アバルトをイメージしたオリジナルメニュー「オマールのリゾット、スコルピオーネ仕立て」

食べるアバルトエンブレム!?

「このエンジン、やっぱりパンチがありますよね。ひさびさにアバルトに乗らせてもらったけど、やっぱり楽しいですよね。リアシートを倒せば市場で買った食材も運べそうだし、これで仕入れに出掛けられたら最高だなぁ……」

破顔一笑で語ってくれたのは、お客さんから“トミーさん”の愛称で親しまれている冨山晶行さん。今回「アバルトオリジナルメニュー」の第2弾に協力いただく『トラットリア築地トミーナ』のオーナーシェフです。実はトミーさん、2年ほど前までは自動車雑誌の編集者もされていた、子供の頃からのクルマ好き、バイク好き。現在も2台のヒストリックカーやイタリアンスーパーバイクなどと一緒に暮らしています。アバルトをはじめとするイタリア車や世界各国のクルマにもたっぷり触れてきた方なのです。


本場イタリアで料理の修行を積まれた『トラットリア築地トミーナ』のオーナーシェフ冨山晶行さん。大の付くクルマ好きで、かつてクルマ雑誌の編集に携わっていた経験も。

とはいえ、もともとトミーさんは生粋の料理人です。親子で料理人をされていて、ご家族は1947年に食堂として創業、1990年に築地市場の場内に本格イタリアン、“築地トミーナ”をオープン。市場の移転に伴って2018年から豊洲市場の中で“魚河岸トミーナ”と名前を変えて営業しています。“トラットリア築地トミーナ”は、“馴染みのある築地に店を残したい”との想いから2008年にオープンした姉妹店で、トミーさんがシェフを務めていらっしゃいます。


築地本願寺からほど近い、築地2丁目の路地に位置する『トラットリア築地トミーナ』。クルマで訪れる際は近くの駐車場のご利用を。上限設定のある有料駐車場もあり。

トミーさんは大学を卒業した翌年にイタリアへ渡り、現地の料理学校やいくつかのレストランで3年半、きっちりとイタリア料理の修業をしたシェフ。帰国してからはイタリアンの料理人として腕を振るっていましたが、学生時代から憧れていた自動車雑誌の編集者という仕事に縁ができて、「後悔したくなかったから家族にワガママをいって」転職を決意。数年間は編集者とお店の経営の二足のわらじで奮闘していたものの、無理が祟り身体を壊して入院、泣く泣く編集者の道を諦め、持ち前の技術を生かす料理人の仕事に戻ったのでした。


『トラットリア築地トミーナ』の店内。トラットリアを名乗る通り、気軽に訪れられるお店です。

「僕が作るのは、イタリア修行時代に学んだシンプルでごくごくオーソドックスな現地の料理が基本です。創作イタリアンじゃなくて、食堂の料理みたいなもの。イタリアではトリノ近郊の小さな村にある二つ星のリストランテに長くいました。シェフにきっちりとついて勉強させてもらうことができたし、頼りにもしてもらえましたから。そうそう、トリノ市内までクルマで1時間ぐらいだったから、自動車博物館を見に行ったり昔のアバルトがあったコルソ・マルケ38番地を訪ねたりもしましたよ」

そんなトミーさんがこしらえてくれたのが、アバルト乗りなら「あっ!」と驚いちゃうメニュー。名づけて『オマールのリゾット、スコルピオーネ仕立て』。


アバルトのエンブレムを模した『オマールのリゾット、スコルピオーネ仕立て』。Scorpion Magazineの読者のために特別に用意してもらった特別メニューです!

「オマール海老をトマトクリーム煮にして、サフランのリゾットと合わせ、サソリのエンブレムを表現してみました。アバルトに初めて乗ったとき、ものすごく衝撃的だったんですよ。そんなところからイメージを膨らませ、いろいろな試作の末に完成しました。リゾットは伝統的なミラノ風を踏襲したものです。オマールを使った伝統料理というのはパッと思い浮かばなかったんですが、リゾットとの兼ね合いもあるので、イタリア料理から大きく逸脱しないようにソースを使い、軽い煮込みとして完成させました。家庭できっちり作ろうとしたらそれなりに手数が多くて大変なところもあるでしょうけど、料理に親しみのある方なら、オマール海老を手に入れさえすれば作れると思いますのでぜひ試してみてください」

使用する食材


特別にレシピを公開! 使用する食材は下記の通り。

使用する食材とトミーさんからのアドバイスは以下のとおり。分量は、それぞれ2人前を前提としたもの。

まずは下のリゾットの部分から。

◎ブロード(ブイヨン)/1リッター
「お店では鶏と野菜を3〜4時間ほど煮だして作るんですけど、市販のブイヨンのキューブでも代用できます。キューブにも化学調味料を使ってないものがあるので、そちらをオススメします」

◎バター/40グラム。
「最初に玉ねぎを炒めるために10グラム、味つけと最後の仕上げのために30グラムを使います」

◎玉ねぎ/20グラム
「みじん切りにしておきます。できればお米より細かくしてください」

◎イタリア米/150グラム
「日本の米はデンプン質が多くて、糊が出てしまいがち。特に掻き回すと糊っぽさが出ちゃうので、可能な限りイタリア米をオススメします。どうしても日本の米しかない場合には、火にかける時間をしっかり調整して、掻き回しすぎないようにしてください。どっちの場合も米のアルデンテ、つまり口に入れたときに少し芯が感じられる程度を意識してくださいね」

◎サフラン/ほんのひとつまみ
「5〜6本で綺麗に色がつきますので、入れ過ぎないでください」

◎白ワイン/約30cc(30グラム)
「高価なものじゃなくていいです」

◎パルメザンチーズ/50グラム
「味つけと最後の仕上げ“マンテカーレ”(後述)のためのものです」

◎塩/適量
「こちらは味を調整するためのもの。イタリアの塩がいいと思います」


リゾットに使用する食材は、左上から時計回りで「バター(玉ねぎ炒め用)」「玉ねぎ」「イタリア米」「白ワイン」「パルメザンチーズ」「バター(味付け用)」「サフラン」。一番奥はブイヨン。

次はオマールの食材。

◎オマール海老/1尾400グラム程度
「下茹でをし、縦に2分割して、半身をひとり分に使います。両ハサミと胴体を切り離し、沸騰したお湯で部位ごとに順番に茹でます。ハサミは3分30秒、胴体は4分で茹で、別に用意した氷水に落として火の入りを止めます。アバルト風にレイアウトするために、頭の殻を外し、砂袋(脳や内臓の部分)を取って足の部分を2分割。尾の部分も食べやすいように、8割方身と殻を外しておくのがいいですね。ハサミの部分は割って、身を出してておきましょう。ソースのコクになる大切なミソを、砂袋と一緒に捨てないように注意です」

◎トマトソース/100グラム
「あらかじめホールトマト400グラムと玉ねぎ1/4個(約60グラム)で、トマトソースを作っておくといいですね。玉ねぎをみじん切りにして、にんにく適量、オリーブオイルをちょっと多めにして火にかけます。玉ねぎが黄金色に輝くぐらいまで炒めたら、ホールトマトをつぶしながら投入します。トマトの種を粉砕すると苦みが出ちゃうので注意してください。そしてローリエを1枚入れて、量が2/3になるまで(2~3時間)煮込みます」

◎生クリーム/30グラム
「市販のものでもだいじょうぶです」

◎アメリケーヌソース/50グラム
「お店で使うのは自家製ですけど、市販のものでだいじょうぶです。オマールの殻のソースですから、短い料理時間だと出てきづらいオマールの出汁を補完できるんです」

◎白ワイン/100cc
「香りづけのためです」

◎野菜/適量
「これはお好みで。今回はパプリカの赤と黄色、それとズッキーニを、合計で30グラムぐらい使いました。マッシュルームとかでもいいですね。野菜を入れると見た目に変化が出るのと、味に多様性が出てきますよ」

◎パプリカの赤/適量
「オマールはひとりあたり半身なので、2人前だと片側のハサミが足りなくなります。そこはパプリカをハサミ型にカットして補いましょう(笑)。オーブンがあればオーブンを使うのがいいですが(160度で30分)、なければフォークで刺して直火で真っ黒に焼いて、氷水に落として皮をむくという手もあります」

◎エストラゴン/適量
「海老にはエストラゴン。最後の仕上げの香り付けですね」


こちらはオマール海老の味付け用の食材。左上から時計回りで「トマトソース」「生クリーム」「野菜」「エストラゴン」「アメリケーヌソース」「白ワイン」。

自宅で作ってみよう!

テフロン加工のフライパンがあると焦げ付きにくく便利ですが、今回はステンレスの鍋を使います。バターで玉ねぎを炒めた後にイタリア米を投入。炒め続け、米を手でつまむとある程度の段階で“熱っ!”って感じるタイミングがあります。炒め過ぎるのもよくないけれど、その段階までいくと米が油でコーティングされてさらにパラパラになるので、タイミングを上手く掴むのがコツです。

そこまで炒めたら白ワインを入れ、サフランも投入。サフランは入れる前に指で少し揉むと、香りと色が出やすいです。

白ワインのアルコール分が飛んだら、あらかじめ温めておいたブロード(ブイヨン)を最初に2〜3杯様子を見ながら入れ、きっちり湧いてきたことを確認したら残りすべて入れて炊いていきます。16分ぐらいが目安です。リゾットは基本、終始強火です。ブロードの量が多い間は米が対流し続けて焦げ付きませんが、残り5分ぐらいになったら焦げ付かないように小マメに鍋底の様子を見てヘラでこそいでください。

その間にオマールを。尾の部分の殻は最後まで外さずにくっつけておきます。食べやすくするためと、完全に外すと後で加熱したときに縮みやすくなってしまうので。

フライパンにオリーブオイルを敷いて、にんにくとトウガラシを少々。そして下準備ができているオマールをすべて入れていきます。身に熱が入りすぎて固くなるのを防ぐため、殻側を下に。ハサミ部分は頭の殻を下に敷いて身はその中に収めるようにするといいでしょう。

次に白ワインを入れて、香りをしっかりつける意味でもフタを閉めて軽く2分ほど蒸し焼きに。

水分が少なくなってきたら、トマトソースと生クリームとアメリケーヌソースを入れて混ぜ、野菜も入れて、水分を調整しながら中火で煮詰めていきます。味の調整は塩と胡椒で。

ソースができてきたら、オマールのハサミなどの身の部分や尾の部分は、固くなることと身が縮むのを防ぐため、途中で一度、すべて出しておきましょう。頭部分のミソがソースになじむように、スプーンの背やフォークでつぶし混ぜておくのを忘れずに。

リゾットの方はほぼ炊きあがったら火から下ろし、バターとパルメザンチーズを入れて混ぜ、塩で味を調整します。最後にマンテカーレ(イタリア流の空気を入れ込む混ぜ方)。フライパンを強めに揺すり、木べらで混ぜることで空気を入れ、乳化させます。

ソースがいい具合に詰まって出来上がったら、まずはリゾットをお皿にエンブレムみたいになるように配置。

その上にオマールの身をレイアウトして上に殻をのせ、パプリカで作ったもう片側のハサミも配置。余ったパプリカはソースに具として混ぜてしまいましょう。

下半分にソースを置き、エストラゴンを振り掛けたら完成!

バターとパルミジャーノの味が濃厚なリゾット。オマールとトマトの味が濃厚なソース。どちらもパンチが効いていて別々に食べても美味しいけど、互いに引き立て合っているので、一緒に食べると釣り合いがとれて、心地好く美味なのです。ビジュアル優先のように思われるかもしれませんが、味の方だって負けず劣らず、めちゃめちゃ美味しいです!

エンジンもシャシーもそれぞれ強力だけど全体的に見るとしっかりバランスがとれてるアバルトに、よく似た食後感。トミーさん、狙ったな……と思いつつ、そんなところも嬉しかったのでした。これ、ぜひともお店で味わっていただきたい逸品!

ちなみに『オマールのリゾット、スコルピオーネ仕立て』は、サラダとドリンクがついて2980円で提供される特別メニューにしていただけることになりました。「現社長の母も“こういうのはお祭りだから”なんて言ってくれているし、昔からおつきあいのある海老の仕入れ元さんも泣いてくれるので」なんていう築地っぽい粋が実現したバーゲンプライスです。オマールの仕入れのため、できれば前々日までに電話かFacebookのメッセンジャーで予約をしてから訪ねてくださいね。

トラットリア築地トミーナ
ランチ 11:30〜14:00(L.O.)
ディナー 17:30〜21:30(L.O.)(緊急事態宣言中は20時まで営業)
定休日 土日・祝日
住所 東京都中央区築地2-14-3 NIT築地ビル 1F
電話 03-3546-9139
URL http://tomina39.com/(Facebookへのリンクあり)

文 嶋田智之