アバルト新時代の幕開けを象徴したモデル『ABARTH 124 Spider Rally』

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黄金期に登場した『FIAT 124 Spider』

1949年の創業以来、レースシーンにおいてその名を轟かせているアバルト。
チューンアップブランドとして、数々の名車を生み出してきた歴史を語る上で、1972年に登場した『ABARTH 124 Spider Rally』は、決して欠くことができない。なぜなら、『ABARTH 124 Spider Rally』は、アバルトがフィアットの傘下に入って初めて世に送り出した作品であり、フィアットのワークスチームにおいて、そしてアバルトのモータースポーツ活動において、ひとつのマイルストーンとなるモデルだからだ。

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FIAT 124 Spider

フィアットブランドから『124 Spider』が登場したのは、1966年に開催された「トリノショー」。同モデルの開発が行われた60年代中期、欧州の先進国は経済成長の黄金期を迎え、イタリアも経済発展の真っ只中にあった。個人の消費支出は前年を5%上回るペースで推移し、自動車メーカーはラインアップの拡充を急いだ。自動車の性能が飛躍的に高まり、70年代のスーパーカーの隆盛に向け、高性能自動車に対する人々のあこがれや情熱は、日に日に高まっていった。

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美しい車体に強力なDOHCエンジンを搭載

『124 Spider』は、セダンモデルの『124 Berlina』をベースとしつつ、完全な専用設計の車体を持っていた。デザインおよび生産を手掛けたのは、イタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナ。美しい2+2のボディデザインは、当時ピニンファリーナに在籍していたトム・トジャーダが担当した。

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『124 Spider』は、1.4リットルエンジンを搭載。後に、200cc刻みで最大2リットルまで拡大していった。そのすべてが、高回転域まで回して楽しめるDOHCユニットだった。カムシャフトは、伝達効率の高いコグドベルト(歯付きベルト)で駆動。最高出力90psのエンジンは、5速マニュアルトランスミッションとの組み合わせにより、最高速度は170km/hに達したといわれている。また、1969年にはエンジンの排気量を1.6リットルに拡大し、最高出力110psへと向上したバージョンが登場した。

モータースポーツでの活躍

フィアット車をベースとしたマシンで、60年代に数々のレースで好成績を残していったアバルト。フィアットグループの傘下に入る前から、代表的なモデルとして600をベースとした『ABARTH 750 Berlina』、600Dをベースとした『ABARTH 850TC』、そしてNuova 500をベースとした『ABARTH 500 Berlina』『ABARTH 695SS』などを生み出していった。

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ABARTH 850TC

そして、1972年。『124 Spider』をチューンアップしたモデル『ABARTH 124 Spider Rally』が登場。アバルトが手掛けたこのモデルは、人々の注目を大いに集めた。

1971年10月、フィアット傘下に入ったアバルトが、最初に手掛けたのが『ABARTH 124 Spider Rally』のロードカーおよびラリー仕様の開発だった。
その足まわりは、フィアットの『124 Spider』に採用されていた固定車軸式のトレーリングアーム式リアスペンションから、ストラット式の独立懸架へと大幅に変更。路面追従性をアップした。さらに、1.8リットル直列4気筒DOHCエンジンの最高出力を、ロードバージョンでは128ps、ラリー仕様では170psにまで引き上げた。しかも、ルーフにはハードトップを装着し、前後のフードをFRP製へと変更することで軽量化も果たした。

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ABARTH 124 Spider Rally

『ABARTH 124 Spider Rally』は、1973年からWRC(世界ラリー選手権)に参戦し、ポリッシュ・ラリーで優勝。他のレースでも上位に入賞し、初年度から総合ランキング2位、翌年も2位につけた。その後、1976年のジュネーブショーでデビューした『131 Rally』が快進撃を続けることになるが、その礎を築いたのは他でもない『ABARTH 124 Spider Rally』だといえるだろう。

ピニンファリーナが生み出した美しいボディに独創的な個性が宿る『ABARTH 124 Spider Rally』。世界中のモータースポーツファンを魅了したことはもちろん、様々なレースにおいて輝かしい実績を残した点においても、その功績は大きいといえるだろう。

INFORMATION

★Automobil Council(オートモービルカウンシル)開催
8月5日(金)から7日(日)の3日間、千葉・幕張メッセ2・3ホールで開催される“クラシックミーツモダン”を標榜する「オートモービルカウンシル」が開催。同イベントでは、2016年10月にデビューする新型モデル『ABARTH 124 spider』の日本初公開が予定されている。
>> http://automobile-council.com/

★ABARTH 124 spider スペシャルサイトがオープン
8月5日(金)にジャパンプレミアされる「ABARTH 124 spider」のスペシャルサイトがオープン。当サイトでは、デビューまでのカウントダウンとともに、「ABARTH 124 spider」の歴史が紹介されている。
>> https://www.abarth.jp/124spider/special/

Text: Takeo Somiya