チャレンジの精神を病気と闘う子どもたちへ シャイン・オン!キッズとそのサポーターたちの挑戦

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勇気と希望をその手に

2月某日、東京アメリカンクラブのボールルームでは、“マルディグラ”を模したチャリティイベントが行われた。マルディグラとは、四旬節の前に行われるカーニバルのこと。米ニューオーリンズなどマルディグラが盛んな地域ではこの日、街はテーマカラーである紫や緑、金の華やかな色で染まり、仮装パレードで賑わうという。もともとは断食の前夜に行う宗教的行事であり、着地点はハッキリしていた。それは今回の「シャイン・オン!キッズ ガラ 2019 マルディグラ・マジック」も同じだ。

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マルディグラが盛んなニューオーリンズから訪れたミュージシャン「ウォッシュボード・チャズ」が生演奏を披露。

シャイン・オン!キッズ主宰のこのガラパーティは、小児がんや重い病気と闘う子どもたちやその家族を支援する活動資金を調達するためのチャリティイベントとして実施された。会場には、個人や企業の支援者をはじめ、運営に関わる団体関係者ならびにボランティアスタッフが数多く集まった。

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シャイン・オン!キッズの支援団体であるアバルトは、会場で来場者が楽しめるゲーム「ピンポンチャレンジ」を実施。こうしたゲームなどを通じて得られた収益金はすべてシャイン・オン!キッズの活動資金に充てられる。

会場では、ニューオーリンズから特別ゲストとして招かれた「ウォッシュボード・チャズ」のライブやオークション、ラッフル、ゲームなどが行われた。収益金は、すべてシャイン・オン!キッズが運営する「ファシリティドッグ・プログラム」と「ビーズ・オブ・カレッジ」の活動に充てられる。ファシリティドッグとは、病院で重い病気と闘う子どもたちを笑顔にするために医療現場で活動する犬のこと。医療スタッフの一員として病気の子どもたちやその家族にとって大きな支えとなり、癒しや前向きな気持ち、元気をもたらしているのだ。ファシリティドッグは現在、静岡県立こども病院と神奈川県立こども医療センターで活躍しており、シャイン・オン!キッズではそのさらなる普及に尽力している。

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特別な訓練を受けたファシリティドッグは、看護師資格を持つハンドラーとともに、病院の子どもたちを勇気づけている。

一方のビーズ・オブ・カレッジは、病気と闘う子どもたちが、色とりどりのビーズを“勇気の印”としてつづっていくプログラム。つらい検査や治療を乗り切った証として、また、これからがんばろうという時に、ビーズを通じて勇気とパワーを手にしてもらうことを目標としている。治療によりビーズの種類は決められていて、子どもたちは、治療の記録となるこのビーズに集める楽しみを感じたり、精神的な支えとして身につけたりする。特別なときに子どもが受け取るビーズの中には一般の人の支援で成り立つものもいくつかあり、そのひとつ「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」は、支援者が何かにチャレンジする時にペアのビーズの片方を身につけ、もう片方を病気と闘っている子どもが身につけ、ビーズを通じてパワーを届ける仕組みだ。

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ビーズ・オブ・カレッジに使われるビーズ。治療を乗り越えるごとに、それぞれの治療を象徴するビーズが贈られる。小児がんの子どもが集めるビーズは、平均で900個にも及ぶという。

それぞれのチャレンジ。この日、会場にはファシリティドッグ・プログラムを経験した優作くんとそのお母さんが登壇し、闘病時のことについて話してくれた。優作くんは入院した翌日に、ファシリティドッグのベイリーがベッドの脇にいた時の驚き、そのふわふわした体に触った時の喜びや「処置室に行くのが怖かった時に、ベイリーと一緒だから入ることができた」という体験や、ベイリーの後継のアニー、ならびにハンドラー(看護師資格を持つ、ファシリティドッグをコントロールする人)の森田さんと過ごした入院生活の思い出を話してくれた。またお母さんは、「処置室の前で優作くんを待つ不安で長い時間を、アニーや森田さんが一緒に居てくれたおかげで安心して穏やかに待つことができた」と打ち明けた。そして辛かった放射線治療をファシリティドッグのおかげで乗り越えられたことを告げ、ファシリティドッグがどの病院にも当たり前のようにいる未来が訪れることを切に望みますと述べ、スピーチを締めくくった。

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ボランティアの方々のそれぞれのチャレンジ

ガラパーティの会場には、来場者が心地よく過ごせるように運営をサポートする大勢のボランティアの姿があった。学生または職業を持ちながら、ボランティアとしてシャイン・オン!キッズの活動をサポートしている人たちだ。そんな彼・彼女らに、奉仕活動を行うに至った経緯やそれぞれのチャレンジについて聞いた。

ナヤさん・学生

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「わたしは高校を卒業し、次のステップに進むまで時間があったので、その間にできるボランティアを探しました。学校でメンタルヘルスについて学んだので、それに関連する組織を調べたところ、シャイン・オン!キッズの存在を知りました。自分自身、辛い経験をしたことがあるので、メンタル面で他の人のサポートをできたらと思ったのです」

──ボランティアを通じて、なにか新しい発見はありましたか?

「シャイン・オン!キッズでは、ビーズ・オブ・カレッジのサポートやイベントの運営に携わっています。おかげで運営について学び、プロジェクトを組み立てていく過程を目にすることができました。こうした経験を将来に役立てていけたらと思っています」

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──ナヤさんのチャレンジについて教えてください

「わたしは7歳の時にニュージーランドから日本に移住してきました。これまでに10か所ぐらい異なる地域に移り住み、自分の故郷というものがない、そういう環境で育ちました。自分にとってのチャレンジは、新しい環境でもその場所に依存しない自分の幸せを見つけることです」

マーニー・メイズさん・教師

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「ボランティアを始めて4-5年になります。もともとはパートナーがシャイン・オン!キッズで働いており、活動について聞くにつれ、自分もやりたいという気持ちになりました。パートナーがシャイン・オン!キッズを離れてからも、ボランティアを続けていますし、これからも続けていくつもりです」

──ボランティアをしようと思った最大の理由はなんですか?

「ビーズ・オブ・カレッジとファシリティドッグ・プロジェクト。これらは本当に子どもたちにとってベネフィットがある素晴らしいプロジェクトだと思います。わたしの地元アメリカと日本では治療方法に大きな違いがあります。アメリカでは通院で治療を行いますが、日本では子どもは入院をします。そういう生活において、ファシリティドッグが果たす役割はとても大きいと思います。ですから自分もその普及に貢献したいと考えたのです」

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──マーニーさんの自らのチャンレンジについて教えてください

「最大のチャレンジは日本語を上達させることですが、それ以外のことでは、ボランティアを続けていくこと。フリーの時間は限られてしまい、いつもボランティアできるわけではありません。でも続けていきたいので、もっとボランティア時間を作ることにチャレンジしたいです」

アントン・マクロイさん・英会話スクール経営

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「わたしは静岡県・富士市でCrib 英会話という小さな英会話スクールを営んでいます。シャイン・オン!キッズへと改名する前のタイラー基金の頃からのメンバーですから、14年ボランティアを行なっています。ニュージーランドから日本に移り住んでからは20年以上になります」

──シャイン・オン!キッズで活動される意義を教えてください

「正直な意見として、私はシャイン・オン!キッズに対してしていること以上に、シャイン・オン!キッズが私にもたらしてくれるものの方が多いと思っています。活動へのサポートを通じて、わたしはエモーショナルな幸せと、精神的な満足感を得ることができています」

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──アントンさん自身の挑戦はなんでしょう?

「自分のチャレンジは、故郷から離れた場所でも、自分がなれるベストな人間でいることです。自国に住んでいるぶんには、それは容易なことだと思いますが、故郷から離れた場所で常にベストな自分でいることは時に困難を伴います。かつては浮き沈みを経験しました。でもいまは仕事も順調で妻や子どもと一緒に幸せにやっています。これからもメンタル面でポジティブであり続けたいと思っています」

人により支援の方法はさまざま。寄付や支援を行う人がいれば、ボランティアとして運営をサポートする人たちもいる。そしてサポーターの方々もそれぞれ、時に困難を経験し、それを乗り越えようと努力されているということが伝わってきた。明日をもっと明るくするため。ひとりでも多くの子どもたちに勇気を届けるために。シャイン・オン!キッズとボランティアの方々の挑戦は続く。

写真 荒川正幸

シャイン・オン!キッズ公式ページ