アバルトで走りたいドライブルート【異国の雰囲気を味わえる磐梯吾妻スカイライン(福島県)】
一度は訪れたい天空のワインディングロード
ワインディングロードを走る楽しさ、気持ちよさの源は、次から次へと向かってくる様々なコーナーを、横Gを感じながらクリアしていくドライビングと、そのときどきに視界へと飛び込んでくる美しい風景。そこに尽きるでしょう。その両方をおなか一杯に──あるいは胸一杯に──なるくらい満喫できる道を紹介します。福島県の“磐梯吾妻スカイライン”です。走行中に突如現れる絶景に、“えっ? ここはどこ?”と戸惑ってしまうような、非日常へと導いてくれます。
この道は磐梯朝日国立公園に属する吾妻連峰の東側を、山腹を縫うようにして作られた山岳観光道路。1959年に開通し、2013年までは有料道路でした。最高地点1622m、平均標高1350m。ほぼ全面的に景観が楽しめるパノラマルートで、遠くの山並みもすぐ下の渓谷も点在する奇岩も木々のトンネルも楽しめ、運がいいと猿に出逢えることも。例年、11月中旬頃から4月上旬頃までは冬期通行止めとなりますが、春先には雪の回廊、初夏には眩しい新緑、秋にはパッチワークのような美しい紅葉と、季節ごとに心惹かれる表情を楽しめます。“日本の道100選”に選ばれたのも納得。また観光道路として計画されたこともあって、道のところどころにクルマを停めて景色を眺めたり写真を撮ったりできるスペースが設けられているのも嬉しいところです。
この道の最大のクライマックスは、ルートのちょうど中間あたりの浄土平と呼ばれるエリア。それまでの美しい風景から一転、火山の噴火によって生まれた荒涼にして雄大な光景が広がります。突然どこか別の大陸にトリップしたような非日常感です。この光景を楽しみながら先へと続いていく道を走る。そのためだけにでもここを訪れる価値は十分にあると思います。
浄土平エリアには700台を収容できる有料駐車場(乗用車500円)があり、ご当地食材を使ったメニューを楽しめるレストハウスや、付近の自然や歴史を知ることができるビジターセンター、日本一標高が高い場所にある公開天文台が隣接しています。もちろん清潔なトイレや自販機も。また火山活動が繰り返されたことで生まれた湿原や乾燥地帯などにそれぞれ異なる植物群が食性しているエリアでもあり、高山植物や沼などを目で楽しみながら散策するコースも整備されています。吾妻小富士や一切経山へのちょっとしたハイキングの拠点にもなっています。この駐車場にクルマを停めて1日ゆっくり楽しめるぐらい多くの見どころがあります。
クルマ好きとしてやっぱり気になるのは、28.7kmのルート。ヘアピンのようなタイトなコーナーから長いコーナーまで、バリエーションは豊富。十分に走りがいがあるルートです。最初から最後まで往復1車線ずつで、道幅はアバルトには十分な広さ。ところどころ荒れている箇所も見受けられますが、全体的には走りづらかったり危険を感じたりすることのないルートといえるでしょう。
ただし、浄土平エリアの標高の低い部分には現在も火山活動によって火山性ガスが発生している箇所があり、そこは停車禁止、窓を閉めて走ることを促す警告の表示も。今回は595Cツーリズモのトップを開け放って走っていたのですが、スイッチひとつで開閉できる便利さを再認識しました。
アクセスは、東北自動車道の福島飯坂ICと福島西ICからルート北側の高湯温泉付近までが、それぞれおよそ20分少々。東北自動車道の二本松ICと磐越道の磐梯熱海ICからルート南側の土湯温泉町までが、それぞれおよそ30分少々。どちらから磐梯吾妻スカイラインに入るのも、そう迷うことはないと思います。が、個人的には南側の土湯温泉方面からアクセスすることをオススメします。左に浄土平の有料駐車場やレストハウスを見ながら通り過ぎ、ほんの少し走った後、とあるコーナーを抜けた瞬間に目の前に広がる光景の非現実感が格段に大きいからです。
有料駐車場を過ぎてしまうとしばらく先までターンができる場所はないので、先に立ち寄ってノドを潤したりお腹を満たしたりするか、あるいは北側の高湯温泉辺りまで走って引き返してくるか。天気のいい休日には、交通量は多いようです。道そのものをストレスなく楽しみたいという場合、朝の早い時間か、あるいは平日に訪れるのがいいでしょう。
どうか安全運転で!
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文 嶋田智之