りんご先生の運転お悩み相談室 第1回「ドライビングシューズはどう選ぶ?」

アバルトは、スポーツモデルにしては珍しいくらい女性ファンや女性ユーザーが多いブランド。女性向けに開催している「SCORPIONNA DRIVE for WOMAN(スコーピオンナ・ドライブ・フォー・ウーマン)」というドライビングレッスンも毎回、満員御礼。アバルト女子たちの間では“いつかは参加したいレッスン”と噂されているのだとか!?


SCORPIONNA DRIVE for WOMANのレッスンや“女子会”の模様。

そんなアバルト女子たちに向け、新たな企画も進行中。オンラインによるドライビング ワンポイントレッスンの配信や、誰でも参加できるオンラインイベントを予定しているのでお楽しみに!

Scorpion Magazineでも、女性ドライバーに(もちろん男性ドライバーにも)たっぷりと役立てていただけるドライビングに関するお役立ち情報を展開していきます。題して『りんご先生の運転お悩み相談室』。SCORPIONNA DRIVEのインストラクターで、ドリフトのレディスクラスのシリーズチャンピオンにも輝いたプロドライバー、“りんごちゃん”こと石川紗織さんに、ドライビングにまつわる疑問や悩みの解決、上達のための手ほどきをしてもらおうという企画です。意外と見逃しがちなごく基本的なところをしっかり見つめ直し、誰もが日常的にクルマを走らせる中でもしっかりと上手くなっていけるような、そんな展開を目指して──。


運転上達の手ほどきをしてくれるりんご先生=石川紗織さん。

第1回目のテーマは、アバルト女子たちの間で話題になることも多い“ドライブに最適なシューズ選び”について。クルマはペダルを踏まないと走っても停まってもくれませんが、ただ踏めばいいってものではなく、的確にペダル操作することが重要。そして的確なペダル操作のためには、ドライバーの足元、つまりシューズがことのほかに重要な役割を果たしている、というお話です。

運転が好きで上手くなりたいなら、シューズ選びは基本中の基本

──りんご先生も、ドライビングのときのシューズにはこだわってますか?

もちろんです。以前、とあるドライビングレッスンのとき、インストラクターが感心しちゃうぐらい運転の上手な方が参加されていて、でもその方がとあるコーナーの手前で上手くブレーキングができず、まっすぐ突き進んでいってしまったことがあったんです。その原因がシューズでした。普通の街履き用のスリップオンタイプで、サイズも合ってなかったんでしょうけど、ペダルを踏み換えるときにカカトが脱げて、ブレーキを踏みそびれちゃったそうなんです。コースだったからよかったけど、それが街中とかワインディングロードだったら、大惨事ですからね。シューズって、皆さんが思っている以上に重要なんです。


日常のドライブでも、ペダル操作のしやすいシューズを履くことは快適な移動や安全運転につながる。

──なるほど。りんご先生はどんなふうにシューズを選んでいるのですか?

私のシューズ選びのポイントは、4つあるんです。

1、ソールの柔らかいもの
2、関節の動きを邪魔しないもの
3、紐靴であること
4、気持ちのテンションが上がるもの

ソールの柔らかいものというのは、絶対中の絶対ですね。ペダルを踏んでいるときにその感触がわかりやすいし、微妙にチカラを入れたり抜いたりしたいときにも、ちゃんとそれをペダルに伝えやすいですから。足の裏で直接ペダルを踏んでいるみたいな、優しいタッチのものがいいですね。厚底スニーカーとかは絶対にあり得ないし、ヒールで運転なんてもっとあり得ないです(笑)。それから、レーシングシューズのようなデザインをしてるけど、実はソールが硬くてペダル操作にはあんまり適してない、っていうものもあったりするんです。そういうものを選ぶぐらいなら、ピッタリと足に合ったソールの薄くて柔らかいスニーカーの方がいいと思いますよ。ここはよくシューズを買うときに注意して欲しいポイントですね。ちなみに私は街乗りではスニーカー、サーキットでは競技用のレーシングシューズを履いています。


究極のドライビングシューズであるレーシングシューズを見せてもらった。写真はりんごさんが実際に使っているもの。ソールは薄くて柔らかくつくりで、見るからにペダル操作がしやすそう。

関節の動きを邪魔しないものというのは、指の付け根とか足首の関節の動きが悪くなると、自分ではちゃんと操作したつもりなのに、狙ったとおりにできないことが多いからなんです。ソールが硬いものは指の付け根の動きを邪魔しちゃうし、ハイカットの靴とかブーツとかは足首の動きの自由度を狭めちゃいます。だからそういうシューズは、私はドライブするときには履きません。

プロらしいこだわりと、女子らしいこだわりと

紐靴を選ぶのは、例えば爪先に近い方は少し緩くして、足首に近いところは強く締め気味にとか、自分が操作しやすいように、部分的にテンションを変えられるからなんです。アイススケートの選手も、皆さん自分の滑りやすいテンションで紐を縛ってるんですよ。ここを意識すると、実は結構、動きが変わるんです。街乗りのときにはあまり神経質にはなっていないですけど、サーキットを走るときとか真剣に走るときには、レーシングシューズの紐をちゃんと調整してますよ。そのレーシングシューズも、平たい紐で噛み込みのいい、テンションの調整がしやすいものを私は選んでいます。


紐靴は部位ごとにテンションを調整できるメリットが。写真は、パトリックのロングセラーのスニーカー「ダチア」。ソールが薄い割にクッションがよく、快適な履き心地を実現している。

気持ちのテンションが上がるものっていうのは、それが何であるにせよ、大切でしょう(笑)? シューズの場合もブランドだったりデザインだったり色使いだったり、自分の愛せるものを使うと気分よくドライビングができますから。女子ですし(笑)。

──かなりのこだわりぶりですね。

運転するときは、シューズには身体の一部になって欲しいんです。それがレーシングシューズであってもドライビングシューズであってもスニーカーであっても、サイズがピッタリ合ってるのはもちろんのこと、自分の足との一体感が得られるものを選ぶっていうのが大前提。運転が好きでもっともっと上手くなりたいと思うのであれば、シューズもしっかり考えて選んでいくっていうのは基本中の基本、といっていいかもしれませんね。ときどきエンジンのパワーがあれば速く走れるしブレーキの性能が高ければちゃんと停まれるって思ってる人もいるんですけど、そのパワーやブレーキの性能を生かせるかどうかは右足次第、右足をちゃんと適切に機能させられなければ、必要なときに上手にパワーを使うこともできないし、ブレーキもちゃんとローターをつまんでくれないんですよ、ということですね。


写真は、ネグローニのスリップオンタイプをベースに、ディテールをカスタムしたオーダーメイド。ドライビングシューズ専門メーカーだけあって、カカト上部が内側に湾曲した形状となっていて、内部はカカトが引っ掛かる構造になっている。随所に足にフィットする工夫がなされている。

──なるほど。1mmとか2mmの踏み込み具合で勝負が決まるプロのセリフだから、説得力がありますね。

毎日勝負してるわけじゃないですけど(笑)、でも運転するときに履くシューズは決まっています。ドライビングに適したシューズばかり。でも、例えばフォーマルな場に出掛けるときも、やっぱりあるんですよね。そういう日には運転するときには運転用、クルマから降りたらヒールのある靴、と履き替えています。常にお洒落にこだわっていたい女子は、クルマの中にドライビング用の“置き靴”をしておくのもいいかもしれませんね。


TPOに合わせてブーツやヒールを履きたいことも。そんな時には置き靴をするのもあり。ソフトケースに入れてシート下のスペースに滑らせておけば収まりも○。

──シューズの選び方をレクチャーしていただいたところで、次回はその次なるステップ、的確なペダル操作をするコツとその練習法についてお話いただきたいと思います。乞うご期待。

りんご先生の近況報告

最近、フィットネス用のスポーツウォッチを買ったんです。それ以来、自分の心拍数をチェックするのが楽しくて(笑)。ちょっとしたときに“今、心拍数はどうかな?”なんてチェックしたりしています。ウォーキングやジョギングするときも心拍数を意識するようになって、余計に楽しくなりました。トレーニングでカート乗ることもあるんですけど、午前中の1本目の走行のときには、やっぱり心拍数が上がるんです。朝イチに急激な運動をするからそれで上がってるっていうことも考えられるけど、やっぱり緊張してるっていうのが大きいんでしょうね。タイムを計っても、心拍数が高いときにはいいタイムは出ないし、落ち着いているときの方がいいタイムが出ます。そういうところから自分のメンタルトレーニングもちゃんとやらなきゃなって意識できたりもして、私もちゃんと血の通っている人間なんだなって思えます(笑)。なので、最近のマイブームは心拍数管理というか、心拍数観察ですね(笑)。これを着けていると何をしても楽しいです。


りんご先生の最近のお気に入り、スポーツウォッチ。

さて、ドライブにふさわしいシューズ選び、いかがだったでしょうか? 今回は運転のしやすいシューズとはどういうものか、というお話でした。

さて、冒頭でも触れたように、りんご先生のオンライン ドライビングレッスンや、素敵なゲストを招いてのオンラインイベントが2020年6月に開催予定。まもなく情報が公開予定なので、ぜひアバルトのオフィシャルWEBサイトやSNSをチェックしてください!

アバルトオフィシャルWEBサイト

文 嶋田智之