トリブート フェラーリ オーナーインタビュー

愛知県・チッタナポリ内のチンクエチェント博物館(http://www.museo500.com/)の代表を務めるとあって、チンクエチェントにもアバルトにも精通している伊藤さんにトリブート フェラーリはどう映ったのだろうか?

ようやく1000kmほど乗ったところで慣らし運転中です。だからまだフルパワーで楽しむというところまではいってないんですが、それなりにアクセルを踏み込んでみてもしっかりしている。その高次元なバランスに感心しています。こういったハイチューンなクルマで、何の違和感もなく真っすぐ走り、止まり、曲がるっていうことだけでも凄いと思いますよ。
それにエンジンのサウンドがいいですね。さすがはフェラーリの名がつくだけあって造りこんである。インテリアはカーボンがふんだんに使っていたりクオリティが高い。これだったらフェラーリのオーナーが手に入れても満足するでしょうね。

トリブート フェラーリならではのテイストはどこにありますか?

じつはターボが大きいので、エンジンが低い回転では少しもっさりしていて、回り始めるとグンとパワーがでてくる。いわゆるドッカン型とでもいうんでしょうか?
ただそれは扱いづらいほどではなく、ちょうどいい刺激になっているんです。積極的に低めのギアを選択して美味しいエンジン回転域を使って走るのが楽しい。アバルトコンペティツォーネの反応が素晴らしくいいので、シフトすることも喜びになりますね。ボクはもともとMTが好きなんですけど、これなら2ペダルでも納得です。

そもそも、博物館を開くほどチンクエチェントを好きになったきっかけは?

子供の頃に近所でチンクエチェントを見たんですよ。いい大人が屋根から顔を出してね、子供のボクに挨拶してくるわけ。それがなんかマンガみたいでビックリしちゃってね。刷り込まれたんです。

それで免許が取得できる年齢になって、早速チンクエチェントを手に入れたんですか?

じつはそうでもないんです。家業が自動車関係で、ボクもゆくゆくは継ぐことになっていたんですが、それに対する反動なんですかね。若い頃はクルマが好きではなかった。ところが22歳で社会人になってそろそろクルマが必要というときに、さあ何を買えばいいのか? 仲のいい友達に相談したら「輸入車にしたら?」ってすすめられて、一緒に自動車雑誌をペラペラめくっているうちに、フィアット・リトモというのが目に付いたんですね。それもアバルト125TCというやつ。300万円を切っていて2.0LのDOHCならリーズナブルだと思ってね。実際には納車まで時間がかかって130TCになったんですけど、あのリトモがボクの考えを変えてくれました。なんだか運転するのが楽しくって。それまではただの道具としか見ていなかったクルマが、愛するべき存在になったのです。
それをきっかけにアバルトが好きになったのですが、アバルトといえばチンクエチェントが定番。そうだ、子供の頃にみたあのクルマ……という流れで今に至っているというところですかね。

クラシックのチンクエチェントやアバルトを愛でてきた伊藤さんにとって、復活した現代のアバルトはどういう存在なんでしょうか?

もう、復活してくれたことだけで満塁ホームランですよ。今のフィアットの経営者のマルキオーネさんは、おそらくアバルトのコレクターとしても世界一だと思いますが、それだけによーくわかってらっしゃるんでしょうね。昔と同じようなやり方、セオリーにのっとってリバイバルさせている。アバルトの名前でレースやラリーを戦って優秀性を証明し、市販チューニングカーにつなげていく。そういった昔ながらの手法が21世紀になっても通用している、というかこういうブランドにとっての王道なんですね。アバルトは、ランチアのラリー活動やフィアットコルセ、アルファコルセといった形で技術を継承してきました。その頃に製作されたモータースポーツ用の車両なんかは実力が高いのはもちろん、本当に美しくできています。配線のとり回し一つとってもビシッと綺麗で。アバルトの技術、ノウハウはそういう形でずっと継承され、今のアバルト チンクエチェントなどに繋がっているんだと思います。

今回はアバルトとフェラーリがコラボレーションするということになりましたが、それをどう感じていますか?

ボクはフェラーリを大変にリスペクトしていて、じつは過去にいろいろ乗ってもいるんです。最初は12気筒の512B,B。誰もが憧れる、いわゆるスーパーカーですが、なぜかボクにはあんまりしっくりこなかった。
それでデイトナや、8気筒の328、6気筒のディーノとだんだんと小さなモデルにしていったんです。最終的にはフェラーリのフレームに4気筒エンジンを搭載したASAというモデルに出会ったんですが、これにビビッときました。ボクには小さいエンジンが合うみたいですね。ASAとチンクエチェントは生涯付き合っていくクルマになるでしょう。

チンクエチェントとアバルト、そしてフェラーリ愛する伊藤さんにとって、トリブート フェラーリを買うのは当然というか、買わないという選択肢がないぐらいですね。

そうなんです。まったく凄いクルマを造ってくれたもんだな、と。まさに理想の形なんですよ。ただ、これでゴールとは思っていません。これをまた一つのスタートと捉えてアバルトとチンクエチェントをますます愛でていきたいですね。