アバルトに「695 Tributo 131 Rally(695 トリビュート 131 ラリー)」登場。往年モデルの概要や、新型の専用装備&標準モデルとの違いを詳報

70年代後半の最強マシン! シリーズチャンピオンを3度獲得

131 Rallyのベース車は、1974年に誕生した大衆向けの「フィアット131」である。角張った車体は慣性質量が大きそうに見えるが、自動車メーカーにとってプロモーションの観点から見れば、市販モデルのイメージを色濃く受け継ぐ車両で参戦した方が大きな宣伝効果が得られる。フィアットの首脳はそう踏んだようである。


アバルト 131 Rallyのベースとなったフィアット 131(2ドア)

マリオ・コルッチ技師率いるアバルトの精鋭部隊はフィアット 131をベースに、WRCの グループ4規定に合わせたチューニングを施し、競技用マシンのアバルト「131 Rally」を作り上げた。なお、グループ4規定で定められた400台の生産義務台数をクリアするべく、131 Rallyは競技用車両のほか一般向けに販売する公道用モデルも生産された。


1976シーズンを戦ったオーリオ・フィアットカラーのアバルト 131 Rally

エクステリアでフィアット 131に対して変更されたのは、太いタイヤを収めるべく大胆にワイド化されたオーバーフェンダー、ダウンフォースを発生させるフロントアンダースポイラー、ならびにルーフスポイラー、そしてトランクリッドにせり立つリアスポイラーなど。これら専用パーツが装着され完成した131 Rallyのボディは、スクエアなフォルムはそのままに、大胆に張り出したオーバーフェンダーや空力パーツによって安定感が増し、“箱のレーシングカー”といった趣を醸し出す。また前後フードやフェンダーなどボディパネルには軽量なFRPを採用することで慣性重量の低減も図られており、アバルトの“勝負師”としての仕事に抜かりはなかった。


アバルト 131 Rally

メカニズム面では、フィアット製の2リッター直列4気筒DOHCをベースに内部にメカニカルチューンを施すとともに、キャブレターからインジェクションへの変更、ならびに圧縮比を10.7へと高めるなどの手が加えられ、競技用車両では最高出力215hpを達成した。足回りもリアサスペンションに専用のセミトレーリングアームを採用するなど実戦向けのチューニングが施され、運動性能の向上が図られた。


FRレイアウトでスノーステージを駆ける131 Rally

こうして仕上げられた131 Rallyは、76年のシーズン途中からWRCの舞台に投入され、デビュー2戦目の1000湖ラリーで初優勝を獲得。そこから快進撃が続き、翌77年は5戦で勝ち星を上げ、マニュファクチャラータイトルを獲得。78年と80年にもマニュファクチャラータイトルを獲得し、WRCで3つのシリーズタイトルをトリノに持ち帰る大快挙を成し遂げたのである。


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