2015年 JAF全日本ラリー選手権、第3戦<若狭ラリー>レポート

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皆さんこんにちは、ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(以下、mCrt)ラリー部門ドライバーの眞貝です。

前戦<久万高原ラリー>で自らのドライビングミスに起因するコースオフで優勝をフイしてしまってからわずかひと月弱、早くも今年の全日本ラリー選手権の第3戦が、福井県を舞台にした<若狭ラリー 2015>として開催されました。

改めて今から思い返しても、これまでのドライバー人生でも最も不可解で基本的なミスにより、多くのファンの皆さんやチームのメンバーを落胆させてしまったことを申し訳なく思いましたし、何よりもこのことを皆さん本当に暖かく(グッとこらえて)受け止めてくださり、<若狭ラリー>に向けて再び万全の体制で送り出してくださったことに対して、何とかお返しをしたい!と、いつにも増して強い決意で現地入りしました。

020見ている余裕は全くありませんが(笑)素晴らしい景色がこのラリーの一番の魅力。

今回の<若狭ラリー>は、全日本選手権としては初めての開催。
事前に“三方五湖レインボーライン”という風光明媚な有料道路でSS(スペシャルステージ)が行われることだけは公表されていましたが、その他の林道ステージについては全くの未知数。事前のレキ(下見走行)の精度と、マシンのセットアップの即応性が勝負を分ける戦いとなることが予想されていました。

結果から言ってしまうと、皆様のおかげで再び“優勝”という結果をお届けすることができました。ラリー後には皆さんから口ぐちに「盤石だったね」とか、「ペースをコントロールしていたね」というコメントを頂き、そう感じて頂けたこと自体は有難いのですが、

実際は「とんでもない!大苦戦でした!」というのが本音のラリーだったのです。
今回はその「とんでもない!」ということについて、皆様にお話ししたいと思います。

去年のテスト参戦も含めたラリーの結果を分析してみると、僕らの『ABARTH 500 Rally R3T(ラリー R3T)』は、典型的な中速林道ステージでは強い一方で、流れるような高速ステージは少しライバルに対して少し苦戦気味だという傾向がありました。

また前戦、<久万高原ラリー>の結果からは、ウェット路面ではかなり安心してライバルに差をつけることができるという感触もありました。

金曜日のレキを終えてみると、“三方五湖レインボーライン”以外のステージはまさに典型的な日本の林道。加えて本番1日目の土曜日に向けての天気予報は見る見る悪化し、少なくとも土曜日の午前中の林道セクションはウェットコンディションでの戦いが予想されましたから、僕の中での作戦は「ウェットコンディションの土曜日、特に午前中の林道ステージでライバルに対しなるべく多くマージンを稼ぎ、土曜日午後の有料道路ステージ、さらにドライになるであろう日曜日にグッと耐えてラリーをコントロールする」ということでした。

030ウェットコンディション下の土曜日午前中は思わぬ苦戦。

迎えた本番1日目。予想されたよりもずっと強い本降りの雨の中でスタートしたラリーで、SS1は幸先よくベストタイムを獲得。<久万高原ラリー>での良い感触と一致したなかで、SS2も落ち着いてきっちり走ったつもりでしたが、なんとタイムはクラス1位のライバルに大きく出遅れるクラス4番手のタイム・・・。いくら慎重に進めたとはいえ、ドライビングの感触に対してあまりにも大きな差をつけられたことに、かなり混乱してしまいました。続くSS3、SS4でも狂った歯車を修正するには至らず、午前中のセクションを終えた段階で、ラリーをリードするどころかトップから約6秒遅れた3番手に甘んじることとなってしまいました。

事前に描いていたシナリオから大きく外れた出だしとなってしまったことで、午後の有料道路ステージに向けては改めて戦略を考え直す必要が出てきてしまったわけですが、折しも雨はやみ、移動セクションの道路は急激にドライに向けて回復中。午後に向けてのサービス(整備時間)では「ドライで勝負をかけろ!」というタイヤサプライヤーさん(DUNLOP)の声にも背中を押していただき、タイヤ選択やサスペンションセッティングを全て“完全ドライ”仕様としてガチンコのスピード勝負に打って出ることとしました。

050「ドライで勝負しかないでしょ!」コドラとメカニックも作戦変更に賛成。

「本当にドライまで回復するか」という一抹の不安もありましたが、もうやるしかありません。祈るような気持ちで約50km離れたレインボーラインに向けての移動を開始しましたが、その強い決意がお天道様に通じたのか、ステージ現地は午前中の雨が嘘のような快晴、路面も100%ドライと言っていいほどの状態になっていました!

幸い、ラリー2週間前にミニサーキットで実施したサスペンションのテストでは、今年からの新兵器であるサスペンションサプライヤーさん(TEIN)の減衰力自動調整システムの強力な効果を実感。勝負の舞台となったレインボーラインもミニサーキットに近いスピード域のステージでしたから、SSスタート後の最初のコーナーから全開で飛び込んでいくことができました。

040コンディションが回復した“三方五湖レインボーライン”SSでは会心のベストタイムを連発!

果たして、土曜日の午後と日曜日の午前中に行われた4回のレインボーラインのステージ(うち1回は前走車のアクシデントによりキャンセル)では、ライバルに対して1回も譲らない3連続ベストタイムを奪取!これまた戦前の想定とは全く異なる展開で一気に首位に立つことができました。

それでも「何とか勝てるかもしれない」と感じたのは、日曜日の午後、林道ステージを1本残してライバルに15秒程度の差を維持出来たとき。おそらく、皆さんの印象より丸1日も遅れてのことだったのです(笑)。

前戦でのミスもあるので、最後まで緊張が緩むことはありませんでしたが、無事に全てのステージをフィニッシュできた時の安ど感は、本当に格別のものでした。

「勝負の世界に“たられば”はない」とはよく言われる格言ですが、僕は「ラリーは“たられば”の積み重ね」だと思っています。今回、土曜日の午前中にウェットで思わぬ苦戦をしたことも、午後にコンディションが回復したことも、そして偶然2週間前に勝負を決めるテストができていたことも、色んな意味で“たられば”の連続であり、たまたま今回は僕らに良い方向に出た結果だと思っています。なので、今の僕の心中は「勝ってなお課題多し」。“たられば”が悪い方向に向かったときに、実力でそれを跳ね返せるように、次戦以降に向けて今回直面した課題をつぶしていかなければいけないと思っています。

060次回も表彰台の真ん中、目指します!

とはいえ、僕自身の勝手な混乱(?)はともかく、“優勝”という結果を、皆さんにご報告できることはやはり誇りに思いますし、この感謝の気持ちと結果をもって(多少なりとも)恩返しできたことを本当に嬉しく思っています。

苦しい状況を一丸となって跳ね返し、一体感がますます強まった我がmCrtの次回の参戦は8月28日(金)~30日(日)の<モントレー 2015 in 嬬恋(群馬県)>。夏真っ盛りの中、涼しい高原で開催され、観客動員数もトップクラスの大会に、ぜひ応援に来ていただければ幸いです。

070ギャラリーステージ会場ではあの伝説の名ドライバー、篠塚健次郎選手がABARTH 500 Rally R3T(スペアカー)でデモラン & 同乗走行を実施。

INFORMATION

★『ABARTH 695 biposto 』がお目見え
>> https://www.abarth.jp/695biposto/

嶋田智之さんによる『ABARTH 695 biposto』レポートはこちら
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862

★ABARTH DRIVING ACADEMY@鈴鹿サーキット
8/19に鈴鹿サーキットにて開催されるABARTH専用スポーツ&セーフティドライビングレッスン。
次回開催の応募を受付中。
受付期間:6/10〜7/22
>> https://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

★ADRENALINE RUSH OFFER vol.2 PLUS
2015年5月1日以降にABARTH各車を成約かつ登録した場合、アクセサリーを特別価格で購入できるキャンペーンを実施中。
>> https://www.abarth.jp/offer/competizione.php

『esseesse Brembo キットfor 595』の実装テストの様子はこちら
>> https://www.abarth.jp/scorpion/scorpion-plus/4916