「Make Your Scorpionで僕なりの小さなコンペティションGTを作りました」アバルトライフFile.25 原田さんと595 Competizione
スコーピオンマンス限定のスペシャルプログラム
季節はいよいよさそり座。カルロ・アバルトが誕生した星座の時期がやってきました。FCAジャパンではこの時期恒例で、“Make Your Scorpion”という自分だけの「595」を作り上げてオーダーできる特別プログラムを展開しています。期間中はボディカラーやシートカラー、ブレーキキャリパーなどのカラーを、自分好みにチョイスし、オーダーできます。
ここでは昨年、このMake Your Scorpionで自分の理想とする「595 Competizione(コンペティツィオーネ)」を作り上げたオーナーをご紹介します。
原田徹也さんは、現在33歳。18歳で運転免許を取ってすぐに英国ブランドのホットハッチに乗り、23歳でカロッツェリア・ザガートがボディを架装した日本製スポーツカーに乗り換え、25歳頃にそれと並行して「FIAT Grande Punto(フィアット・グランデプント)」を所有。そして26歳のときに、何と驚くべきことにザガート製のボディを持つ「ABARTH 750 Coupe“Sestriere”(セストリエーレ)を手に入れます……レストア途中のバラバラの状態で。
その750 Coupe Sestriereについてはちょっと横に置きますが、原田さんはその直後ぐらいに初めて現代のアバルトを体験しました。それも友人知人の関係で、最もベーシックな「500」から「695 Tributo Ferrari(トリブート・フェラーリ)」までをひと通り。それから1年少々して、原田さんは最もベーシックなABARTH 500を購入します。
「どのモデルも楽しかったんですけど、最も街乗りに適しているのが普通の500。僕は普段乗りを楽しみたかったから、あえて500を選びました。納車前にレコードモンツァだけつけてもらって、あとはエッセエッセ・キットも組まずにノーマルのまま、3年半ぐらい乗りました」
そして諸般あって一度はアバルトを手放しアシ車に乗り換えましたが、今は再び595 Competizioneです。8年経っていまだにレストア途上の750 Coupe Sestriereも、もちろん所有したまま。原田さんはアバルトのどこに、そこまで心惹かれてしまったのでしょう?
「いつ頃からアバルトが好きになったのか、実はあんまり覚えてないんです。もともと僕はデザインからクルマが好きになる、カタチから入るタイプ(笑)。最初は『007』の映画に出てくる日本の名車と英国の名車に憧れて、そこから興味を持っていろんなことを調べたりしていくうちにザガートのデザインが好きになって、ザガートのヒストリックモデルを何としてでも手に入れたいと思ってたんです。ところがある日、どうせダメだろうと思いながら知人にお願いしたら、運がいいことに750 Coupe Sestriereを譲っていただけることになって。今だったら高価になり過ぎちゃって、手が出なかったでしょうね。たぶんそこがアバルトへの入り口だったんだと思います。バラバラの状態で買ったから、そこでいろいろ調べたり勉強したりしてるうちに、自然にアバルトに引き込まれたんでしょうね。……オタクでスミマセン(笑)」
ひとつひとつのパーツを吟味
原田さんはとにかく調べる人、研究する人。多くを語りませんが、イタリアの書籍を読みたいがためにイタリア語の勉強をし、750GT Sestriereのレストアのための部品の注文のためにイタリア人とやりとりする中でイタリアという国を知らないとダメだと考え、何度も現地にわたって様々な人を訪ねたり……。
「おかげでいろんな意味でたくさん勉強させていただきました(笑)」
と冗談交じりで笑っていますが、今ではイタリアのカーデザインの世界、ザガートというカロッツェリア、そしてアバルトに関する知識は相当なもの。
現在の595もそうした学習と研究を下地にした、彼の想いがたっぷりと活かされています。一見すると、日本のカタログの標準色にはないBlu Podioのボディカラーにブラウンのインテリアカラーを組み合わせ、ブレーキキャリパーとホイールのセンターにシルバーを選んだ、大人な感じのアバルト595 Competizione。けれど、そのひとつひとつに原田さんなりのこだわりがあるのです。
「もともとブルーが好きだったこともあるんですけど、ピニンファリーナさん(イタリアの著名なカーデザイナー)がこういうブルーにこういうブラウンの内装のスポーツカーに乗っていたのを知っていて、いいなと思っていたのです。このブルーはイタリアでは見たことがあったんですけど、日本とイタリアでは光が違うから、同じ色でも見え方が違うでしょう? Make Your Scorpionにあった中から迷いなしに選んだんですけど、だからクルマが来るまでドキドキしてました(笑)。ブレーキキャリパーとホイールのセンターの色選びには散々悩みまして、やっぱり来るまでドキドキしてました(笑)。でも、結果オーライでしたね。僕はクラシカルな方向が好きなんですけど、レオナルド・フィオラヴァンティさん(イタリアの著名なカーデザイナー)が昔の名車の名前を持ったクルマの復活について語ったときの“新しいクルマはただの再現であってはならない”という感覚と似ていて、モダンなクルマはクラシカルに装いすぎたらダメだと思うんです。ブレーキキャリパーとホイールのセンターのシルバーって、パーツとしては小さいけど、ここが赤とか黄とかのレーシーな感じじゃなくて昔のクルマと同じような落ち着き方をしているので、どことなくクラシカルな雰囲気を作ってくれている感じです」
さらに原田さんの595 Competizioneには、Make Your Scorpionからもう一歩踏み出した、純正パーツを使ったアレンジが加えられています。595 Competizioneは本来、フロントのエンブレムの台座とその両サイドのヒゲ、ドアハンドル、ドアミラーなどがツヤ消しのガンメタリックとされていますが、そうしたディテールが595 Turismoのシルバーのものに変更されているのです。
「僕は1940年代から1960年代に好きなクルマが多いんですが、その時代って、レーシングカーをベースにしながら豪華な仕立てを持たせた高性能なグランツーリズモが結構あったんですよね。レーシングカーを買って、カロッツェリアに持ち込んでワンオフのロードカーを作ってもらうとか。“速いクルマは好き。でも僕はレースなんかやらないんだけどね”みたいな感じで。例えば中身はル・マンのワークスカーだけど、それを普段のアシにしちゃう、みたいな伊達さ。そういう世界観が、僕は好きなんです。その夢を、このクルマに託しました(笑)。落ち着いた感じのちょっとクラシカルな装いの595 Turismoに見えて、室内を見るとMTだしシートバックはさり気なくカーボンだったりで、実は595 Competizioneだってわかる。僕なりの、小さなコンペティションGT。小さな自己満足か(笑)」
もうひとつ、原田さんの595 Competizioneのダッシュボードは、元々のツヤ消しのブラックからボディ同色にペイントされ、そこに“Abarth Eraborazione”のエンブレムが追加されています。このエンブレムはイタリアに強いアイテムの専門店で見つけたもので、おそらく695 Biposto(ビポスト)のプロトタイプのエンジンカバーについていたもの。
「Eraborazioneは“丹念に作り込む”という意味で、このクルマに込めた自分の想いのつもりです。アバルト500の最初のモデルといえる “FIAT 500 Eraborazione Abarth Record”へのオマージュも、ちょっとありますけど。これをダッシュボードにつけることを思いついて、そのときにここをボディ同色に塗ることを思いついたんです。これも少しクラシカルな雰囲気を作るのに役立っていますよね」
原田さんの595 Competizioneは、Make Your Scorpionで望んでいたイメージの大半を形作ることに成功し、そこに小技をプラスすることでイメージをさらに強調した好例といえるでしょう。特筆すべきは、カスタマイズを純正パーツで構成していること。“ディーラーさんが親身に相談に乗ってくれて、できる、できないというのをハッキリと伝えてくれたからこそできたこと”と原田さんはいいますが、Make Your Scorpionでクルマをオーダーするときにしっかりとイメージを固めてディーラーに相談できるところまで入念に調べた原田さんもお見事です。さて、クルマに対する満足度は?
「自分の中では完成形。クルマ業界のプロフェッショナルや、すごく詳しい方から“センスいいね”とホメてもらえています。満足度は……100%を越えていますね」
あなたもMake Your Scorpionを活用して、自分だけの大切なストーリーを築き上げられるかもしれません。
文 嶋田智之
Make Your Scorpionの特設ページはコチラ
595 Competizioneの詳細はコチラ