アバルトで走りたいドライブルート【立ち寄りスポットたくさん 六甲山(兵庫県)】

関東のクルマ好きにとって箱根・伊豆エリアがワインディングの聖地であるように、大阪・兵庫を中心とした関西のクルマ好きの聖地とされているのが六甲山エリア。また六甲山最高峰の西側から摩耶山の周辺には様々な文化施設、保養施設、宿泊施設、眺望や夜景スポットが多く、古くから観光・ドライブルートとして知られた存在。走っているだけでも十分楽しめますが、立ち寄りスポットを巡れば1日がさらに充実するはず。今回はそんな六甲山エリアのドライブコースをご紹介。感染予防強化期間中は行きづらいかもしれませんが、ぜひ機会のいい時に訪れてみてください。

気持ちのいいワインディングロード 表六甲ドライブウェイ


阪神高速3号線から表六甲ドライブウェイを経由してアクセス。表六甲ドライブウェイは左右コーナーが続く典型的なワインディングロード。

今回は表六甲ドライブウェイを経由して、ドライブを満喫してきました。阪神高速3号神戸線の、摩耶インターと魚崎インターのちょうど真ん中あたり。その高架の下を走る国道43号線の「東明」交差点から、県道95号神戸六甲線〜灘三田線を北上していきます。途中から道が左右へ大きくうねりはじめ、気分が次第に盛り上がってきます。視界に入る風景が徐々にワインディングロードらしくなってきて、変則十字路の「新六甲大橋下」交差点が出てきたら右折。そこからが表六甲ドライブウェイです。


1929年に開通したという表六甲ドライブウェイ。1938年に自然災害で壊滅的な打撃を受けて不通となった後、1956年にアスファルト舗装が施された有料道路として開通。2002年に無料化され、現在に至る。

古くからの道ということもあって道幅は広くないものの、往復1車線ずつの道で、アバルトならば595でも124 spiderでもさほど狭さを感じることなくスイスイ走れるはず。距離が5km程度と長くはないですが、低中速コーナーが次々と出現する楽しい道で、わりとすぐにオナカいっぱいになっちゃうかも。


路面は多少荒れたところもあるものの概ね良好。ただし、自転車でアップ&ダウンにトライしている人もいるので注意は必要。

上りの終点にあたる「丁字が辻」までは、20台ほどのクルマが停められる展望台がある以外は特に施設はありません。けれど、「丁字が辻」交差点からは様子がガラッと変わります。ここで突き当たる道路は、県道16号明石神戸宝塚線。明石市から神戸市、芦屋市、西宮市を経由して宝塚市に至る六甲山の尾根近くを東西に貫くルートで、道沿いには様々な施設が点在しています。

歴史ある建造物で空腹も知的好奇心も満たすランチを

「丁字が辻」交差点を右折して東方面に進むと600mほどで左側に見えてくる美しい建物が「六甲山サイレンスリゾート」。旧六甲山ホテルをリノベーションして作られた近代化産業遺産です。


六甲山サイレンスリゾート。駐車場も充実していて、気軽に立ち寄ったり仲間との待ち合わせ場所として利用したりすることも可。

このあたりは19世紀の終わり頃、明治時代に神戸の居留外国人がレクリエーションの場として好んで利用し始め、山荘を建てたり、私財を投じて登山道を整備したりして発展してきた由緒あるエリア。旧六甲山ホテルの開業は1929年。昔ながらの旧館は2007年に国の近代産業遺産に認定されるも、2015年に耐震性を理由に営業を終了しました。その後、関西圏でアバルト、フィアット、アルファ ロメオなどの輸入車ディーラーを営む八光自動車工業が、歴史を繋ぐことに。建物が徐々に朽ち果てていく姿に心を痛めた池田現会長が、その伝統ある建物を未来に生かしていくことはできないかと再興に着手したのでした。


イタリアの建築家、ミケーレ・デ・ルッキ氏により、六甲山ホテルの開業当時の姿に戻すプロジェクトがスタート。2年の修復工事を経て現在の六甲山サイレンスリゾートが完成。

池田会長はイタリアの建築とプロダクトデザインの巨匠、ミケーレ・デ・ルッキ氏に修繕を依頼し、木骨や壁、床、石材、ガラス、ボルトナットなど往時の活用できるものをできる限り使用し、1929年当時のオリジナルの姿を蘇らせるという、非常に手間やコストのかかる修復法を選択しました。クルマでいうならフルレストアのようなもの。そうして2年の月日をかけて完成したのが、現在の建物です。


“空のダイニング”では、神戸港から淡路島まで見渡すことができる(左)。開放感たっぷりの野外デッキでBBQを楽しむことも(右)。

旧館には、カフェや無料で楽しめるアーカイブギャラリーなどを完備。空腹を満たせるだけでなく、ミケーレ・デ・ルッキの作品などを紹介するコーナーや、子どもが自然由来の玩具で楽しめるキッズルーム、時期によりテーマが変わる企画展など老若男女が楽しめ、知的好奇心を満たせる空間になっています。


企画展では、六甲山サイレンスリゾートのビジョンに親和性のある様々な展示を実施。訪れた誰もが気軽に楽しむことが可能(左)。子どもが遊べるキッズルーム。置いてある玩具はすべて木製で、知性の育みに役立つものを厳選。

カフェテリアでは、パスタやスイーツ、淹れたてのコーヒーなどをいただくことができます。素材や調理方法にこだわっているだけあり、とても美味しく、心地よいひと時を過ごせること間違いなし。六甲アップルパイは旧六甲山ホテルの名物だったものを現代風にアレンジしたメニューで、朝焼き上げるパイ生地をベースにパテシエがテーブルの前で盛り付けてくれます。


パスタセットは、5種類から選べるパスタ、サラダ、パン、ドリンクがセットで2,530円。写真はアサリとアスパラガスの白ワイン風味のソース 自家製タリアテッレ(左)。天井のステンドグラスが明るく彩るカフェテリアのインテリア。


ドルチェはオーダーが入ってから一つ一つ仕上げるこだわりのスタイル。六甲アップルパイ 自家製ジェラート添え(2,530円)のほか、クレープシュゼットやプリン ア ラ モード、ショートケーキ ナッツのトッピング付きなど豊富に用意。

道路を隔てたレストラン「空のダイニング」では、神戸港を一望できる眺望抜群の空間でBBQや鉄板焼きを楽しむことも。さらに六甲山サイレンスリゾートは、数年内に宿泊棟や湖畔のカフェなどの建設が計画され、“天空のリゾート”としてさらに進化する予定。今後の発展も楽しみです。

六甲山サイレンスリゾート

息抜きに立ち寄りたいリラックス空間 六甲山牧場

「丁字が辻」交差点を西側に進むと、10分たらずでたどり着くのが「六甲山牧場」。125.8ヘクタールの広大な敷地に羊やヤギ、牛、馬、うさぎ、あひるなどが飼育されており、間近で触れ合うことができます。さらに乗馬体験や仔牛へのミルクやり体験、バターやチーズなどの手作り体験も。おいしい空気をたっぷり吸いながらの散策は思う存分リラックスできるはず。


六甲山牧場の北入場口。南側にも入場口はあり、それぞれに駐車場が完備されている。

営業時間は9時から17時(最終入場16:30)。入場料は大人500円、子供200円。駐車料金は500円です。感染拡大防止対期間中は通常営業とは異なる場合があるため、ウェブサイトでチェックしてからお出掛けください。


動物と触れ合えるのは牧場ならでは。体験コーナーも充実しているため事前に計画を練って訪れるのがおすすめ。

六甲山牧場

たまにはクルマを降りてゆったり観光 六甲山ケーブル

六甲ケーブルは、六甲山麓の「六甲ケーブル下」駅と山頂の「六甲山上」駅をつなぐケーブルカー。500m近い高低差がある1.7kmの道のりを10分間で移動します。六甲山上駅に隣接する展望スペース「天覧台」は、六甲三大夜景スポットのひとつに数えられる眺望の名所。


六甲ケーブル下駅(左)。駅舎に入るとレトロな雰囲気のケーブルカーがお出迎え。

六甲ケーブル下駅には民間の駐車場、六甲山上駅には無料駐車場があるので、クルマを停めて観光するのもおすすめ。ほとんどの時間が20分おきに運行。運賃は大人片道600円(小児は300円)。ゆったり気分で観光を楽しみたいところ。


展望車と箱形車を連ねたユニークな2両編成のケーブル車両。六甲山の緑の間を潜り抜けるように進んでいく。

六甲ケーブル

今回のドライブのお供 アバルト595 Momento

今回の六甲山めぐりの相棒は、2021年3月に80台限定で発売された限定車「595 Momento」。マットグレーのボディに、カーボン製のリップスポイラーやミラーカバーでコーディネート。ダッシュボードもカーボン製で、イエローのシートベルトがピリッとアクセントに効いた仕上がりが特徴のモデルです。パワートレインは595 Competizioneに準じており、最高出力180psを発生。足回りには特別装備の機械式LSDが組み込まれ、コーナリング性能の向上が図られています。


通常は設定のないGrigio Opaco(マットグレー)のボディカラーをまとった595 Momento(左)。ベース車ではガンメタリック仕上げとなるフロントリップスポイラーはカーボン製とされ、スポーティな雰囲気がアップ。

ワインディングの宝庫である六甲山で、抜群の楽しさを感じさせてくれた595 Momento。コンパクトな車体を生かしてコーナーに飛び込むと、引き締まった足回りがしっかり車体を安定させてくれ、曲がるのがめちゃめちゃ楽しい。しかも機械式LSDが装着されているため、コーナーの脱出時にアクセルを開いていくとステアリングを切っている方向にグイグイとクルマを引っ張ってくれて、素早い脱出を可能にしてくれます。まさしくコーナリングマシン。六甲山で俊敏な走りを披露してくれました。


595 Momentoのインテリア。カーボンのダッシュボードパネルはスパルタンな雰囲気を高める。専用のファブリック地が採用されたSabelt製スポーツシートにはイエローのシートベルトが組み合わされる。

アバルト西宮に立ち寄ってみました

六甲山のお膝元、西宮市にあるアバルト西宮に立ち寄り、出迎えてくれた霜中功店長にちょこっとお話をうかがってきました。西宮店は、背後に六甲を背負う街なだけに走り好きのお客さんが多いのだろうと思いきや、このエリアには「上品なお土地柄からか、大人しく穏やかにアバルトを楽しまれる方が多い印象」とのこと。人気のモデルを聞いてみると、「関西圏ではアバルトはまだまだ本当にクルマがお好きな方のブランドという感じがあり、595 Competizioneの人気は根強いものの、女性の方がフィアットの上級モデルという感覚で595 Turismoやベースの595のMTA(ATモード付5速シーケンシャルトランスミッション仕様)をお求めになることも多い」そう。


アバルト西宮の内外装。アバルトは3Fに展示。

またアバルトは限定車の人気も高いとのこと。「どの店よりもたくさん、どの店よりも早く完売になっていると思います。595 Momentoも、うちでは瞬殺でした。LSDの効き具合がキツ過ぎず、塩梅がちょうどよくて、よくできてるなと思いますね」と霜中店長。


さそりポーズで撮影に応じてくれた西宮店のスタッフの方々。

スタッフの方々はとても明るく、気さくな雰囲気。近くに行かれる際にはぜひ気軽に立ち寄ってみてください。

アバルト西宮 https://nishinomiya.fiat-abarth-dealer.jp/fab/
兵庫県西宮市神楽町5−1
営業時間:毎週水曜日・第2&4火曜日
定休日:水曜日

撮影協力:アバルト西宮 チンクエチェント博物館

文 嶋田智之