2014スーパー耐久Rd6オートポリス レポート

ムゼオ・チンクエチェント・レーシングチーム
ドライバー 大賀裕介

11月8日, 9日にスーパー耐久2014年シリーズの最終戦が、九州は大分県のオートポリス インターナショナル レーシングコースで行われました。
悔しいリタイアに終わった前戦からわずか二週間のインターバルのみで行われた今回のレース、私、ムゼオ・チンクエチェント・レーシングチームのドライバーである大賀裕介がレポートいたします。

スーパー耐久シリーズ最終戦のオートポリスは熊本県と大分県の県境に位置し、標高が高い位置にあります。コースも山間の地形を利用したアップダウンの激しいレイアウトとなっており、ドライバーにとってはとてもチャレンジングなコースです。同時にクルマ、特にタイヤの消耗に関してはかなり厳しく、3時間のレースではタイヤのマネージメントにも気をつけなければなりません。
前戦鈴鹿では接触から悔しいリタイアとなってしまい、私にとってはリベンジの場となります。

今回もTVCシミュレーターにてトレーニングを行い、サーキットのレイアウトを頭に入れて、実際の走行に入りました。
木曜日と金曜日に行われたテスト走行では予想通りタイヤ磨耗が激しく、どうすればタイヤをもたせることができるのか?が大きな課題となりました。しかし、このレースから相方の蘇武(そぶ)選手に加え、新たに地元熊本出身のベテラン大塚選手がチームに加わり、コースの攻略方法から、タイヤに優しい走行ラインを教えてもらうことができました。
そのアドバイスをもとに色々な事を試すことができ、また、マシンのセッティングも変更。よりリアタイヤを使えるセッティングにすることによって、フロントタイヤを長く持たせることにしました。
FF車を使用するほかのチームもタイヤの磨耗に苦しめられていたようで、上位にはFR車勢が並び、前進こそあったものの苦しいテストデーとなりました。

迎えた土曜日の予選。まずは私がAドライバー予選に挑みます。
コースインを待っていると無線が…
「大賀君、今年最後の予選だね…悔いの無いよう、思い切り走っておいで!」
今年一年、レースをともに戦ってきたエンジニアからの言葉に嬉しさと気合を入れてもらいました。
タイヤをセーブするために予選アタックは2周のみと決めていたので、最初からフルプッシュ!1周目でまずまずのタイムをマークし、最後の計測に入りました。
1コーナーのブレーキングからコーナーリングしていると、昨日よりもグリップ感が増している感じがします。スーパー耐久では総計40台ものマシンが走るので、予選が進むにつれ路面状況が変わっていくのです。特にこのオートポリスではそれが顕著に出るようでした。
このことから、昨日までのイメージよりもさらに高いスピードで走るイメージに切り替えて、3コーナー4コーナーとクリアしていきます。
今シーズンのファイナル!と気負う気持ちを落ち着かせつつ、きれいにコーナーリングすることに集中し、自分でも満足のゆくミスのないラップを決めることが出来ました。
タイムは2分7秒590。ST-4クラス15台中13位のタイムと厳しい結果でしたが、今年の最後に満足のゆく走りはできました。
続いてBドライバー予選に蘇武選手が挑みます。私の走ったデータとフィーリングをしっかりと伝え、背中をたたいて送り出しました。蘇武選手にとっても今年最後の予選、気合が伝わってきます。
そして、しっかりとタイムを出してきてくれた蘇武選手は2分7秒298を記録。
A,Bドライバー予選タイムの合算からなる予選順位は13位となりました。
翌日の決勝の天気予報は雨。決勝はFF車有利になるかもしれないと期待もありますが、まずはしっかり完走しようと心に決めて決勝日を迎えました。

予選結果
A 大賀 裕介 2分7秒590 ST-4クラス13位
B 蘇武 喜和 2分7秒298 ST-4クラス14位
C 大塚 隆一郎 2分7秒751
A,B合算予選結果 13位(15台中)

決勝日は天気予報どおりの雨。
朝のフリー走行では雨の中でFR勢が苦戦したことから、私たちはシングルポジションで走ることができ、決勝に向けてこの上ない手ごたえを感じていました。
その後すぐに雨は止みましたが、まだ路面はウェット…。「このままウェットでいてくれ」と願いながらのピットウォークとなりました。
ピットウォークでは天気のこともあり、お客さんが少ないのかな?と思っていたのが大間違いで、たくさんの方に応援の声をいただけました!特にお子様連れのご家族が多く、写真を撮ったり、私たちチーム全員が顔に貼っているアバルトの象徴「サソリ」のタトゥーシールを貼って喜んでくれたりと、私にとっても嬉しい時間になりました。
また、パドックではアバルトの創業者であるカルロ・アバルトの誕生月にちなんだイベントを展開。リニューアルした市販車アバルト595Cツーリズモの展示と、グッズのプレゼントを行いました。
こちらも好評いただき、たくさんの方にアバルトというクルマを知っていただくきっかけとすることができました。この中からアバルトオーナーになっていただき、サーキット走行を楽しむ私たちの仲間になっていただける方が現れてくれたら嬉しいなぁと感じましたし、現在アバルトに乗っていただいているオーナーさんも応援に駆けつけてくださり、頑張れよ~!と声をかけていただけました。
路面はどんどん乾いてきましたが、もうコンディションは関係ない!自分の力を出すだけだ!

レース前に路面が乾いたことでエンジニアと作戦を練り直した結果、それぞれドライバーの得意分野を生かした、今年の総まとめとなるレースをしようということになりました。
他車とのバトルを得意とする私が、スタートからバトンタッチするまでフルプッシュ。タイヤはすぐにダメになってしまいますが、最初に順位を上げて蘇武選手へ。タイヤに優しい走りが得意な蘇武選手が120分の超ロングスティントを担当し、最後に大塚選手にゴールを任せるというものです。
この作戦を成功させるには、絶対に最初の順位アップを成し遂げなければなりません。

スタートが迫り、チームの皆と握手を交わし、今年最後のレースが始まりました。路面がまだところどころ濡れているので慎重なスタートを切り、1台先行されましたが、すぐに抜き返して順位キープ。ここから抜けるだけ抜きにかかります。
まずは最終コーナーからの立ち上がりで苦労しているロードスターを抜き1つポジションアップ。しばらくこう着状態が続きましたが、前を争う3台の集団に追いつきました。
そしてプレッシャーを与え続け、1台追い抜き、さらに1台がスピンしたことによって9位まで追い上げることができました。
30分が経過する頃には前を行くホンダS2000に追いつきましたが、タイヤの磨耗限界がきており、無理はできない状況に…。ピットにあと数周でピットインするよ!と伝え、絶対にバトンをつなげなければとの思いで走りました。
そして、いざピットイン。ドライバーチェンジでミスを犯さないよう最後まで集中し、今年共に切磋琢磨しながら走ってきた頼れる相方、蘇武選手に交代。自分の仕事が終わり少しホッとした瞬間、なんとエアジャッキのエアが抜け、マシンが傾いてしまいました。
エアを入れ直し、元に戻しますが、これが給油作業中だったためにペナルティの対象に…。
蘇武選手は長いスティントに加え、ペナルティピットと気持ちが途切れそうな状況になりながらも、順調に走ってくれました。
途中、ドライバー交代無しでのタイヤ交換を行いましたが、ここでもトラブルが発生…ピットに時間がかかってしまったものの、とにかく耐えてタイヤをもたせてくれと願うばかりでした。私もピットモニターで走りを見守り、祈る気持ちでした。
上位でクラッシュが発生したことと、粘り強い走りのおかげで順位は9位キープのまま、素晴らしい仕事をしてくれた蘇武選手から、最後の大塚選手へバトンタッチ。大塚選手はベテランで経験豊富なうえ、このコースが地元でもあり、信頼して見送りました。
そして、残り数周…。ピットインの関係で順位を落とし、またタイヤトラブルを抱えながらも必死に走っていたのですが、後ろから来る速いマシンに抜かれ、11位に。
その後はなんとか完走させるべく頑張ってくれて、レース終了。完走することはできましたが、今回の目標であったシリーズポイントの獲得にはまた一歩届きませんでした。

決勝結果
ST-4クラス 11位(15台中)

ゴール後は悔しい気持ちが大きかったですが、チーム全員が協力して完走できたこと、ドライバーそれぞれの得意分野を生かして結果を狙いに行ったチャレンジに悔いはありませんでした。スタッフ一人一人と握手を交わし、今年の皆の頑張りを称え合いました。
反省や悔しさや終わったことへの寂しさで一杯でしたが、私自身にとっていろんなことを経験させてもらえた1年だったと思います。
結果で争うレース、そこで結果を出せなかったことは悔しく、厳しさを改めて思い知らされましたし、また応援いただいている皆様には期待に答えられず、本当に申し訳なく思っています。
来シーズンへの準備はもう始まっており、2015年はマシンのアップデートも予定しています。私自身、そして蘇武選手ともに、来季もこのムゼオ・チンクエチェント・レーシングチームの一員として、アバルトで走るためにトレーニングを行い、準備しています。
きっとまた皆様にレースのレポートを、そして良い報告ができるようチームと頑張っていきますので、変わらぬ応援をよろしくお願い致します。

大賀 裕介


今シーズンも最終戦を迎えました。新たに大塚選手が加わりレースに挑みます。


テスト走行の間、常に車両データを収集。マシン、ドライバーともに改善点を見つけます。


コクピットの様子。走行中は水温、油温、タイムの確認やブースト圧など確認事項がいっぱい!


決勝日の朝は雨。好タイムをマークし、雨での決勝を祈りますが、どんな状況でもベストを尽くすのみ!


ピットウォークではお子様と記念撮影。


パドックでは新車の展示とグッズの配布を行いました。


レースクイーンも大切なチームの一員。ステージ上でチームのアピールをしてくれました。


スタート前にエンジニアと健闘を誓います 。


マシンをスライドさせながらの走行。ドライバーそれぞれの得意分野を生かした作戦で走りました。


悔しさは残りますが、来年のリベンジを誓って…。一年間、応援ありがとうございました!!