るには、5速シーケンシャルトランスミッションをただ機械任せにして転がすのではなく、アクセルオフのタイミングを上手くコントロールする意識を持って臨みたいところ。そうすればスムーズな加速フィールが得られます。

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「595 ツーリズモ」のコクピット。ギアチェンジはステアリングスポーク裏側に備わるパドルシフトで行う。

クルマと向き合う感覚がある

イタリアのスポーツモデルは、おしならべて想定速度レンジが高めに設定されている印象があります。ゴミゴミとした街中も、クネクネとしたアウトストラーダも、アルプスのワインディングロードも上手くこなせるように、カッタルサを感じさせないのはもとより、適度なスポーティさを常に味わわせてくれるように設計されているのです。そしてそのイタリアの交通環境は、日本に通じるところが多いんですよね。だからイタリアで磨き上げられたクルマは、日本の道路をスポーティに気持ちよく走らせたいといったニーズに、ピタリとマッチすることが多いんです。

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そうしたお国柄を持つ「595 ツーリズモ」の乗り味は、ホイールベースの短いディメンションのなかで、時にはパワフルさを上手く抑え込んで、安定してツーリングさせてくれる。そんな印象があります。もちろんコーナーで攻めすぎるとクルリンッと行きそうな雰囲気は伝わってきますが、そこはスポーツモデルですし、いざとなったら安全デバイスも作動します。あとはタイヤと相談しながら走らせればいいわけで、コントロールの“決定権”はドライバーに委ねられています。

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そういった操る楽しさやクルマと向き合う感覚がしっかりと残されているのが、アバルトならではの楽しさと言っていいのではないでしょうか。あまりイージー過ぎてはツマラナイ。あえてサソリのクルマを選んだ人に適度な刺激を与え満足してもらう。そんなアバルトらしいキャラクターは、スポーティさと快適さの両方を追求した「595 ツーリズモ」からもちゃんと感じ取ることができました。

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文 竹岡圭
写真 荒川正幸