ターニングポイントを作ってくれたクルマ アバルトライフFile.43 中澤さんと124 spider

がんばった自分へのご褒美

人生の転機というものは、いつどんなかたちで訪れるかわかりません。喜ばしいものなのか、涙とともにあるものなのか、それもわかりません。というよりも、その機会を見逃したり見送ったりしてそれまで通りの日々を過ごすか、きっかけにして笑顔に結びつけていくかは自分自身の心が決める、というべきなのかもしれません。そしてそんなとき、クルマという存在が、小さからぬ役割を果たしてくれることもあるのですね。アバルトカレンダー2021の10月に登場してくださった124 spider(124 スパイダー)のオーナー、中澤正美さんのお話をうかがって、そんなことを実感しています。


124 spiderオーナーの中澤正美さん。

華やかな雰囲気や屈託のない笑顔から窺い知ることはできないのですが、中澤さんはこの13年の間に、とても辛い想いをされてきました。13年前にご主人を亡くし、忙しい仕事と並行してご両親の介護をしてこられ、その後にお母さん、翌年にお父さんを立て続けに看取ってこられたのです。

「確かに順風満帆っていう感じではありませんでしたね。正直にいえば、ものすごくきつかったです。でも、後で絶対にいいことあるって思いながら踏ん張っていました(笑)」

その“いいこと”のひとつが、124 spiderとの出逢いだったようです。中澤さんは2019年に、ご主人と一緒に乗っておられた大きめのセダンから、124 spiderに乗り換えたのです。そのきっかけは何だったのでしょうか?

「亡くなった主人のクルマにずっと乗り続けてきたんですけど、両親を看取ってひとりになってしばらくして、ふと“ひとりなのにドアは4枚もいらないな”って思ったんです。これから先の人生をどう生きていくか。介護に必死だった頃にはネイルの手入れすらできないほどでしたけど、淋しいと感じることがあっても、それはいろいろなものから開放されて、自分のための時間がようやく手に入った、ということでもあったんですよね。なので、できることは全部やりつくした自分へのご褒美の意味も含めて、ずっと前から憧れて一度は乗りたいと思っていたオープンカーを買おう、と思ったんです」


自分の時間を手にした契機に、以前から憧れだったオープンカーの購入を決意。中澤さんがそうして迎えたのがアバルトでした。

バイクに近い感覚

そうして選んだのが124 spider、というわけですね。アバルトは以前からご存じだったのですか?

「ごめんなさい。知らなかったんです(笑)。あるとき、SNSに出てきた広告を見て初めて知りました。オープンカーだし、見るからにスポーツカーらしいスタイルだし、こんなクルマ見たことないわ、とちょっと衝撃的だったんですよ。私、年齢を重ねてからスポーツカーに乗るのはかっこいい、と若い頃からぼんやりと感じていたんです。それ以前に他のオープンカーを見に行ったりもしていたんですけど、人気の車種だし、いいお値段でもありました。でもアバルトはそれほど街で見掛けたことがないし、お値段も手が届きそうな範囲。それから何日も経たないうちにショールームに行って、私は蠍座なのでエンブレムを見てこれも縁だと感じて、試乗させていただいてその日に契約、と自分でもビックリするくらいトントン拍子でした(笑)」


中澤さんと待ち合わせた場所は、六甲山サイレンスリゾート。四季折々の木々に囲まれた六甲山上に位置し、旧六甲山ホテルの趣を残した建物が豊かな気持ちにさせてくれます。そのカフェテリアで提供される厳選されたフード・ドリンクは、どれもこだわりを感じさせるもの。大人の休日のレクリエーションにぴったり。アバルトで走りたいドライブルート【立ち寄りスポットたくさん 六甲山(兵庫県)】でも紹介。

ほぼ衝動買い、ですね。

「そうですね(笑)。でも、欲しければ買う、です。そのために頑張って働いてきたんだし、これからも頑張ると思うので。いろいろなことを経験して、やりたいことはやりたいときにやっておかないと、と考えるようになりました」


贅沢な休日気分が味わえる季節のデザートを取り入れた「しずこのアフタヌーンティー」(4,620円)。

124 spiderに試乗して、どんなところが気に入ったのですか?

「乗ってみたら、運転しやすかったんです。アクセルを踏めば思ったとおりに加速して、苦手だったバックもハンドルを切ったらすぐに思った方向に向いてくれた。クルマに乗らされているような感覚はどこにもなくて、“私、運転してる”っていう実感が強かったんです。私は身体を動かすのも好きで、北京オリンピック4×100mリレーの銀メダリスト朝原宣治さん主宰の陸上教室でトレーニングもしてるんですけど、自分の身体を動かすときの感覚にちょっと似ていて、楽しかったんです。それと、決定的だったのは風を切って走る爽快感です。とっても天気の良い日だったんですよ。ものすごく気持ちよかった。これだ、と思いました。エンジンもバイクに近い感じで、そこにも惹かれましたね」


身体を動かすことをライフスタイルに取り入れている中澤さんにとって、オープン2シータースポーツは最高の選択肢となった模様。

バイクにも乗られるんですね。

「はい。最近はあまり乗ってないんですけれど、大型のバイクを持っています。もちろんバイクにはバイクにしかない魅力もあるんですけど、このクルマはまるで4輪のバイクみたいなところがあって、風を浴びることもできるから、それで満足しているところもあるかもしれませんね」

普段、アバルトにはどんなふうに乗っているのですか?

「平日は仕事をしていて、通勤には使ってないんです。週末の楽しみ、っていう感じですね。自分の生活圏内からちょっと離れて、景色がよかったら屋根を開けて走っています。開けたくなる景色のところまで行く、っていう感じかもしれませんね。スピードを出して走るよりも、綺麗な景色の中をゆっくりと風を浴びながら走って、それまで知らなかったものを直に見るのが好きです。このクルマは飛ばさなくても、身体を動かしている、風を切っている、クルマと一体になっている、と走っている実感を常に味わえるのがいいところですね。技術的なことはわからないですけど、感覚に訴えてくるクルマだということはよくわかります。いつも“これこれ!”と思いながら走っていて、乗るたびにますます好きになっていくし、ずっと長く乗っていきたいな、って感じます」


週末に仕事から離れた時に、自宅から少し足を伸ばして綺麗な景色の中を、風を受けながらゆったり流す。そんな贅沢な時間を満喫されているそうです。

新たな挑戦へ

屋根はいつも開けていらっしゃるのですか?

「自分が爽快に走れるとっておきの時間にだけ開ける、っていう感じでしょうか。休日以外に足として使うこともあるんですけど、周りの視線を集めたいわけではないので(笑)、そういうときには閉じています。私の住むエリアには海も山も両方あって、少し走ると屋根を開けたくなるところがたくさんあるんです。一度、夜中に出発して朝日を見に行ったことがあるんですけど、そういうときには開けずにはいられないですよね。今はまだ感染症のこともあるので控えているところもあるんですけど、行きたいところはたくさんあるので、もっと落ち着いたらひとつずつ走って行けたら、と思っています。年齢的に定年も見えてきているので、時間にゆとりができたら、気持ちのいい場所をオープンにしてゆっくりと走れたらいいな、と。以前は無意識にどことなく塞ぎ込んだようになっちゃうことも多くて、そういうことはあまり考えなかったんですけど、124 spiderが気持ちまで開いてくれているのかもしれませんね」


六甲山サイレンスリゾートでは、季節にあったイベントを展開。10月30日(土)、31日(日)には、『Happy Halloween In 六甲山サイレンスリゾート』を予定。ハロウィンビュッフェや、アコーディオン音楽演奏会などが予定されています。詳細はコチラ

アバルトと暮らし初めて気持ちに変化が生まれた、ということですか?

「そういうところはあると思います。以前から消極的な方ではなかったんですけど、輪をかけて積極的になったと思います。アバルトカレンダーへの応募も、前の私だったら頭をかすめもしなかったと思います。写真を撮られることが苦手だったので。でも、気持ちが自然と前向きになるのか、苦手なものにも挑戦してみよう、と思えるようになったんです。それで当選するはずはないと思って応募してみたんですけど……。実はカレンダーでケイ・オガタさんに撮影してもらったことがきっかけになって、恥ずかしながらモデルエージェンシーに入ることになったんです。必要なときにちゃんと相応しい表情を作れるように、演技のレッスンなどにも週に一度通っています。今後どうなっていくのかはわからないけど、そうした表現の勉強をしていくことを、これから先、何かにつなげていけるといいな、と思いまして。以前の私だったら、そんな大胆なこと(笑)、絶対に考えたりはしませんでした。アバルトがターニングポイントを作ってくれたんだと思ってます。今、毎日がすごく楽しいんですよ。1日、1週間、1か月が過ぎていくのが本当に早くて……。アバルトを買ったときには、こんなふうな自分になれるとは想像もしていませんでした。だから私の気持ちの中でこのクルマが占める割合って、ものすごく大きいんです」

アバルトが毎日を楽しくしてくれるというお話はいろいろなところで耳にしてきましたが、オーナーさんご自身の生き方にここまで大きな影響を及ぼしているというお話をリアルにうかがったのは初めてで、スッと背筋が伸びたような気持ちになりました。アバルトの持つダイナミズムと中澤さんの中に眠っていたダイナミズムが、綺麗にシンクロしたのかもしれませんね。中澤さんの姿をどこかの紙の上で、あるいは映像の中で、拝見できる日が来ることを心から楽しみにしています。

文 嶋田智之

アバルト公式WEBサイト