新感覚の参加型モータースポーツ「ベストカー x ABARTH オートテスト@佐賀」の模様をレポート! 

今年本格始動する「ABARTH オートテスト」の第1回目が3月26日、佐賀競馬場の駐車場で開催された。このイベント、参加者からはモータースポーツとドライビングレッスンを一度に味わえると好評だった。さっそくその模様をお伝えしよう。

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JAFも導入 いま注目のモータースポーツ

3月26日、佐賀県鳥栖市の佐賀競馬場の駐車場で、2016年のオートテスト第1回目となる「ベストカー x ABARTH オートテスト@佐賀」が開催された。オートテストとは、モータースポーツが盛んな英国で生まれたミニジムカーナのような走行イベントで、コースにバックギアで走るセクションが盛り込まれているのが特徴。国内では2015年にJAFが導入を発表し、2016年から開催される、いま注目の競技だ。そのオートテストの形式を採用したABARTH オートテストは、ノーヘルメット、カジュアルな服装で誰もが気軽に参加できる草の根のモータースポーツであり、またクローズドコースでABARTHの走りを存分に楽しめる体験イベントでもある。

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コースは、レース経験が豊富なムゼオ チンクエチェント レーシングチームが設計。インストラクターが実際に走らせながら煮詰めた。砂利が多い場所にはコーナーを設定しないなど、安全性も配慮されている。

自動車専門誌『ベストカー』とABARTHの共催で行われた今回のオートテストは、雑誌やホームページ、Facebookなどの告知を見た自動車好きの皆さんが多数エントリーした。参加者は年齢もモータースポーツ経験もさまざま。2015年9月に兵庫県西宮市で試験的に開催された「ABARTH SAFETY DRIVING CAMP」 と同様、ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(mCrt)の運営サポートにより実現した。インストラクターは、mCrt所属ドライバーおよびABARTHオーナー向けドライビングレッスンでインストラクターを務める現役ドライバーが集まり、参加者への運転アドバイスや競技の盛り上げに尽力してくれた。モータースポーツはマイカーで参加するのがほとんどだが、ABARTH オートテストでは、ABARTHの走りを存分に味わってほしいという趣旨から、車両は主催者側が用意。今回は先日デビューしたばかりの「NEW ABARTH 595 COMPETIZIONE」および「ABARTH 500」の5MT仕様/ATモード付き5速シーケンシャルトランスミッション仕様(AT仕様)が用意され、参加者は乗りたい車両を選び、競技に挑んだ。

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試乗車のひとつ「NEW 595 COMPETIZIONE」は、今年3月にマイナーチェンジで最高出力が180psにパワーアップした。トランスミッションは5MT仕様とAT仕様が用意される。なお試乗車のラインアップは大会ごとに異なる。

オートテストは、走行前の慣熟歩行に始まり、同乗するインストラクターからアドバイスを受けながら走る練習走行2本と、タイムトライアル2本の計4セッションで行われる。また、2回目のタイムトライアルの前には、インストラクターが運転する車両に同乗できるサーキットタクシーが行われ、プロの走りを間近で見る機会が用意された。参加者は走行時間をたっぷり満喫しつつ、待ち時間には他の人の走りを見たり、インストラクターにアドバイスを求めたりしながら場の雰囲気を楽しんでいる様子だった。

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「せっかくなので思いっきり走りましょう」というインストラクターのアドバイスの通り、ABARTHの性能を存分に引き出して走る参加者たち。短いホイールベースながらも安定した走りに驚く姿が見られた。

鹿児島県から参加の松倉雄大さんは、自作のステッカーでラリーカー風に仕立てた「三菱 ランサーエボリューションIX」で会場に訪れた。聞けば、昨年4月に佐賀県・唐津市で行われた全日本ラリー選手権で、ABARTHのラリーカー「500 Rally R3T」を見て以来、ABARTHブランドの動向をチェックしていたところ、イベントの告知を見つけて参加を決めたのだとか。ちょうどJAFスポーツでオートテストが取り上げられたことから、競技にも興味を持っていた。
「以前にナビゲーターとして競技に参戦した経験はあるのですが、自分で運転するのは初めてです。オートテストがどんな競技なのか、あとABARTHがどんな感じなのか楽しみです。ジムカーナのような走りができる試乗の機会は貴重なので、ぜひ楽しみたいと思います。コースを覚えられるか不安もありますが……」と走行前の心境を話してくれた。

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ABARTHのラリーマシン「R3T」を見てABARTHに魅了されたという松倉さん。オートテストでABARTHの初走行を楽しんだ。

まずは慣熟歩行でコースを覚えるところから

コースはスタート地点からコース全体を見渡せる広さ。インストラクターの運転で1周43-44秒ほど。所どころに置かれたパイロンを目印にしながら、記憶を頼りに所定のルートを進んでいくのだが、慣れない人にとってはコースを覚えることが最初の難関となっている模様。練習走行の前には慣熟歩行と呼ばれる、コースを歩いて回る時間が用意されるので、ここでコースを頭に叩き込みつつ、インストラクターから攻略法を聞く。ブレーキポイントやライン取りのコツなどを質問している姿も見られた。

左の写真の左側は、ドリフト競技歴7年の石川紗織さん。2015年には「D1 STREET LEGAL WEST」と「D1 LADIES LEAGUE」のダブルチャンピオンに輝いた。ABARTHドライビングアカデミーのインストラクターも務める。中央の眞貝知志さんはmCrtから全日本ラリー選手権に参戦するラリイストで、ABARTHオーナー向けのドライビングアカデミーのインストラクターも務める。2015年には「500 Rally R3T」で優勝を果たした。右の蘇武喜和さんはmCrtからスーパー耐久に参戦するドライバー。右の写真は慣熟歩行の様子。

2回の練習走行で徐々にペースアップ

もうひとつ参加者にとって気になるのは、クルマをうまく操るコツ。眞貝インストラクターいわく「ABARTHは、運転の仕方がクルマの動きに表れやすいので、うまく扱えば思い通りに動いてくれるし、失敗してもそのままで出てしまいます。運転の奥深さを味わえる、いいクルマだと思います」とのこと。石川インストラクターからは、「今回のコースは広くて安全ですが、路面は砂利が浮いていてトリッキーですのでクルマの色々な挙動を体験できると思います。でもABARTHは電子制御がじつに優秀なので大丈夫です。ぜひそのあたりを味わってみてください!」というアドバイスが聞かれた。

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石川インストラクターは「オートテストは運転技術を向上させながら、ABARTHを楽しむためのイベントです。気軽に参加できるので女性の方もぜひ。買い物に行くようなペースで走ってもまったく問題ありませんので」と女性の参加を呼びかけている。

1回目の練習走行では参加者はインストラクターの言う通り、少しペースを落としてコースを頭に叩き込み、2回目でペースを上げ、コースやクルマの感覚を掴んでいく。ちなみに1回目はインストラクターも同乗するためアドバイスを聞きながらの走行が可能。2回目の練習ではインストラクターの同乗と単独走行の好きなほうを選べる。参加者はこの頃からだいぶ運転に慣れてきて、徐々にペースを上げていた。

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練習走行を終えた大坪篤史さんに感想を聞いてみた。大坪さんは『ベストカー』のホームページを見て、会場が家から近かったので参加を決めたという。この春に就職する新社会人さんで、愛車はご家族から譲り受けた「ホンダ フィット」。ABARTHに触れるのは今回が初めて。
「競技自体が初めてなので、最初はすごく緊張しましたが、フレンドリーな雰囲気で良かったです。練習走行を走った印象ですか? そうですね、もっと腕を磨きたいと思いました。クルマは『595 COMPETIZIONE』のAT仕様を選びましたが、アクセルを踏み込むと、どこまでも加速していきそうな感じが印象的でした」。

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大坪さんは初めてのモータースポーツということで緊張しながらも場の雰囲気を楽しんでいた様子。単独での参加だったが、会場では他の参加者とのコミュニケーションを楽しんでいた。

いよいよ本番 バックで苦戦する参加者も

いよいよタイムトライアルの開始。2回の練習走行の成果なのか、多くの選手がスタートからアクセル全開で砂利を巻き上げながら、猛ダッシュですっ飛んでいく。ホイールスピンしたタイヤのグリップを探りながらアクセルの踏み具合を調整して加速していく様子などは、本格的な競技そのもの。待機中の参加者の視線が1台のマシンに注がれ、ドライバーのテンションも上がり気味の様子。

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本番ではどの選手も練習走行の時より速くなっていて、50秒を切る選手もいた。けれどもなかなかうまくいかないのが、バックセクション。ここでは高速で突っ込んできて、勢い良くブレーキ。車両の両脇のパイロンがホイールベース内に収まる位置に停止したら今度は90度後ろ向きにバックし、もう一度ホイールベース内に両脇のパイロンが収まる位置で停止する。正しい位置で止まったことをマーシャルのグリーンフラッグで確認してから再びコースに戻る。これがなかなか難しく、止まる時に停止位置を過ぎてしまったり、手前で止まってしまったり、はたまたうまくバックギアが入れられなかったりと、ミスが続出。途中まで速かったのにここでミスしてしまうと、周囲からも「あーあ」というため息まじりの声が漏れた。

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「いやー、ABARTHは見た目と違って、とてもワイルドですね」と話してくれたのは、山口からお越しの芦沢宏之さん。
「わたしはホンダのVTECエンジンが好きで『CR-X』、『アコードクーペ』と乗り継ぎ、いまは家族向けのファミリーカーに乗っていますが、ABARTHが好きでFBなどをちょくちょくチェックしていました。ABARTHは、普段はおとなしいけどちょっと凄いんだぞ、みたいな雰囲気が好きです。サソリのマークもかっこいいし。走らせた印象は、そうですね、個人的には『500』のほうが好みでした。『595 COMPETIZIONE』も後からグッと押される感じはイイんですけど、細かなアクセル操作が要求される今回のようなコースを走るとなると、アクセルが過激過ぎない『500』が走りやすいかな、と。2回目の計測もがんばります!」

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「500」のマイルドな特性がお気に入りという芦沢さん。

本番走行2本目 タイム短縮なるか!?

さて、いよいよ最後のタイムトライアル。走行前にインストラクターが助手席と後部座席に参加者を乗せてプロの走りを披露した。その甲斐もあってか、多くの参加者が1回目の走行よりタイムを縮めることに成功。47秒台の好タイムをマークする人もいて、最速の人はなんと45秒台をマーク。インストラクターの1-2秒遅れにまで迫った。

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参加者は皆、練習走行とタイムアタック、そしてインストラクターの同乗走行を体験したことで、何かを身につけた模様。とはいえ、熱くなりすぎるようなことはなく。スピンした人は1人もいなかった。人と競い合うことよりも、オートテストという新しい競技に挑戦しながらABARTHの秘めた性能を引き出すことを楽しんでいる様子だった。

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福岡からお越しの宮崎能次さんは、「フェラーリ550マラネロ」や「マセラティ グランツーリスモ」といったスーパースポーツを所有する一方、普段の足はもっぱら「ホンダ ビート」という生粋のスポーツカー愛好家さん。以前に横浜に住んでいたときは、筑波サーキットで行われたヒストリックカーレースに「アルファ ロメオ 1750GTV」で参戦していたとか。
「こっちに引っ越してからもう12年ですが、その間モータースポーツはまったくしてこなかったので、ずいぶん久しぶりです。でも機会があればもう1度やりたいなという気持ちはありました。ABARTHには以前から興味はあったのですが、乗ったことはなかったので参加してみることにしました。実際に乗ってみると、とても扱いやすく、イメージとすいぶん違いました。特に電子制御の仕上がりがスゴイですね。過剰に入りすぎず、必要なぶんだけ効いているという感じで。あとはエンジン、いまどき珍しいドカンターボです。最近はマイルドなターボ車ばかりですので、こういうのに乗るとワクワクしますね。それこそ筑波サーキットで乗ってみたいです」と話してくれた。

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「FFで180psと聞いたとき、どんな乗り味かと思っていましたが、実際にはとても扱いやすく、感心しました」とコメントしてくれた。

イベントの最後には表彰式と記念撮影が行われた。1位は45秒台を叩き出した下玉利 誠さん。2位は福重孝史さん。3位は松尾聡志さん。なお今回のオートテストの模様は4月10日発売の『ベストカー』に掲載予定とのこと。そちらも乞うご期待!

45秒という好タイムをマークして、見事優勝した下玉利 誠さん。

安定した走りで2位に入賞した福重孝史さん

練習走行で感覚を掴み、1度目と2回目を大きなミスもなくこなした松尾聡志さん。

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最後に参加者全員で記念撮影。

Text&Photos:Takeo Somiya