2015年<スーパー耐久シリーズ>第2戦@スポーツランドSUGOレポート

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2015年<スーパー耐久シリーズ>の第2戦が5月23、24日に宮城県スポーツランドSUGOにて行われました。

私たちムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(以下、mCrt)はイタリア車であるABARTHを日本のメジャーレースでの表彰台にあげるため、このレースにも参戦。今回のレースからマシンメンテナンスを“クボタエンジニアリング”に担当してもらうことになり、チーム体制が一新されました。

開幕戦終了直後にクボタエンジニアリングに搬入された『ABARTH 500 ASSETTO CORSE(アバルト 695 アセットコルセ)』は、早速このSUGO戦に向け様々な個所に改良が加えられることとなりました。

主な変更点は、サスペンションジオメトリーの変更、ショックアブソーバーの仕様変更、ホイールサイズの変更と多肢にわたり、マシンパフォーマンスがどれだけ上がっているのかを楽しみにサーキットへ向かいました。

ドライバーは開幕戦に引き続き、ベテランの井尻選手、蘇武選手、そして私(大賀)、の3名。
アップダウンが激しく、テクニカルなコーナーが連続することからFF車には不利とされ、コース幅が狭いことでレース中の接触も多く、「SUGOには魔物が潜む」と言われるほどの難コースに、チーム一丸となって挑みました。

020井尻選手を中心にセッティング作業を進め、マシンのポテンシャルがどんどん引き出されていきました。

木曜日から参加したテスト走行では主に井尻選手を中心に、マシンの変更箇所の確認と修正、セッティング変更に取り組みました。足回りの変更によるマシンバランスは予想以上に向上しており、走り始めから昨年の予選タイムを更新。特にタイヤのパフォーマンスをしっかりと発揮できるようになったことで、コーナーリングスピードが格段に上がりました。

また、ショートホイールベースであることから不得意であったハードブレーキングでも安定感が増し、私のようなブレーキで突っ込むタイプの乗り手には扱いやすいものになっていました。新チームの力も大きく、テスト不足から現地では様々な変更や改良が必要になったにもかかわらず、メカニックは次々と作業に取り組んでもらい、井尻選手、蘇武選手からのセッティングフィードバックも相まって、どんどん車は進化していきました。

030走行後はデータをもとに、ドライバーの走りも修正していきます。

金曜日のテスト走行の終わりには、完璧とはいかないものの、予選に向けての車を仕上げることができ、2日間でこんなにも前進できるんだ…、と私自身驚き、また勉強にもなりました。

迎えた予選日は晴天というよりも夏の暑さに近い好天。
ターボ車であるアバルトには熱害によるパワーダウンが懸念されました。しかしここでも新チームの威力を発揮。インタークーラーに熱を抑える処置を応急で行ってもらい、予選一発のパワーダウンをできるだけ抑えるよう対処してもらうことができました。

050いよいよスタートに向け、緊張のエンジンスタート。

まずはAドライバー予選に井尻選手が挑みます。
コースインしてまずは1アタック、そしてピットインしてコース状況に合わせた微妙なセッティング変更を施し、20分の予選時間一杯を使っての2アタック!

タイムは1分35秒501。
昨年の予選タイムを2秒も上回ることができました。

続くBドライバー予選は私の出番。
経験不足からテスト走行ではセッティングのフィードバックがうまくできず、チームの力になれないことに悔しさがありましたが、「乗せたらあいつは速い!」と言ってもらえるよう、速さだけはチームに貢献できるように気合を入れて挑みました。

070ピット作業も順調に進み、少しづつ順位を上げていきます。

1アタック目は少しミスがあり、いったんピットインして少しの調整を加え、20分の予選時間ぎりぎりで2アタック。

タイムは1分35秒446。
A/Bドライバーともに同じようなタイムを出せたことは、現時点でのマシンパフォーマンスをしっかりと引き出せたということでしたが、『S2000』や『ハチロク』といったFR勢はさらなる好タイムをマークしており、順位はST4クラス15番手と沈んでしまいました。

しかし、『インテグラ』などのFF車勢の中では2番手、8位までは1秒差(A/Bドライバー合算タイムのため、1周では0,5秒差)という内容にはこれまで以上に良いものとなりました。

080コースいっぱいまで使って攻める走りでポイントゲットを狙いますが…。

また、決勝に向けたセッティングに変更してCドライバー予選を走った蘇武選手も好タイムをマークし、決勝への手ごたえをしっかり感じることができました。

【予選結果】
Aドライバー 井尻薫 1分35秒501
Bドライバー 大賀裕介 1分35秒446
ABドライバー 合算予選結果 ST4クラス15位(19台中)
Cドライバー 蘇武喜和 1分35秒667

迎えた決勝日。
予選後にかなりの時間を割いて、決勝の作戦を練りました。
今年からmCrtの監督となった窪田監督はスーパー耐久での経験も豊富であり、燃費データやタイヤのライフの考慮、セーフティーカーが導入された場合のイレギュラーまで数パターンの作戦を用意し、しっかりと順位アップを狙うこととなりました。

ドライバーはスタート直後の競り合いに強い私が短めのスティントでタイヤを目一杯使っての順位アップ、そしてハイペースでのロングランを井尻選手、最後に安定感のある走行での蘇武選手とバトンタッチする作戦。

ドライバーそれぞれがミスをする余地など許されないギリギリの戦いを強いられる私たちですが、それだけやり甲斐と気持ちだけは負けません。

そんな私たちに決勝前のピットウォークでは今回もたくさんの方が応援の言葉をかけてくださいました。
アバルトオーナーさんも応援に駆け付けてくださり、私たちも力をいただけました。また、今回も小さなお子様連れのお客さんも多く、緊張感を和らげてもらえる時間にもなりました。
しっかりと自分の役目を果たすぞ!

040ピットウォークでは見た目のかわいいABARTHは大人気です。

いよいよ決勝がスタート。
やはり狭いSUGOの1コーナーでは順位争いが熾烈となり、接触ギリギリの走行を強いられました。バトンタッチすることが優先…と自分に言い聞かせ、幅寄せされながら1つ順位を落とすも無事1周目をクリアし、2周目の3コーナーで前を行く『S2000』をオーバーテイク!

060スタート前のグリッド上ではチーム皆がお互いの健闘を誓います。

そしてペースの上がらない『ハチロク』をパスし、さらにもう一台も抜いてスタートから2つ順位を上げました。もっともっと順位を上げようとロードスターに襲い掛かりますが、ここでも厳しいブロックにあい、なかなか追い抜くことができません。

9周目にやっと並びかけるも、ここでセーフティーカーが導入され、順位争いはいったん落ち着くことになりました。原因はホームストレートに落ちたガラス、なんと先ほどまで他車に並びかけていたまさにその場所で、ポジション争いの中では落下物の確認まではできず、運の良さに救われました。

このセーフティーカー中にタイヤライフの長いFR勢は次々とピットインしてドライバーチェンジを行っていますが、私たちはまだピットインできる状況になく、コースに留まることを選択し、我慢の展開を強いられます。

FF勢はやはりどのチームもピットインせず、前戦優勝者の『インテグラ』、『シビック』との一騎打ちとなりました。レース再開後、まずは『シビック』を抜くことに集中しますが簡単にはいかず、落ち着いて他の速いクラスを利用して抜くことだけを考えていました。

その作戦がピタリとはまり、速いマシンと並んでコーナーに入った前車がコースオフ。
これで一時クラス4位まで順位を上げて井尻選手にバトンタッチすることができました。

ピットイン後の順位は14番手、やはりセーフティーカー中にピット作業を済ませたチームに有利な展開となってしまいましたが、NEWタイヤを履いた井尻選手は予選タイムに迫るハイアベレージで周回。

コースのあちこちで接触やコースアウト、更には2度目のセーフティーカーが入る混乱の中を8位までポジションアップしてくれました。

今年のチームは井尻選手の加入によって、マシンの戦闘力アップと決勝での強さ、すべてが増し、私自身は学ぶべきことが沢山で、本当に頼れる存在です。井尻選手の好走から開幕戦以上のゴールが見えてきた展開に、握手を交わして蘇武選手を送り出します。絶対にシングルポジションでゴールし、ポイント獲得…、そう思っていた矢先、悲痛な無線が入ってきました…。

「ドライブシャフトが折れたかも!!」
マシンは緊急ピットイン。

原因は左フロントのハブベアリングの破損、そしてドライブシャフトが破損し、さらには同時にコースアウト車両が巻き上げた石によるラジエーターの破損で冷却水漏れまでおこるというボロボロの状態でレースをリタイアすることになってしまいました。

090残念ながらリタイアとなり、破損箇所を見つめる蘇武選手。

リタイアまでの展開は全て作戦通りと言えるほど順調なものでした。
セーフティーカーに翻弄されはしたものの、自分たちの作戦を貫くことで最後にはシングルポジションを獲得できる位置につけることができました。

トラブルの原因はハッキリしており、マシンが格段に向上したことで駆動系への負担がかかり、最後には壊れてしまったということでした。

この点もスタート前からチームは懸念を抱いていて、決勝前にハブは新しいものに交換してもらっており、現場でできる限りの対策を施してもらっていた上でのトラブルでした。順位争いをしていた他車は5、6番手でゴールしていることからも、悔しさはかなりのものでしたが、マシンパフォーマンスが向上している証拠だということに前向きな気持ちもあります。

100次戦に向けて前向きに取組んでいきますので、今後も応援よろしくお願いします!

次戦に向けてはもうすぐに作業に取り掛かっており、ハブや足回りの部品強化はもちろん、更に上を目指すために、デフの強化、カーボンパーツの導入、エンジンパワーの向上といったたくさんの変更を施す予定です。

今回のレースでは応援してくださった皆様に良い報告ができず申し訳ありません。
しかし、新チームのモチベーションと技術の高さ、更に改良される車、そしてドライバーも日々トレーニングを行い、前進していく次第です。

次のレースは7月4日(土)、5日(日)に行われる8時間耐久レースの<スーパー耐久シリーズ2015 第3戦 富士SUPER TEC>です。夏の8時間レースにも臆することなく、上位進出を目指して戦っていきますので、これからも応援をよろしくお願いいたします!

INFORMATION

★ABARTH DRIVING ACADEMY@鈴鹿サーキット
8/19に鈴鹿サーキットにて開催されるABARTH専用スポーツ&セーフティドライビングレッスン。
次回開催の応募を受付中。
受付期間:6/10〜7/22
>> https://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

★ADRENALINE RUSH OFFER vol.2 PLUS
2015年5月1日以降にABARTH各車を成約かつ登録した場合、アクセサリーを特別価格で購入できるキャンペーンを実施中。
>> https://www.abarth.jp/offer/competizione.php

『esseesse Brembo キットfor 595』の実装テストの様子はこちら
>> https://www.abarth.jp/scorpion/scorpion-plus/4916

Text:ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム
ドライバー:大賀裕介