この子と過ごす毎日が特別です アバルトライフFile.22 渡邉さんファミリーとアバルト 124 スパイダー

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アバルト 124 スパイダーをこよなく愛する渡邉さん。とてもまっすぐに愛車を想い、大切にし、時に元気をもらうことも。憧れだったオープンスポーツカーとの生活を満喫されている渡邉さんファミリーのアバルトライフをご紹介します。

運命的な出逢い

「この子と出逢えてよかったな、って真剣に思いますね。この子じゃなきゃダメだったんだ、って。夢が形になったというか、この子と暮らすようになってから、“あっ、これが自分の夢だったんだ”って気づきました。タイミングとかも含めて、今ではこの子と出逢う運命だったんだな、って考えてます」

愛車のアバルト 124 スパイダーを本当に愛おしそうに見つめながらそう語ってくださったのは、渡邉真美さん。4月にご紹介した“アバルト女性オーナー座談会”第2部に登場してくださった真美さんに再びご登場いただくことにしたのには、理由があったのです。座談会の流れの中には収められなかったお話をうかがうために、三重県の鈴鹿サーキットを訪ねました。

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渡邉さんご夫妻と“アズさん”ことアズール(青)のアバルト 124 スパイダー。鈴鹿サーキットのパドックにて。

なぜ鈴鹿サーキットなのか。それは真美さんの仕事場だからです。真美さんはレース開催日にはメディアセンターの中で、カメラマンやライター陣などプレス相手にきめ細かく対応してくださる立場の人。モータースポーツを取材するプレス関係者の間では“チーママ”と呼ばれ、いつもピカピカに磨かれて駐車場に停まっているブルーのアバルト 124 スパイダーともども、知らない人はいないほどの存在なのです。

座談会のときにもお話しいただいたとおり、ずっとクルマ好きだった真美さんがイタリア車にはまったのは、ご主人の吉祥(よしなが)さんの影響でした。吉祥さんは初代フィアット パンダを2台乗り継ぎ、2004年に2代目パンダ、2008年にチンクエチェント、2014年に3代目パンダ 4×4、そして2017年にアバルト 124 スパイダーという具合に、イタリア車一筋。初代パンダの頃はお友達、2代目パンダに乗り換える頃には恋人として、チンクエチェントに乗り換えてからは夫婦として、ふたりはイタリア車の世界を楽しんでいたそうです。

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イタリア車一筋というご主人の吉祥さん。

「私、本当はマニュアルトランスミッション(以下、MT)の方が好きなんですよ」
という真美さんですから、パンダ 4×4のシフトレバーを操作することも楽しんでいたそうなのですが、その楽しみが突如奪われることになってしまいました。

「乳がんであることが発覚したんです。もちろん手術をしたから今があるんですけど、患部が左側だったためにしばらくは左腕をあまり動かすことができず、MTの操作をするのは難しくなっちゃって……。なので国産のオートマチック(以下、AT)のクルマを手に入れて乗ることになったんですけど、パンダは大好きだったから売らずに所有し続けてたんです。でも、主人は通勤にクルマを使わないので、駐車場にはいつもパンダが停まっていて、乗ってあげられなくて可哀想……って、心苦しくなったり切なくなったり……。毎日、沈み込んでいました」

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仲睦まじいお二人の、元気の源ともなったアバルト 124 スパイダー。

吉祥さんも、その頃のことをこんなふうに振り返ってくださいました。
「一時期はかなり落ち込むことも多かったし、なかなか笑顔になれない日々も長かったですね。乳がんは女性にとってつらい病気だし、あんなに楽しんで乗っていたパンダに乗れなくなっちゃったんだから、無理もなかったと思うんですけど。何か楽しめることを見つければいい方向に行くんじゃないか、だから出来る限り好きなことをやって欲しいな、僕もできる限りのことはしたいし……と思ってたのですけど、それが何なのかは少しの間、見つけられなかったんです」

笑いがとまらなかった試乗

ところが、ほどなくして転機がやってきます。それは吉祥さんが独身だった頃から長くおつきあいをしているショールームのスタッフの方からの“アバルト 124 スパイダーが入ったので、見に来ませんか?”というお誘いでした。

「雑誌とかWebとかで写真を見ていて、カッコイイなと思ってはいたんです。でも正直いうと、あんまり気乗りはしていませんでした。どうせMTしかなくて私は運転できないんだ、と少し寂しい気持ちでした。でも、主人があまりにもノリノリだったので……。きっとウチに来ることはないクルマを見に行くんだな、と思いながら一緒に見に行きました」

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「助手席に乗っていつもの試乗コースを走ったんですけど、それが初めてのオープンエアドライブで、風を感じたり、鳥の声とか街の音とか全部聞こえてきて。グッとアクセルを踏んで加速した時の音が空から降ってくるし。加速感もすごく気持ちよかったし。何これ? って思っちゃって(笑)。助手席に乗ってるだけでも、ものすごく楽しかったんです。私もう、ニッコニコで。風がくすぐったかったこともあって、笑いがとまらなかったんです。チラッとミラーを見たら、見慣れてるはずの景色が全然違うものに思えて……。実は私、子供の頃から漠然とではあったんですけど、オープンカーにすごく憧れていたんです。でも、自分が乗ることはないだろう、と諦めていたようなところもあったんです。なのに、運転してなくてもこんなに楽しくてこんなに気持ちいいクルマが、がんばれば何とかなりそうな値段で販売されているんです。ちょっと衝撃的でした」

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真美さんのお気に入りのひとつがアバルト 124 スパイダーのサイドミラーからの眺め。ミラーに映るボディの優美な曲線が好きなのだそうです。

「僕も試乗してみてものすごくいい印象を持ったんですけど、でもまだパンダを買って2年弱だったし、さすがに“これ買おう”っていったら怒るやろなぁって思って、ショールームに戻ってからも黙ってました。そしたら(笑)……。スタッフの方からATがあることを教えてもらって、カタログを見たら大好きなブルーのカラーがあることもわかって……。それで隣にいた妻のテンションが上がりはじめて、どんどん前のめりになっていくのがわかりました。クルマが変わって気分が上がるのであれば、それは元気を取り戻すいいきっかけになるかな、とも思いました。だから止めようなんて考えもしなかったです。どうせそうなると止められないし(笑)」

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アバルト 124 スパイダーの試乗の後、自分の気持ちを抑えていた旦那さま。ところが、奥さまの方が前のめりになっていたとか。

運転席に乗っている自分の姿が想像できた

「帰る頃には“来年、ブルーのアバルト 124 スパイダーをお願いしますね”なんて冗談まじりにスタッフの方と話してたくらいでした。その試乗のときのことをFacebookにアップしたら、プレスルームでカメラマンの方に“いつ買うの?”って聞かれて、“買わないですよぉ”っていいながら、そう答えてる自分に、後ろめたさを感じたりもして。あかん、きっと買うわ、買うやろ〜って(笑)」

それが2016年10月のこと。ところが1ヶ月もしないうちに、ショールームの方から連絡が入ります。それはブルーのボディカラーが廃色になるという知らせでした。

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ブルーのボディカラーは、渡邉ファミリーにとって、マストな選択。そこはどうしても譲りたくなかったようです。

「それを聞いた妻は、“ちょっと待って! 私、ブルーじゃなきゃ嫌なんですけど!”って。もうこの時点でとっくに買う気になってますよね(笑)。条件面などの具体的な話もして、色々とクリアになってくると顔色が明るくなったんですよ(笑)」

「だって主婦やもん(笑)。でもね、ブルーのアバルト 124 スパイダーに乗っている自分というのが、本当に自然にイメージできたんです。気持ちよさそうにステアリングを握っている自分が見えて、それが何だかカッコイイって(笑)。自分にも酔ってましたね」

「こうなったら本当に止められないです(笑)。もちろん僕にも異論はありませんでしたけど」と吉祥さん。

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「まだATの試乗車がなかったタイミングだったんですけど、主人が雑誌の記事とかをよく読んでいて、“ATの評判がすごくいいから大丈夫だよ”といってくれて。その頃にはリハビリもだいぶ進んで、たぶんMTの運転もできるだろうとは思ってたんですけど、再発の可能性もゼロではないし、ずっと通院も続けていて、それでまた手術することになるかもしれないと思ったら……。そこでMTを選んでまた乗れなくなっちゃう時が来るとしたら、すごく悲しい。クルマはずっと好きだったけど、ここまで強くときめいたのは初めてで、もうあの時点でずっと乗り続けたいと思っていたので、そういうクルマとついに出逢えたので、少し後ろ髪を引かれるようなところはあった気もするけど、ATをオーダーしました」

羽が生えた感覚

かくして2017年3月、渡邉さんご夫妻のところにブルーのアバルト 124 スパイダーがやってきました。真美さんは納車されて初めてATのモデルを運転したわけですが、ファーストインプレッションはどんなものだったのでしょう?

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「納車していちばん最初は、私に運転をさせてくれたんです。近くのレストランまでの短い距離だったんですけど、そのときの……何ていえばいいのかな……自分に羽が生えたような感覚? すごく気持ちが良くて! クルマを運転するってこんなに気持ちよくて、こんなにも楽しいんだ! っていうのを強く感じた瞬間でした。もうそのときにはATでもMTでも、どっちでもよくなってたんだと思います。忘れられないですよ、あのとき受けた感覚、あのとき見た風景。本当に特別な体験でした」

渡邉さんご夫妻は、一緒にお出掛けするときには吉祥さんがドライブすることが多いけれど、普段は真美さんがステアリングを握り、どこへでも走っていきます。アバルト 124 スパイダーの“すべてが好き”という真美さんは、片道80kmほどの実家近くにある昔から行きつけだった美容室に行く前日などには、“この子を綺麗にしてから次に私”とばかりに、ひとりで黙々と洗車を楽しんだりもしています。

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アバルト 124 スパイダーの運転席ではにかむ真美さん。本当に嬉しそうです。

「アバルトはエネルギーを与えてくれるんですよね。生活というか、もう人生の一部になってる感じです。この子と出逢う前は気持ちが沈みがちだったのに、この子が来てからは、例えば誰かとこの子の話をするだけでも楽しい気持ちになれるんですよ。この子がいることで希望が持てるというか何というか。もしまた再発したとしても、ちゃんと治してまたこの子に乗れるようになればいいんだって、そんなふうに思えるようになりました。最初に走らせたときのことを特別な体験っていいましたけど、今だって毎日が特別な体験なんです。だから、この子を手放すことはあり得ないです。死ぬまでこの子に乗るつもりです。この子のない人生なんて、もう考えられないですもん」

文 嶋田智之 写真 荒川正幸
撮影協力 鈴鹿サーキット

アバルト公式サイト https://www.abarth.jp/