アバルトで走りたいドライブルート【ビーナスライン(長野県)】
■おすすめの理由:運転の気持ち良さ、見晴らし……。全国屈指のドライブルート
長野県・茅野市と美ヶ原高原を結ぶ「ビーナスライン」は、クルマ好きやバイク好きに人気のドライブルート。春から秋にかけて全国各地から多くのドライバー/ライダーがツーリングに訪れ、リピーターを呼んでいる。人気の理由は、運転の気持ちよさ、景色の良さ、そしてグルメや周辺スポットの充実ぶりと、さまざまな魅力に溢れているからだろう。ソロ旅からカップルやファミリーのドライブまで、幅広い人々が楽しめる間口の広さが魅力だ。ドライブの行き先に悩んだなら、ココを選んでおけば間違いない、そんな定番のコースだ。
■アクセス:関東&中部方面から日帰りドライブも可能
ビーナスラインは、首都圏から程よい距離感に位置することも人気の理由。東京および名古屋の中心部から、それぞれ3時間(200キロ強)ほど。日帰りドライブも可能な圏内だ。今回は最寄りのICのひとつ、中央道・諏訪ICからビーナスラインの起点である茅野市街を出発し、終着点の美ヶ原高原を目指した。
諏訪ICからのアクセスは簡単で、ICを降りた交差点を右折。1kmほど先の「新井」交差点を左折すると、「ビーナスライン」の起点に着く。そこからはビーナスラインの道順を示す看板が出ているので、所々に設置された道案内を辿っていけば迷うことなく目的地までたどり着けるだろう。
注意点としては、Google Mapで「ビーナスライン」と入力すると、ビーナスライン上の白樺湖付近がピンポイントで目的地に設定され、別の最短ルートで案内される可能性が高い(Yahooカーナビの場合は茅野市の起点が目的地に設定される)。ここで紹介する茅野市の起点から美ヶ原高原までのルートをGoogle Mapで巡る場合は、最初に目的地を「白樺湖」、経由地を「諏訪料金所」と「女の神展望台」と入力し、白樺湖に着いたら、目的地を「美ヶ原高原美術館」、経由地に「和田峠茶屋」にセットし直せばと、起点から終着点までトレースできるはずだ。なお、ビーナスラインは冬季は通行止めになるのでご注意を(前年は11月下旬から4月中旬頃まで冬季閉鎖)。
1年分のコーナーが楽しめる!? 70kmに及ぶワインディングロード
諏訪インターチェンジから標高2000mの美ヶ原高原美術館までの道のりは、約72km。初期の市街地区間を除けば、ルートのほとんどは大自然の中を縫うカントリーロードだ。ひとたび山岳路に踏み入れれば、刻々と変化しながら続く大自然の風景を存分に楽しむことができる。今回訪れた10月中旬時点では、夏が終わり紅葉を迎える前の季節の変わり目だったが、所々に紅葉が色づき始めていた。紅葉は10月下旬から11月中旬頃にかけてピークを迎えそうだ。
白樺湖までの前半セクションは、大小さまざまなコーナーが続く。木々に囲まれたワインディングロードで、この辺りはまだ標高が低く見晴らしはそこそこだが、木々が所々に緑のトンネルを作ってくれ、気分よく走行することができる。路面もよく整備されており、爽快なドライブを楽しむことができた。
訪れたのは平日だったため、道路はガラガラに空いていた。ペースを上げたくなる気持ちを抑え、あえてドライブモードセレクターをノーマルモードに設定して走行していると、標高が上がるにつれ、徐々に景色が開けてきた。途中「女の神展望台」という展望駐車場を見付けたので立ち寄ってみた。あいにくの曇り空だったが、遠方に八ヶ岳連峰や南アルプス、中央アルプスを見渡すことができた。
F595が搭載する1.4リッターターボは、ノーマルモードでも最大トルク210Nmを発生、トルク感は十分だ。むしろパワーが有り余っている感じすらあり、アクセルを床まで踏み込むような場面は一度もなかった。5速MTのギアを2速から4速の間で行き来させながら、別荘の多いエリアを通り抜けていく。蓼科高原付近には企業の保養所などが立ち並び、避暑地としても人気であることがうかがえる。標高は1400mほど。ビーナスライン起点から20km走ったあたりで、白樺湖に到着した。
白樺湖周辺は、立ち寄りスポットや散策路などが充実
白樺湖周辺には、レストランやホテル、いくつかのスキー場などがあり、リゾート地の雰囲気が漂う。「白樺リゾート 池の平ファミリーランド」という子ども向けの遊園地や、「ファミリーランドドッグラン」などがあり、子どもや愛犬が一緒でも楽しむことができそうだ。白樺湖周辺をぐるりと周回できる道もあるので、休憩がてら寄り道するのもいいかもしれない。
さて、ビーナスラインは白樺湖を過ぎると表情を変えていく。夏はニッコウキスゲ、この季節には道路脇に生え揃ったススキがなびき、高原の雰囲気を伝えてくる。車山高原から霧ヶ峰と呼ばれるこの辺りのエリアには、名勝天然記念物の「霧ヶ峰湿原植物群落」といい散策ルートやハイキングコースなどがあるので、自然の中を歩くのが好きな人は要チェックだ。
車山スキー場で有名な車山の山肌に沿って、なだらかなコーナーを進んでいく。このエリアには「霧ヶ峰富士見台」をはじめ、道中にいくつかの展望駐車場があるので、見晴らしの良さそうなポイントを探りながら、ゆったりと走るのがおすすめだ。
車山から霧ヶ峰までのおよそ10kmの区間は、ビーナスラインの中でも最も景観が良く、このコースのハイライト。ビーナスラインを紹介している多くのドライブガイドは、このエリアで撮影した写真を掲載している。近くには霧ヶ峰車山肩 駐車場があり、休憩スポットのほか「ビーナスの丘」という展望スポットもある。
美ヶ原高原までの最終区間は走りを楽しめる山岳ルート
さて霧ヶ峰を越えると、いよいよドライブもクライマックス。終着点の美ヶ原高原美術館を目指す約30kmの区間は、大部分が標高1600〜1800m付近の山あいを縫って進む山岳路だ。霧ヶ峰までの清々しい高原ロードから景色は一変し、ザ・ワインディングロードといった趣。展望駐車場の数も少ない。この区間は低速コーナーから高速コーナー、ストレートとバリエーションに富んでいるので、ドライビングを存分に楽しむことができるだろう。
ここでいよいよスコーピオンボタンを押し、スポーツモードに切り替える。高性能エキゾーストシステム「レコード・モンツァ」の排気バルブが開き、野太い排気音が発せられると共に、グッとエンジントルクならびにエンジンレスポンスが向上する。ノーマルモードでも十分スポーティに楽しめるが、スポーツモードはやはり別格。パワートレインだけでなく、ステアリングの手応えも増し、思わずドライバーの方もやる気スイッチが入る。連続するコーナーに合わせてステアリングを切り込み、立ち上がりでアクセルを踏み込むと、それに応じてステアリングが中心付近に戻ろうとする感覚が増す。まるで次のコーナーに早く飛び込みたいとクルマにせがまれているようだ。
ビーナスラインは、落合という交差点から美ヶ原高原美術館までのラスト5kmほどで標高を一気に1800mあたりから2000mにまで上げていく。このセクションはタイトコーナーが続くうえ、路面も荒れているので十分にペースを落として走行したい。
美ヶ原高原美術館に着く頃には日が傾き、おまけに霧が濃く視界がほとんどない状態だった。とても撮影できる状況ではなかったが、ここは条件が良ければ富士山から北アルプスまで360度の大パノラマが望めるスポット。天空から望む本来の絶景を見渡すことは叶わなかったが、ここまでの約70kmのドライブで満足度は十分に満たされ、すっきりした気分で帰路に着くことができた。
文 曽宮岳大
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