第4回アバルト ドライビング ファン スクール

アバルトとともに走る楽しさを学び、アバルトを知り尽くすことを目的に今シーズンから始まった“アバルト ドライビング ファン スクール”。8月9日の鈴鹿ラウンド(第3回)に引き続いて、9月29日には富士スピードウェイ ショートサーキットおよびP2駐車場にて第4回が開催されることになった。

この日設定されたステージ、富士スピードウェイ ショートサーキットは、いわゆる“ミニサーキット”。F1日本GPの舞台としても知られる前回の鈴鹿サーキット本コースに比べると、ことエンターテイメント性に限定してしまえば若干引けを取るとも思われるのは無理もないだろう。ところが実際には、より実質的にドライビングを学ぶ「学習」の場としての属性が強く、レーシングスクール会場としての資質ではまったく負けていないように感じられたのだ。

この日メインインストラクターを務めた山路慎一氏は、富士スピードウェイ ショートサーキットに深いゆかりのある人物。このサーキットを本拠とする“フォーミュラ トヨタ レーシング スクール(FTRS)”校長にして、コース設計にも関与した(ちなみに第1回“アバルト ドライビング ファン スクール”のメインインストラクターでもある)関谷正徳氏とともに、実はこのサーキットを作り上げた張本人とのことである。

今回メインインストラクターを務めた山路慎一氏。会場である富士ショートサーキットの企画に携わった彼は、このコースがスクール運営を意識して作られたことを語ってくれた。

その山路インストラクター曰く、富士ショートサーキットは元よりレーシングスクールを意識して設計されたものとの由。地形に合わせて登り/降りをハッキリと体感できる上に、アンダーステアやオーバーステアも意識的に出やすくなるコーナーレイアウトなども緻密に作り込まれているという。また、この種のスクールでは絶対に重要視されるべき座学についても、コース全景をほぼ見渡せるミーティングルームで行うことができるなど、レーシングスクール会場としての適性を徹底的に追求したサーキットなのである。山路インストラクターは今回のスクール全日程を終えたのち「世界でこれから活躍することになるFTRSの若手ドライバーたちと同様に、ここで学んだアバルトドライバーの皆さんにとっても思い出深い場所になって欲しい。」という熱いコメントを残してくれた。

一方P2駐車場で行われたコーナーリング/ブレーキングレッスンと模擬ジムカーナでも、今回は特に座学に力が注がれ、受講生それぞれのアバルトの挙動をまずは理論として確実に理解することが求められることになった。またそののち実践的な走りについても、経験豊富なインストラクターからみっちり学ぶことができたのだ。つまり、富士スピードウェイ ショートサーキットおよびP2駐車場を組み合わせた今回の会場は、アバルト生来の魅力を充分に引き出せるだけのスキルを頭と体にしっかりと身につけ、より高いレベルでアバルトの性能と個性を知り尽くしていただくというドライビング ファン スクール生来の目的には、より好適なステージであることを証明したことになる。

ブレーキングレッスンのあとは、実際にタイムを計測する模擬ジムカーナ形式のハンドリングレッスン。座学で基本理論を学んだおかげか、素晴らしい走りっぷりを見せていた。
ショートサーキットでは、インストラクター同乗による実践レッスンも行われ、座学で学んだサーキット走行理論をさらに深く理解することができるプログラムとなっている。


そしてもちろんレッスン終了後には、受講生たちにとって最高のお楽しみ。ショートサーキットのフリー走行が行われた上に、特に今回は各インストラクターによる模擬レースも敢行。
山路インストラクターと砂子インストラクターが展開したテール トゥ ノーズの熾烈なバトルは、あくまで確実な安全マージンを保った上で激しく走るという、受講生にとっても“最終到達点”となるような模範走行を示してくれることになったのである。

すべての受講生が待ち望んでいたフリー走行。ここでもスクール運営を前提に設計された富士ショートサーキットの特質を生かし、楽しくも安全なサーキット走行が行われていた。

今回も受講生の同伴者などを対象に、講師陣による“サーキットタクシー”を実施。またアバルト最新モデルに乗ることのできる試乗会や、“ジムカーナタクシー”も行われた。
こちらも同伴者や試乗希望者を対象に開催された座談会。アバルト輸入元であるフィアット クライスラー ジャパンのスタッフに加えて、桧井インストラクターも参加した。


すべての講習が終了したのち、インストラクター陣による模擬レースも開催、山路メインインストラクターと砂子塾長の熾烈なバトルに、会場は大いに盛り上がることになった。

ところで、この日のアバルト ドライビング ファン スクールでは、前回の鈴鹿ラウンドに引き続いて“ACI-CSAIフォーミュラ・アバルト”と、現代アバルトが500をベースに開発した純粋なレーシングカー、500アセットコルセが“ゲスト”としてデモンストレーションランを披露。それぞれのドライブを担当した桧井保孝インストラクターと砂子智彦インストラクターから、両マシンのショートインプレッションを伺うことができた。
 
2度目のデモランを披露したフォーミュラアバルト。小さいコースでなかなかギア比が合わなかったそうだが、ブーストが効いたときの速さはカメラが追い付けないほどだった。

今回、フォーミュラアバルトのドライブを担当した桧井保孝インストラクター。フェラーリ使いとして知られる彼だが、アバルトの素晴らしさにすっかり感化された様子だった。

まずは2度目のデモランとなるフォーミュラ・アバルト。今回操縦した桧井インストラクターは、かつてF3やF3000などのフォーミュラレースで活躍した経歴の持ち主である。
「このクラスのフォーミュラで、ターボ車ってほかには存在しないですけど、乗ってみると非常ににユニーク。F3は“回転数と相談”って感じで走らせるんですが、こちらは“ブーストと相談”という気がしますね。ブーストを保って走らせるとホントに楽しくて速いですよ。ターボが利いてる領域でのトルクは、NAのF3より全然ありますしね。また、ウイングを立ててみたりとかのセッティングの効果がハッキリ出ることからも、登竜門フォーミュラ向けであるとともに、アマチュアが楽しむにも最高のマシンと言えるでしょう。」

アバルト500ロードカーと比べても、格段に速いスピードを見せつけたアセットコルセ。一見したところロードカーとあまり変わらないが、その内容は純コンペティツィオーネ。

日本を代表する“教え上手”、塾長の愛称で知られる砂子智彦インストラクターは、今回初めて本気で走らせたアバルトを“ちびっこギャング”と命名。この表情がすべてを語る。

一方、500アセットコルセに乗った“砂子塾長”こと砂子インストラクターは、1990年代のグループA時代からスーパーGTに至るまで“ハコ車”スペシャリストとして素晴らしい戦績を挙げたドライバーである。
「フロントの剛性がとても高くて、リアのスリップアングルを上手く作ってくれるので、フロント側のアンダーを上手くリアに分散してくれる。この短いホイールベースであれだけ走ってくれるのは、ちょっと驚きでした。でもこれは、ロードカー版の500も同じ特性。もともとの素性がバツグンに良いんでしょうね。短いホイールベースは、アバルト500にとっては絶対に魅力のポイントだと思いますよ。アセットコルセでは若干のターボラグも出ますが、それさえ楽しくなっちゃう。もうこんな“ちびっこギャング”たちに乗るのは久しぶりでしたから、ホントに愉しい一日でしたよ。」

今回ももちろん、サソリの爪を象ったスタイルで恒例の記念写真が行われた。この日一日みっちりと学ぶことのできた受講生と講師たちの満足げな表情が、写真からも伺われる。