The SCORPION SPIRIT VOL.2 一途な思いで、駆け抜ける。

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フォトグラファーのケイ・オガタ氏が、アバルトの魅力を刺激的に表現するプロジェクト「The SCORPION SPIRIT」。“今日までの自分を、超えられるか。”というテーマで繰り広げる新シリーズの第2弾WEBムービーで、プロ・ドリフトドライバーの石川紗織選手とともに、刺激的なパフォーマンスを魅せてくれたレーシングドライバーの山野哲也選手。今回のスコーピオンマガジンでは、山野哲也選手に撮影のこと、そして走りへの熱き思いを語ってもらった。

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映画のワンシーンのような幻想的な映像

パフォーマンス、スタイリング、そして世界観。そのすべてを印象的かつ躍動的に表現した「The SCORPION SPIRIT」のムービーで『595 Competizione』を駆った山野選手に、出演した感想や撮影時のエピソードについて話を伺った。

「太陽が昇る前から夕刻まで、長時間にわたる撮影だったのですが、時間によって様々な景色を見ることができて楽しかったです。映画のワンシーンの中にいるようで、とても幻想的でしたね。撮影前、ケイ・オガタさんから“クルマの動き、カメラワーク、登場人物のすべてがカッコいいムービーを撮りたい”というお話がありました。そこに出演するドライバーとして、僕もカッコよくありたいと思いました。しかも、このムービーは世界中の人々が観る可能性もある。どこの国の人が観ても魅了されるようなパフォーマンスを心掛けました」

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「レースでは、優勝という2文字を狙う。しかし、今回の撮影には、特に順位はない。その代わりに、観た人に感動していただかなければならない。そのため、撮影に挑む際“魅せる”ということに一番に注力しました。運転の引き出しというか、ドライビングテクニックとしては、レースも今回の作品も、実は同じ。クルマが持っているパフォーマンスをドライバーが持っている技量で、限界まで思い切り引き出す。そういった意味では、アバルトの魅力を上手く表現できたと思っています」

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2017年から全日本ジムカーナ選手権PN2クラスに『124 spider』で参戦している山野選手。今回出演したムービーでは『595 Competizione』をドライビングした山野選手に、ステアリングを握った感想について話を聞いた。

「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)の『595 Competizione』で、ムービー中に表現したような刺激的なパフォーマンスを見せたいと思い、当初のプランにはなかった走行シーンを提案させてもらいました。何もチューンナップしていない市販の『595 Competizione』で、これだけ高いパフォーマンスを実現できたことは、すごくうれしかったです。『595』って、パッと見かわいい。でも、それだけじゃない。かわいさと獰猛さが融合している。しかも、ドライバーズシートに座った瞬間、スタイリッシュさや高級感もある。そういった、様々な魅力を持ち合わせているクルマって、なかなかない。それが、すべて揃っているのが『595』だと感じています」

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クルマとの対話が栄光を生み出す

ジムカーナはもちろん、SUPER GTやSUPER耐久など、様々なレースに参戦してきた山野選手。どのようにしてレースの世界に挑んだのか。そして、レースの舞台を変えてきたのか。これまでのレース人生について語ってもらった。

「父の仕事の都合で高校生時代と大学生時代の一部をアメリカで過ごし、その後日本に帰国。大学3年生の時に出場した“安全技術コンテスト”という大会で優勝したのがきっかけで、自動車部に入部しました。その後“全日本学生ジムカーナ選手権”に出場し優勝。それが、モータースポーツに携わるようになったきっかけですね。大学を卒業後は、サラリーマンをしながら、プライベートでレースに参戦していました。活動を続ける中、プロのチームが声を掛けてくれたり、スポンサーが増えていくようになりました。サラリーマンでも、レースに勝ち続けることで、チャンスが巡ってくるんだなと感じましたね」

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「ジムカーナに参戦していたある時、お世話になっていたショップの社長にレースへの参戦を勧められました。プロドライバーが多数参戦するレースに、20代半ばのサラリーマンが参戦するという状況でした(笑)。そこから、様々なカテゴリーのレースに参戦するようになりました」

プロドライバー転身後のSUPER GTでは、いくつものチームに在籍し、数多くの勝利を手にしてきた山野選手。優勝経験のないチームを表彰台の天辺に導き、シリーズチャンピオンにまで押し上げるなど、在籍したチームに大きな勝利をもたらしてきた。その活躍から「優勝請負人」と呼ばれる山野選手に、強さの秘訣を尋ねた。

「レースの時、僕はすべての神経を研ぎ澄ましてクルマを走らせています。例えるなら、自分自身がクルマの脳であり、神経伝達のパーツのような存在。クルマの一挙手一投足を瞬時に把握し、手足を通じてタイヤの先端まで確実に操る。その際、クルマとの情報伝達のスピードの速さや、やり取りの回数を限界まで高めるよう、常に意識しています。そうしたことが、クルマとの一体化に繋がり、パフォーマンスを限界まで引き出すとともに、ミスのないドライビングを可能にする。きっと、その繰り返しが結果に繋がっているのだと思います」

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数々のタイトルを奪取してきた山野選手は、未だ様々なチャレンジを続けているという。なかでも、2015年・2016年に参戦したアメリカのパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムレースは、彼にとって最強に刺激的だったという。

「標高2,500mからスタートし、4,301mの山頂に向かって走る、とても難しいレースでした。僕が乗ったマシンは、まだ市販されていない開発車両。つまり、出来上がったレーシングカーではありませんでした。しかも、コースには崖っぷちもあれば、森林の中もある。天候も路面状況も刻々と変わる。風が吹くと路面に砂が堆積したり、突然雹が降ってきたり、路面が凍っていることもある。しかも、標高が高いため空気が薄く、高山病の症状が襲いかかってくる。このような過酷なレースに挑戦できたことが、一番チャレンジングな体験でしたね」

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2017年シリーズから山野哲也選手の相棒となった『ABARTH 124 spider』(写真は、2019年モデル)

レーシングドライバーとしてはもちろん、開発テストやドライビングスクールなども手掛ける山野選手。多彩な活動の中でも、安全運転活動には特に力を入れていると語る。

「モータースポーツはもちろん、僕は安全運転にもこだわりがあります。レースでは、誰よりも速く走ることが一番重要。スタートのグリーンシグナルが点灯してからチェッカーフラッグを受けるまで、クルマのパフォーマンスを限界まで引き出し、全力で走ります。ただし、完走できなければ、順位認定もポイント付加もない。もちろん、チャンピオンになることもできない。レースには、常にリスクはついて回りますが、その裏側にある安全意識を自分自身でしっかりと持っていることがとても大切なのです。クルマを極限までコントロールできるからこそ、安全に走ることができる。レースは究極の安全運転だと思っています。街乗りなどのドライビングシーンでは、クルマのパフォーマンスを100%発揮することは滅多にありません。しかし、レース同様、ドライバー自身がクルマのパフォーマンスをしっかりと把握すること、そして危険を回避できる技量を習得することは、安全運転を実現する上で必要不可欠だと考えています。現在、僕は安全運転活動やドライビングスクールなど、様々なイベントに携わっています。その中で、一般の交通社会の中でも安全を担保して走ることの大切さを、たくさんの方々に伝えること。それが、僕の使命だと思っています」

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レースで優勝を飾り、1位のポーズを決める山野哲也選手

2017年から全日本ジムカーナ選手権PN2クラスに『124 spider』で参戦し、3年連続シリーズチャンピオンに輝いている山野選手。しかも、V19という偉業を達成するとともに、通算112勝(2019年8月現在)という前代未聞の勝利を獲得した。誰もなし得ていない活躍を続ける山野選手に、走り、そして相棒『124 spider』への思いについて話を聞いた。

「僕がクルマの世界で生きている理由は、運転が上手くいなりたいから。その気持ちは、いまも止まらないんです。運転が上手くなりたいという一途な気持ち。それが、僕を、そして僕の走りを向上させてくれていると思います。『124 spider』、そしてアバルトには、心から感謝しています。1974年に誕生した初代『124 spider』をリバイバルするには、乗り越えなければいけない壁がたくさんあったと思います。その困難を乗り超えて誕生した現代版の『124 spider』が、僕に素晴らしい戦績をプレゼントしてくれました。素晴らしいパートナーと出逢えて、とても嬉しく思っています」

幾多の伝説を生み続けると共に、走ることへの情熱をさらに熱くする山野哲也選手。彼の挑戦と伝説は、いつまでも終わることはないだろう。

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2019年全日本ジムカーナ選手権・第7戦にてシリーズチャンピオンと通算111勝目の栄冠を手にした山野哲也選手とチームスタッフ

【写真協力】
EXEDY / MAKOTO YAMAUCHI


The SCORPION SPIRIT 第2弾のムービーはこちら:https://www.abarth.jp/cp/scorpionspirit/

撮影で使用したモデルの詳細はこちら
ABARTH 595 Competizione:https://www.abarth.jp/595_competizione/
ABARTH 124 spider:https://www.abarth.jp/124spider/


山野哲也 TETSUYA YAMANO
レーシングドライバー
スーパーGT 3年連続チャンピオン、全日本ジムカーナ選手権通算19回チャンピオンなど、数々のタイトルを日本記録を保持するレーシングドライバーであるかたわら開発テスト、ドライビングスクール、安全運転活動、ジャーナリスト活動等でプランナー、アドバイザーなどをこなす究極のマルチタレンテッドドライバー。新たなモータースポーツファン、そして文化の創造を目指す。
2017年から『ABARTH 124 spider』を相棒に、全日本ジムカーナ選手権に参戦中。『ABARTH 124 spider』で3年連続のシリーズ優勝という偉業を成し遂げるとともに、前人未到の通算112勝を達成した。(2019年8月現在)