アバルト乗りにこそ勧めたい、品質とデザイン性にこだわったハンドメイド・ドライビンググローブ

手袋の街さぬきで育まれたクラフトマンシップ

アバルトはドライビングの楽しみを堪能できるクルマ。それゆえ、ドライビングギアに関心の高いオーナーさんも多いようです。アバルトファンのSNSでドライビングシューズなどが話題に挙がることもしばしば。そしてここ数年、それを追うように盛り上がりを見せてきているのが、ドライビンググローブ。今回は、手作りにこだわった高品質なドライビンググローブ「CACAZAN(カカザン)」を紹介します。


ドライビンググローブの素材には、厚すぎず薄くもない鹿皮を使用。写真は、DDR-071Rブラック×キャラメル。25,000円(税抜)。

ドライビンググローブは、ひと昔前まではコアな一部のベテラン向けアイテムというイメージがあったものの、最近ではデザインや色使いが豊富になったことからファッション性の面でも注目され、愛用者が加速度的に増え続けているようです。

その立役者のひとつが、今回紹介するCACAZANのドライビンググローブ。香川県さぬき市にある「出石手袋」がすべての工程を手作業で作り上げる、メイド・イン・ジャパンのブランドです。全国各地で開催される自動車イベントに出店し、ドライビンググローブの有用性とファッション性を地道に発信し、支持を集めてきました。香川県さぬき市にあるその工房を訪ねました。


CACAZANの工房。すべての工程がハンドメイドで行われています。

香川県東部は日本の手袋の9割以上の生産を誇る、手袋産業が盛んな地域。多くのメーカーが海外生産に軸足を移している現在でも手袋づくりは盛んに行われており、優れた職人さんが存在します。出石手袋代表の出石尚仁さんは、そのひとり。メーカーから請け負う仕事やOEM生産を担うお父さんの工場を受け継ぎ、現在はドライビンググローブを中心としたオリジナル品に特化したファクトリーとして展開しています。


CACAZANのスタッフの方々。出石さんご夫婦と姪御さん、ご子息とお嬢さんの家族経営で営んでいます。

出石さんがオリジナルブランドの立ち上げを決意したのは、生産効率とコストダウンが優先されがちな量産品のいわゆる下請けの仕事では、納得のいく手袋を作ることができないと判断したから。その高い技術力を集大成し、手作りならではの発想と品質を備えたグローブを作りたい。そんな想いからスタートしたのがCACAZANなのです。実際、そのドライビンググローブは、相当な手間とノウハウを投入して作られています。


革の素材にこだわりつつ、パターンやカラーを豊富に用意。また、オーダーメイドでは素材とステッチの組み合わせや好みのロゴや刺繍を入れることも可能

素材、デザイン性、フィット感。すべてに妥協しないモノ作り

まずはデザイン。CACAZANではCADを使わず、部位ごとに求められる要素を加味しながら、手描きで起こします。手袋はいくつものパーツの集合体であり、その組み合わせで立体を構成します。それらひとつひとつのための型紙を作り、何度も修正を重ねてパターンを完成させます。


オーダーメイドでは、色や素材はもちろん、その人の手のサイズにあったグローブが製作可能。

CACAZANではドライビング用のほか、モーターサイクル用、サイクル用のグローブなども手掛けていますが、それぞれの用途に合わせて革を吟味しています。革は、0.1mmの厚みの違いが触感の違いを生み、さらに染料に含まれるオイルの量でも風合いや特性が変わるとのこと。そして何より天然素材なので、同じ革は2枚と存在しません。そのため、例えば厚みはバンドマシーンと呼ばれる機械で微細なスライスを加え、使い部位や用途に対して理想的になるように調整します。


革の色は、ブラック、レッド、キャラメル、ブラウン、アイボリー、ブルーの7色を用意。

裁断は、プレスマシーンのような裁断機で、部位ごとにひとつひとつ型抜きがなされます。革は部位によって伸びる方向や伸び具合が異なるので、それぞれのパーツに適した部位を革の目を読みながら選び、金属製の型を合わせてプレスします。その型も専門工房に作ってもらった専用品を使用しています。また、通気用の細かなディンプルも、このマシーンで一列ずつていねいに開けていきます。


メッシュもひとつずつ手編みで作業を行なっています。

裁断された革と裏地、それにメッシュ素材の場合は手編みのニットからなるパーツを、ひとつひとつ昔ながらの足踏みミシンで縫製します。グローブは小さいわりにパーツ点数が多く、そのうえカタチが複雑です。それを工程やパーツごとにミシンを何種類か使い分けながら、順を追って立体的に縫製し、仕上げていくのです。


通気性に優れるニットグローブ。写真はハーフタイプ。24,000円(税抜)。

さらに出来上がった手袋の内側に残る革を最小限になるようハサミでカットし、糸の出っ張りもひとつひとつカットした後に頭を焼いて丸めるなど、手を入れたときの触感の良さを大切にした仕上げを行います。そして最後にひとつずつ手の形をした立体的な電熱式アイロンの型にはめて、指の曲がり加減が自然になるよう調整して仕上げます。


素材を縫い合わせた後、余剰分をカット。さらに糸の膨らみ部分を焼き付けて丸め込みます。こうした目に見えない部分へのこだわりが装着時の心地よさを生み出しているのです。

こだわり派も納得のつくり 完全オーダーメイドにも対応

これらの工程を職人さん達がひとつひとつていねいに作り上げていきます。例えばステッチの部分ひとつとってもわかる、コンマ1ミリのズレさえ見てとれない糸の精密な軌跡。フリーハンドで作業しているにも関わらず、編み上がったニットがピッタリ型紙どおりに仕上がる正確さ。立体構造を形作るための魔法のようなミシン使い。普通は気にかけない裏側の隅の隅まで行き届いたディテーリング。そうしたひとつひとつが、量産品では成し得ない抜群のフィット感を生み出します。職人さんの技とこだわり、そして手にするお客さんへの思いやりが、CACAZANの工場にたっぷりと詰まっていることが確認できました。


平面的な革素材を立体的に仕上げるために、完成形を想定してミシンがけの作業を行います。微妙なさじ加減に職人さんのモノづくりの感覚が生かされます。

そうして完成したドライビンググローブの肌触りやフィット感、ステアリングやシフトノブに気持ちよく吸い付くようなグリップ感は、ハンドメイドならではのもの。CACAZANの愛用者が2双目、3双目を求めるのも、他では味わえない心地よさを肌で感じ取っているからでしょう。


レディースモデルも豊富にラインアップ。写真は、レディース新作モデルとなるニットのハーフタイプ。27,000円(税抜)

CACAZANのドライビンググローブのレギュラーモデルには、様々なタイプ、デザイン、色使いのものが用意されています。またメンズとレディースがそれぞれ用意されています。イベントでは展示販売も行われますが、受注制作が基本となります。また完全なるワンオフのオーダーメイドも可能。オーダーメイドは細かなやりとりが必要なため、イベントやオーダー相談会などで相談してみるのがいいでしょう。


出石さんのお嬢さんは、なんとアバルト乗り。「595」がお気に入りだそうです。ボディサイドの赤い模様はCACAZANのロゴ。

高品質かつ実用性に優れた製品を求めるユーザーから人気を集めているCACAZANのドライビンググローブ。一度手を入れたらその抜群のフィット感を感じ取れるはず。こだわってアバルトを選んだ人にこそ試してもらいたい、こだわりに溢れた逸品です。

文 嶋田智之

CACAZANの公式ウェブサイトはコチラ
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