アバルト歴代モデルその8
ランチア・デルタS4
LANCIA DELTA S4
1983年、<WRC(世界ラリー選手権)>がFIAグループBレギュレーションによって闘われることになった最初のシーズンに、見事ワールドタイトルを獲得した『LANCIA DELTA S4(ランチア037ラリー)』は、言わずと知れた近代アバルトの傑作です。
しかし、037ラリーの登場とほぼ時を同じくして誕生した『アウディ・クワトロ』以来、ラリー界では4WDの波が急速に押し寄せていました。しかも、それまでWRCのトップカテゴリーには参入していなかった仏・プジョーが、ミッドシップ4WDにターボエンジンを組み合わせたグループBマシン“205T16”でデビューを図ると、パワー/駆動力ともに劣る037ラリーは、次第にライバルたちの後塵を喫することが多くなっていきます。
そこでランチアとそのワークスチーム“ランチア・スクアドラ・コルセ”を託されていたアバルトは、037に代わるモデルの開発プロジェクトを興すことになりました。
かくしてアバルトの開発コード“SE038”が与えられ、シャシー、エンジン、駆動系に至るまで、すべてアバルト主導で設計されたニューマシン『デルタS4』は、その名のとおりシルエットこそ当時のランチアの人気モデル、デルタに近いものとされていました。
しかし、その中身はまったくの別物。FRPで新造されたボディの下には、『037ラリー』と同じく、センターモノコックにクロームモリブデン鋼で組んだフレームを採用。ミッドシップに4WD、スーパーチャージャー+ターボチャージャーという、当時考え得るすべてのテクノロジーが秘められた、まさしく最終兵器というべきモンスターでした。
ホモロゲーション取得のために、1985年から200台だけ限定生産されたロードバージョンは、総アルカンターラ張りのインテリアで豪華に仕立てられており、当時はスーパーカー的要素の強い超高性能車として発売。日本にもごく少数ながら正規導入されています。
そして本来の目的、WRCでは約500psを発生する怪物にチューニング。1985年シーズンの最終戦でいきなりのデビューウィンを果たし、それ以後も驚異的なパフォーマンスを見せつけてゆくことになります。ところが、チャンピオンが期待された1986年のトゥール・ド・コルスにおいて、『デルタS4』に乗るアンリ・トイヴォネンがコースアウト。ナビゲーターのセルジオ・クレストとともに事故死してしまったのです。
このトイヴォネンの事故、あるいは同年のポルトガル・ラリーで、コースアウトした『フォードRS200』が観客を死亡させてしまった惨事を契機に、速過ぎるラリーカーへの反省の機運が一気に高まり、結局グループBはこの年一杯で廃止が決定。さらにグループB以上に過激なレギュレーションとして導入が決定されていた“グループS”もキャンセルとなり、1987年シーズンからは年間5,000台以上生産された市販車ベースのマシンで競われる“グループA”レギュレーションがWRCに適用されることになりました。
そしてチャンピオンを狙える唯一のチャンスだった1986年シーズンも、プジョーに僅差で敗れ、『デルタS4』の名は“無冠の帝王”の称号とともに後世に伝えられることになったのです。しかし、アバルト技術陣がデルタS4とともに培った4WDテクノロジーは、グループAのデルタHFインテグラーレにも大いに役立てられ、同車がWRC史上最強の傑作となる原動力にもなりました。
『フィアット124アバルト・ラリー』から始まる、アバルト製ラリーマシンの系譜は、この『ランチア・デルタS4』こと『SE038』によって究極的な進化を果たしました。2015年シーズンの<全日本ラリー選手権>において、開幕から3戦の段階で早くも二度のクラス優勝を達成したムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(mCrt)の『アバルト500ラリーR3T』にも、アバルトとラリーが紡いできた40年以上の歴史が脈々と息づいているのです。
INFORMATION
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嶋田智之さんによる『ABARTH 695 biposto』レポートはこちらから
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