アバルトで走りたいドライブルート【伊吹山ドライブウェイ(岐阜県-滋賀県)】

眺望と観光が楽しめる歴史ある霊峰

古事記では「倭建命」、日本書紀では「日本武尊」と表記されるヤマトタケルノミコト。西暦83年から112年(*諸説あり)に実在したと推定され、熊襲や東国の征討はじめ大和政権へまつろわぬ人々を征伐するなど全国各地に数々のエピソードを残した、日本の古代史上に燦然と輝く伝説的なヒーローです。

彼は東国を平定して婚約者と結ばれた後、“とある山”に荒神がいると聞き、授けられていた三種の神器のひとつである草薙剣(くさなぎのつるぎ)を持たずに素手で征伐に向かいます。山を登って三号目まで差し掛かると、古事記では白い大猪、日本書紀では大蛇と記される神の使いが現れますが、彼は“使いごとき相手にする必要はない”とばかりに無視してしまいます。けれど、実はその相手こそが当の伊吹山の神。彼は怒った神が巻き起こした大氷雨で大きなダメージを負って病に倒れ、妻の元にも生まれ育った大和の国にも戻れぬまま、命を落としてしまいます。


山頂にはヤマトタケルノミコトの石像が建てられている。写真提供:伊吹山ドライブウェイ

その“とある山”というのが、岐阜県と滋賀県にまたがる伊吹山地の主峰、伊吹山。古来より信仰の対象とされ、頂上から伊勢湾、鈴鹿山脈、濃尾平野、琵琶湖、北アルプス〜中央アルプスなどを見渡せる眺望の良さや、薬草や高山植物、野鳥、昆虫の宝庫であることから、明治以降は登山や観光の対象として知られています。

標高1377mの伊吹山は、麓の関ヶ原から山頂直下までクルマで登ることができます。今回ご紹介するのは、その“伊吹山ドライブウェイ”。


伊吹山ドライブウェイは全長約17kmの自動車専用道路。途中いくつか景色の見所ポイントがあり、立ち寄りながらドライブを楽しめる。

景色を楽しみながらゆったりドライブ

高速道路からは最寄りの名神高速道路・関ヶ原インターチェンジで降りて左折、国道365号線をおよそ3km走ったところにある“伊吹山口”交差点が入口というアクセスのしやすさ。そこから標高1260mの9合目を終点に、長いコーナーからタイトターンまで様々な曲率のコーナーが17kmにわたって続くワインディングロードです。9合目にある650台収容可能な山頂駐車場が終点で、起点からの標高差はおよそ1100m。


道路は片側1車線ずつ。道幅は確保されていて走りやすい。追い越しレーンはなく、ゆったりとした気持ちで楽しみたい。今回のドライブのお供は、アバルト595

そのコーナーをひとつずつトレースして走るのも楽しいですが、ここは中部地方有数の観光道路。目に飛び込んでくる景観が美しいのです。四季折々の山肌の彩りももちろん、ルート上に点在する待避所や12km地点にある上平寺越(じょうへうじごえ)駐車場、9合目の山頂駐車場からの眺望は、天候次第ではありますが、晴れたら抜群の景観が望めます。どこから見るかで景色はガラリと変わり、様々な表情を楽しめます。普通車往復3,140円の通行料金も、絶景を拝められることを考えたらむしろコスパがいいとすら思えるほど。



伊吹山の標高は1,377mあり、滋賀県では最高峰。天気が良ければ目下に琵琶湖やそこに浮かぶ竹生島、若狭湾などが一望できる。写真下は山頂から琵琶湖。写真提供:伊吹山ドライブウェイ

余力があればハイキングも

観光道路ゆえ、施設もなかなか充実しています。山頂駐車場にはスカイテラス伊吹山があり、洗面所はもちろん、フード&カフェのコーナーでおなかを満たすこともできます。また、ショッピングコーナーで岐阜県や滋賀県の名産も入手可能。琵琶湖を一望できるテラスや、展望階段テラスもあり、雄大な光景を眺めていると心が癒されます。


周辺に高い山はなく、山頂からは遠くまで見渡すことができる。またスカイテラス伊吹山では蕎麦やカレーなどのフードも提供されている。写真は展望デッキからの景色。写真提供:伊吹山ドライブウェイ。

また山頂駐車場からは3本の登山道が伸びていて、比較的軽装で歩ける西登山道では片道1kmの約40分、中央登山道では片道500mの約20分で山頂まで辿り着くことができます。山頂にはヤマトタケルノミコトの石像が設置されており、その付近に休息所や売店を兼ねた数軒の山小屋もあります。西登山道は眺望に優れるだけじゃなく、斜面がゆるやかで様々な高山植物を観賞しながら散策できる遊歩道のようなルートでもあります。ドライブとハイキングの組み合わせで1日をゆっくり楽しむ、というのもいいですね。


山頂駐車場から伸びるハイキングコース。ここを登って行くと頂上にある日本武尊像を拝むことができる。

もうひとつクルマ好きにとって嬉しいのは、伊吹山ドライブウェイの公式WEBから申し込んで所定の手続きをすれば、12km付近の上平寺越駐車場では50台まで、山頂駐車場では200台までのミーティング場所として利用できること。基本、1台ずつの通行料金以外は無料です。抜群に美しい風景の中を走った後の、絶景を望める場所でのアバルト仲間とのミーティング。西登山道で登って中央登山道で下ってくる1時間のハイキング付き。おなかがすいたら軽くランチ。そんな具合に充実した休日を組み立てられるのではないかと思います。


春は新緑、夏は咲き乱れる百花、秋は紅葉が眺められる。

ちなみに伊吹山ドライブウェイは24時間オープンというわけではなく、営業時間が設定されています。

・4月の第3土曜日〜7月第3土曜の前日:8時〜20時(最終入場18時)
・7月第3土曜日〜8月31日:3時〜21時(最終入場19時)
・9月1日〜9月30日:8時〜20時(最終入場18時)
・10月1日〜11月最終日曜日:8時〜19時(最終入場17時)
・11月最終日曜日の翌日〜4月第3土曜日の前日:冬季閉鎖


最寄りのインターは、名神高速関ヶ原インター。そこから約3km、約10分で伊吹山ドライブウェイの入り口にたどり着く。

気に留めて置きたいのは、山頂は麓よりも大幅に気温が低いこと。また、お盆や紅葉の時期には交通量が増えて、上平寺越駐車場や山頂駐車場付近に渋滞ができることもあるようです。またガードレースの向こう側が崖になってる部分も多いので、よそ見運転や速度オーバーには十分注意して走ってください。それでは安全なドライブを!

文 嶋田智之

伊吹山ドライブウェイ

アバルト公式WEBサイト