1961 FIAT ABARTH 850TC|アバルトの歴史を刻んだモデル No.002
1961 FIAT ABARTH 850TC
フィアット・アバルト 850TC
アバルト量産ツーリングカーの原点
フィアット・アバルト 850TCの原点となったのは、1955年に登場したフィアット・アバルト750デリヴァツィオーネとなる。ベースはいずれも『フィアット600』だ。
1950年代のABARTHというブランドは、一般的にはチューニング・パーツやエグゾースト・システムのメーカーとして認識されており、自動車メーカーとしてはレース用を中心としたGTカーを少量生産するだけだったために、知る人ぞ知る存在だった。そんなABARTHのメーカーとしての存在を広く知らしめることになったモデルが1961年に送り出された『FIAT ABARTH 850TC(フィアット・アバルト)』である。
カルロ・アバルトは1955年に『FIAT 600』がデビューすると、優れた素性をすぐさま見抜き、それをベースとした高性能版の『FIAT ABARTH 750デリヴァツィオーネ』を製作する。排気量は『FIAT 600』の633ccから747ccまで拡大し、鍛造製クランクシャフトの採用を始めとする吸気と排気系の高度なチューニングにより、最高出力はノーマルの18HPから2倍以上となる40HPにまで高められていた。
アバルトはスポーツカー・レースに様々なタイプのGTマシンでレースに挑み、栄光の記録を重ねていたが、ツーリングカー・クラスでは『FIAT ABARTH 750デリヴァツィオーネ』のみで、より戦闘力を高めたモデルが必要とされていた。あわせてロードユースのユーザーからもモアパワーを望む声が高まり、それらの声に応え1961年に送り出されたのが『FIAT ABARTH 850TC』なのである。
車名のTCは『Turismo Competizione/トゥーリズモ・コンペティツィオーネ』を意味する。850TCは『FIAT 600』をベースに各部をABARTHの技術を駆使し、当時最高の性能まで高められていた。排気量を633ccから847ccへ拡大すると共に専用の鍛造クランクシャフト、コンロッド、ピストン、バルブを採用し、圧縮比を9.2:1まで高める。さらに大径のソレックス32PBICキャブレター、マルミッタ・アバルト(エグゾースト・システム)を採用するなど多岐に渡るチューニングが施され、52HP/5800rpmの最高出力と最高速度140km/hを記録した。
大幅に向上したパフォーマンスに対応して足回りもチューニングされ、当時のツーリングカーでは珍しいガーリング製のディスク・ブレーキをフロントに備える。もちろんアバルトらしく性能だけを突き詰めるだけではなく、タコメーターを中央に配したイエガー製の3連メーター、3スポークのレーシーなステアリング・ホイール、リアスカート下からは放熱性を高めたフィンが刻まれたオイルパンが覗き、以後アバルトTC系のお約束となるエンジンフードを浮かせて固定させるという演出が施されていた。これらの好き者の心をくすぐるマニアックなデザインと味付けはアバルトならではといえた。このように、機能性とデザイン製を見事に融合させるセンスはカルロ・アバルトだけが備えていた才能で、イタリアでも他メーカーのクルマには見られなかった。
こうして誕生した850TCは高性能サルーンの代名詞となり、好評なセールスを記録してABARTH社を大きく躍進させる1台となった。レースでもアバルトの思惑通りに目覚ましい活躍を始め、なかでも1961年9月のニュルブルクリンク500kmレースでは、『FAIT ABARTH 1000ビアルベーロ』が総合優勝を勝ち取ると共に850TCはツーリングカー850ccクラスで1〜3位を独占し、総合成績でも強豪を相手に12〜14位に入る活躍を見せた。アバルト社はこの勝利を記念して高性能版となる850TC ニュルブルクリンクをカタログに加えることにする。
850TC ニュルブルクリンクは排気量をそのままに、圧縮比を9.8:1まで高め、キャブレターをひとサイズ大きなソレックス34PBICに換え、さらにはバルブタイミングの変更や排気系の効率化などの入念なチューニングが施され、最高出力は55 HP/6000 rpmまで高められた。エクステリアではフロントのスカート下にサブラジエターが配された点がポイントとなる。850TCでもフロア下の中央にサブラジエターが備わっていたが、より冷却効率を高めるためにフロントに移設された。
続いて純レース仕様の850TCコルサもラインナップに追加。こちらはレース専用車として速さを追い求めたチューニングが施され、最高出力は78HPを発揮するに至った。こうしてアバルトを代表するモデルとなった850TCは、ツーリングカー・レースの850ccクラスで圧倒的な強さを見せ、栄冠をトリノに持ち帰るのだった。
▼スペック
1961 FIAT ABARTH 850TC
全長:3285mm
全幅:1380mm
全高:1405mm
ホイールベース:2000mm
車両重量:610kg
エンジン形式:水冷4気筒OHV
総排気量:847cc
最高出力:52HP/5800rpm
変速機:4段マニュアル
タイヤ:5.20-12
最高速度:140km/h
INFORMATION
★TOKYO MOTOR SHOW 2015参加
10月29日(木)〜11月8日(日)に行われる<第44回東京モーターショー2015>に、ABARTH 595 TURISMOと ABARH 695 BIPOSTOを出展。
>> https://www.abarth.jp/tokyomotorshow/
★ADRENALINE RUSH OFFER vol.3
このチャンスが、欲望をかき立てる。対象は、ABARTH全モデル。
>> https://www.abarth.jp/offer/
★ Ready for Autumn キャンペーン
専門のスタッフがABARTHの熱いカーライフをサポート。10月31日(土)まで実施中!
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★『ABARTH 695 Biposto』の詳細はこちらから
>> https://www.abarth.jp/695biposto/
嶋田智之さんによる『ABARTH 695 Biposto』レポートはこちらから
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862
★ <ABARTH SAFETY DRIVING CAMP>
ADAの要素を取り入れながら、英国発祥のミニ・ジムカーナ『オートテスト』の本格的な導入を目指して、新プログラムがスタート。
>> https://www.abarth.jp/safetydrivingcamp/