ABARTHのフラッグシップ、695がさらに充実

昨年のパリ・サロンにてコンセプトが初公開された「695フォーリ・セリエ」。ブルー+イエローのカラーは1976 – 77年のWRCラリーを闘った131ABARTH をモチーフとしたもの。

今年は3月5日に開幕したジュネーヴ・ショー。そのABARTH ブースでは、現代ABARTH のフラッグシップ、695シリーズのカスタマイズプログラム「fuoriserie(フォーリ・セリエ)」についての新展開が発表されることになった。ちなみに「フォーリ・セリエ」とは、シリーズ外を意味するイタリア語。もともとは、1960年代頃までのイタリアで数多く作られた、量産車をベースとするカスタマイズ・カーのことを指していた。
 
そして昨年秋のパリ・サロンにおいて、かつての名作“フィアット131ABARTH ・ラリー”へのオマージュを捧げたブルー&イエローのカラーリングとともに発表された、現代ABARTH の「フォーリ・セリエ」プログラムも、イタリア自動車界の伝統を忠実に再現したものと言えよう。

今回のジュネーヴ・ショーで発表されたABARTH 695「フォーリ・セリエ」プログラムには、2つのラインが用意される。まずABARTH の伝統をモチーフにした「New Heritage Collection」は“ABARTH 695スコルピオーネ”と“ABARTH 695レコード”の2モデルが体現する。

ABARTH の歴史にインスパイアされた「New Heritage Collection」コレクションにおいて、過去のモータースポーツや速度記録における栄光をスポーティに体現した“695 Record”。
こちらは同じ「New Heritage Collection」コレクションでも、クラシカルでエレガントな内外装に仕立てた“695 Scorpione”。これもまた、ABARTH の魅力を伝えているようだ。



一方、ABARTH の未来のイメージを提唱する「New Wave Collection」では、“ABARTH 695ハイプ(Hype)”と“ABARTH 695ブラックダイアモンド”の2モデルが設定される。
そしてこの2ライン4タイプの基本スキームに加えて、エクステリアやインテリア、アクセントなどを、さらに好みに応じてパーソナライズできるとされているのだ。
今後の生産化などについて、少なくとも現時点では不明だが、ABARTH 独自のエクスクルーシヴ性を最も明快なかたちで表現したニューカマーとして、熱い期待が寄せられるのは間違いのないところだろう。

こちらはABARTH の未来を示す「New Wave Collection」の“ハイプ”。その名が示すとおり、現代ABARTH 固有のHyperかつカッティング・エッジなスポーツ感を強調している。
同じ「New Wave Collection」でも、ゴージャスでコンテンポラリーなミニ・スーパーカーを目指したと思われるブラックダイアモンド。こちらはカブリオレも選択できるようだ。


ところで、わが国におけるABARTH 695シリーズの最新情報と言えば、ついに日本市場でも正式リリースされた“ABARTH 695 Edizione Maserati”を挙げねばなるまい。名門マセラティとのコラボレーションによって開発された、特別中の特別なABARTH である。

マセラティ純正色“ポンテヴェッキオ・ボルドー”の3層メタリックペイントや、ダークグレーのホイールなどで、格段にエレガントかつドレッシィな雰囲気をまとったボディ。

マセラティは来る2014年には創業100周年を迎え、イタリアンスーパーカーとしても最古の歴史を誇るブランド。もともとは、マセラティ兄弟がレーシングカーを専業で作るコンストラクターとして誕生させ、アルファ ロメオを最強のライバルとした。そして第二次大戦後には、F1GPでもファン・マヌエル・ファンジオとともに1957年のタイトルを獲得したほか、レーシングカー用エンジンを豪奢なボディに載せた超高級スポーツカー、つまりフェラーリと同じステージで活躍した。また1970年代には、わが国でのスーパーカーブームの一翼を担ったことをご記憶の向きもあるだろう。
そんなマセラティとのコラボから誕生したABARTH 695 Edizione Maseratiは、「マセラティ」と「ABARTH 」という至高のダブルネームに相応しい小さなスーパーカーとなった。180psまでチューンアップされた1.4T-Jetターボエンジンや大幅に強化したシャシーなど、早くも“伝説”と称される“ABARTH 695 Tributo Ferrari”とまったく同等のハイパフォーマンスを実現した一方で、ABARTH 695シリーズとしては初めてオープントップを採用する。

ABARTH 695 Edizione Maseratiは、ABARTH 695シリーズでは初めて電動オープントップを持つカブリオレとなった。これもまた、大きな魅力の一つと言えるだろう。

また、“ポンテヴェッキオ・ボルドー”という3層メタリックペイントがもたらす高級感と、“695”のエンボス加工が施されたサンドベージュ・レザーの洗練されたインテリアも大きな魅力となっている。さらにJBL製Hi-Fiサウンドシステムを初採用する上に、マセラティの紋章“トライデント”をモチーフにした専用アロイホイールを標準装備するなど、ディテールに至るまで“マセラティ”の名を冠するに相応しい、特別感ある一台となっているのだ。

これまでの“695 Tributo Ferrari”と同じレイアウトのエンブレム。入れられるレターは「Tributo Ferrari」に代わって、「Edizione Maserati」となるのが最大の違い。
“695 Tributo Ferrari”と同じカーボン仕立てのインテリアを持つ695 Edizione Maseratiだが、サンドベージュ・レザーのシートで格段に華やかさを増している。


こちらも“695 Tributo Ferrari”と同様に、インストゥルメントパネル下部には限定バージョンであることを示すアルミ製のプラークが取り付けられることになる。
マセラティ・クワトロポルテなどに採用されている“トライデント”モチーフを生かした695 Edizione Maserati専用ホイール。スポーティかつゴージャスな雰囲気だ。


ちなみに、今年から「スーパー耐久」シリーズ国内6戦にABARTH 695アセットコルセでエントリーする“ムゼオ チンクエチェント レーシング チーム”の檜井保孝選手は、ABARTH 695 Tributo FerrariとABARTH 695 Edizione Maseratiの双方を「本気」の領域でテストドライブさせた、国内では稀有な人物である。そして“マエストロ”の称号でも知られる檜井選手は、ABARTH 695 Edizione Maseratiについて以下のように語ってくれた。

「まさしくマセラティの味付け。パワーはあるけどコントロールしやすい、大人のテイストとなっているということですね。またトリブートのタービン音も抑えられ、マセラティに相応しいサウンドとなっているのも印象的でした。そして内外装もマセラティの持つエレガントなイメージを巧みに演出していて、とても好きですね。つまり、フェラーリとマセラティのキャラクターの違いを、実に巧みに演出できていると思うんですよ。

マセラティ特有のスポーティでありながらエレガントでエクスクルーシヴな雰囲気と、ABARTH が身上とする究極のファン・トゥ・ドライブを合わせて完全両立したABARTH 695 Edizione Maserati。世界限定でわずか499台が製作されるうち、100台が日本マーケットに導入されることが決定している。

現在のABARTH のトップレンジを飾る、素晴らしき2台。日本市場専用に限定製作され、既に完売した695 Tributo Ferrariと、695 Edizione Maserati。

3月1日に正式発売となったが、一昨年に限定販売された“ABARTH 695 Tributo Ferrari”、および昨年日本市場専用モデルとして登場した“ABARTH 695 Tributo Ferrari Tributo al Giappone”が、あっという間に完売してしまったのは記憶に新しいところ。
ご興味のある向きは、お早めにアクションを起こすことをお勧めしておきたい。