2014スーパー耐久 ツインリンクもてぎRd.レポート

ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム
ドライバー 大賀裕介

 

3月29‐30日、栃木県のツインリンクもてぎにて、今シーズンのスーパー耐久開幕戦が行われました。私、大賀裕介はアバルト695アセットコルセでスーパー耐久(S耐)に参戦するムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(mCrt)のCドライバーとして参戦いたしました。

2014年シーズンのS耐は栃木県のツインリンクもてぎが開幕戦の舞台となりました。
5時間の長丁場、チームとドライバー4名全員で力を合わせ、mCrt結成2年目の挑戦が始まりました。
 

レースに先立ち、金曜日に行われたテストデーでは3時間のフリー走行。一週間前に鈴鹿サーキットでシェイクダウンテストを行ったばかりのマシンですが、もてぎ用にセットアップがなされ、快調に走行していきます。
走るたびにタイムも少しずつ良くなって、Aドライバーの蘇武(ソブ)選手が2分14秒8を記録。これは昨年の予選タイムにかなり接近しており、手ごたえを感じることができました。
そしてこの日の最後に私の走行が始まりました。久しぶりのツインリンクもてぎでの走行ですが、感覚はしっかりと残っており、問題なく徐々にペースアップしていきます。

金曜日のフリー走行。完全なドライ路面を2014年スペックのマシンで快調に走る。
 

ところが、ここでエンジンが予期せぬストップ。再始動を試みるも反応せず、不可能と判断してマシンを降りました。原因はエンジンブローでした…。
しかしピットにスペアエンジンの用意は無く、まさか予選も出られないまま終わってしまう?との思いが頭をよぎった時、「名古屋にあるスペアカーからエンジンを載せ換えよう!」というチーム監督からの声。メカニックさんも徹夜覚悟で賛成してくださり、急きょ名古屋から7時間かけてエンジンが届けられました。チームの層の厚さとメカニックさんの熱い思いに、落ち込みかけた気持ちが逆転。明日の予選はやるぞ!とモチベーションが上がりました。

まさかのエンジンブローのため、急きょ名古屋から搬送したニューエンジンに積み替えます。

迎えた土曜日の予選。早朝からエンジン交換作業をしてもらえたおかげで、予選までにクルマは完成しました。エンジンがノーマルに換装されたことでパワーは落ちましたが、ドライバー全員で精一杯のタイムアタックをすることになりました。
Aドライバー予選は蘇武選手でしたが、タイムは2分15秒4と、本人も悔しいアタックタイムとなりました。しかし、クルマの動きや昨日からの路面コンディションの違いをすぐさまドライバー全員にフィードバック。Bドライバーの白坂選手がバトンを受け継ぎコースインします。
白坂選手渾身の予選タイムはチーム一同驚きの2分14秒3。両ドライバーの合算タイムから決定される予選順位はST4クラス16番手となりました。順位こそ後方に沈んでしまいましたが、トヨタ86の一台を後方に置き、マツダロードスターにも、あとコンマ数秒のところまで迫るものとなりました。
そしてCドライバー予選は私の出番です。本来Cドライバーの予選は、翌日の決勝を見据えたセッティング確認を行う場となりますが、私自身まだ走行時間が少ないことから、経験のためにしっかり予選を走ることにしました。
中古タイヤでの予選アタックとなりましたが、マシンのフィーリングはとても良く、自分の感覚と一体となる感じがしました!そして計測一周目から2分15秒台、最終的には2分15秒3という予想外のタイムを出すことができました。
ピットに帰ってきて仲間たちと握手を交わし、フォーミュラ出身の自分がツーリングカーにもアジャストできてきたことに、手応えを持てる予選となりました。
この日は夜遅くまでドライバー全員でホテルの部屋に集まり、マシンの走らせ方の確認や決勝の作戦を話し合いました。スーパーGTなどの経験が豊富な白坂選手からアドバイスをもらいつつ、オンボード映像の確認を行い、蘇武/嶋田両選手ともお互いの走りを話し合い、決勝に挑むことになったのです。

組み上がったばかりのマシンをチェックしながらの走行後、各ドライバーによる公式予選。 
 
走行後ドライバー陣でMTGを実施。それぞれの意見を出し合い決勝に備えます。
 
今年も大人気のピットウォーク。お子様からご年配の方までたくさんの方と写真を撮りました。

そして決勝は、前日までの晴天が嘘のような大雨。ドライバー全員が、このマシンでの初めてのウエットコンディションを迎えることになりました。
スタートドライバーは白坂選手。さあやるぞ!と、ドライバー、チームスタッフ全員でグリッドへと送り出しました。
「水しぶきでほとんど前が見えない上にサイドガラスも曇ってしまい、ミラーの確認が充分にできなかった」と走行後に言っていた白坂選手ですが、なんと一時はクラス7位まで順位を上げ、アバルトの雨の走りを発揮していました。

水しぶきが雨量の多さを表すコンディション。水煙が視界を奪います。
 

約1時間の走行を終え、蘇武選手へドライバーチェンジ。白坂選手以外の3名は、実はドライバーチェンジも初体験だったのですが、前日の練習の成果を出して無事コースインしました。
蘇武選手に交代したのち、雨がさらに強さを増してきましたが、順調に走行を重ねます。
とはいえ、コースはところどころに「川」というより「池」があるすごいコンディション。コース上にマシンをとどめることが精一杯であろう状況でも、蘇武選手はしっかり走りきり、嶋田選手へ交代しました。
嶋田選手の走行中、この後の最終スティントを任された私は、蘇武選手からコース状況や走り方を、かなり細部までアドバイスしてもらいました。そして、繋いでもらったバトンをしっかりゴールまで運ぶ責任で、緊張とプレッシャーもありましたが、最大限に集中してヘルメットを被ります。
そして、あと数周でドライバーチェンジという時、メカニックさんから「クルマが何かおかしいと無線が入ったからすぐピットインするよ!」と伝えられ、ピットレーンへ飛び出しました。
ピット入り口にアバルトが現れるのをずっと待ちます…そして視界に入ってきたのは、タイヤがバーストしてフラフラと帰ってくる姿でした。
マシンがどんな状態であろうとしっかりドライバーチェンジをして、最後まで走りきるのだと気持ちを落ち着かせてマシンに乗り込みます。しかし、ここで「サスペンションが壊れているからリタイアします」という無線が入りました。最大限の集中をしていた体から一気に力が抜けていく感じがしました。

マシントラブルにより緊急ピットイン。修復不可能と判断され開幕戦が終わりました。

チームの皆がこの大雨の中を最後まで走りきるために力を合わせてきましたが、予想もしないサスペンションの破損により、開幕戦はリタイアとなってしまいました。
嶋田選手も「突然のトラブルからピットまで必死でバトンをつなごうと走った」のですが、修復は不可能でした。
メカニックさんも「ごめんね…」と声を掛けてくださいましたが、こればかりは誰も予想できないトラブルであり、誰の責任でもないと私自身は感じます。ご声援をいただいた皆様にはとても残念な結果のご報告となってしまいました。
レース終了後早々にミーティングを行い、次のスポーツランド菅生で行われる第2戦に向けてのテスト走行スケジュールやマシンの方向性などを話し合いました。
また、落ち込んでばかりいるのではなく、今回の走行データを隅々まで解析し、得たものと改善点を洗い出して、ドライバーとしてどんどん成長できるように努めます。悔しいこともステップに…次戦はまた力をつけたmCrtをお見せしたいと思います。
 

第2戦は5月24‐25日 宮城県スポーツランド菅生にて行われます。
応援よろしくお願いいたします!

開幕戦ドライバー。左から白坂選手、嶋田選手、蘇武選手、大賀選手。