モードとアバルトの美しき共通項 ピッティ・イマージネ・ウオモ95 現地リポート

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花の都フィレンツェは、アバルトと少なからず縁がある。歴史をひもとくと、早くも創業8年目の1957年には、当地のヒルクライム「コッパ・デッラ・コンスーマ」にその姿を現している。1960年代に入ると「ラリー・ディ・トスカーナ」の参加リストにも毎年名前を連ね始める。あの「ミッレミリア」でも、それがまだ本格的な公道スピードレースだった時代から、アバルトはルネッサンスの都を駆け抜けていた。

フィレンツェは、メンズファッションの都でもある。それを象徴するのは、世界最大級の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」だ。年2回催され、1月は来シーズンの秋冬、6月は翌年の春夏アイテムを紹介する。
いずれも会期は4日間で、メイン会場であるバッソ城塞のほか、市街でもさまざまなショーやカプセルコレクションが展開される。
メンズ見本市の年間カレンダーの中ではロンドンの直後であり、ミラノとパリに先駆けるイベントである。

2019年1月8日から11日まで開催された第95回では、2019/20年秋冬のトレンドを早くも占った。東京ドームの1.28倍に相当する6万平方メートルの会場には1230のブランドがひしめき、3万6千人のビジターと2万2800人のバイヤーが訪れた。メインパビリオン周辺は、次のトレンドをいち早く取り入れたファッショニスタたちが集う。

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2019/20年秋冬は、ベージュ/白+バーガンディー/ボルドーの組み合わせがトレンドの兆し。渋めのメタルボタンもアクセントだ。ブルネロ クチネリのブースで。

気になる次期秋冬のトレンドカラーは、ずばりバーガンディー/ボルドーといった上品なレッドである。2018/19秋冬でみられたナチュラルなイエロー+タータンをはじめとするチェックの組み合わせも、引き続きさまざまなコレクションを彩りそうだ。

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「ミスターJP」ことファッション・ブロガーのジャン・ピエール氏(一番右)と仲間たち。2018/19年秋冬に登場したイエロー・ベースのアイテムも、引き続き人気色の地位を維持する兆しが。

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ラルディーニのブースで。こちらもイエロー。永遠の旅の目的地のひとつである大都市ニューヨークへのオマージュとして、街を走るタクシーの色を新作にリフレクトした。

ライフ&ワーキングスタイルの変化や、空の旅のさらなる普及は、クラシコ・イタリアをはじめとするトラディショナルなブランドにも影響を及ぼし始めている。多くのブランドはリュックやスニーカーといったファンクショナルなアイテムをいかに取り込むかに、近年自社のセンスを注力している。

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スニーカーは、コレクションのモティーフを反映させたものを合わせると、よりエレガントなものとなる。参考までにニットのトップスは、ボトムスにインする(入れる)のがお洒落になりそうだ。ブルネロ クチネリで。実は、この方は…!

スーツもしかりで、500gを切る究極の軽量化に成功したブランドも。伝統と革新の技をいかに融合するかが試されている時代をひしひしと感じる。

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トンボリーニ創業家3代目のシルヴィオ・トンボリーニ氏。新時代のジェットセッターのため、写真のようなカジュアル&エレガントに加え、500gを切る軽量スーツも提案する。

ところで今回のピッティ会場には、2018年夏に日本でアバルトが募集したキャンペーン「PITTI IMMAGINE UOMOを巡る旅」の当選者・山田直樹氏も訪れた。

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今回会場を訪れた「PITTI IMMAGINE UOMOを巡る旅」の当選者・山田直樹氏。愛車はアバルト595。

山田氏の普段の顔はレコーディング・エンジニア。浜崎あゆみ、EXILE、倖田來未など著名アーティストの楽曲を数多く手がけてきた。同時に、自他ともに認める業界きってのクルマ好きでもある。現在の愛車はアバルト595。普段使いに加え、週末は各地でサーキット走行やツーリングを楽しむ。そうしたカーライフゆえ、オドメーターは2年半で早くも7万3千キロを刻んだ。以前所有し、5年間で14万7千キロを走破した500も含めると、アバルト歴は計22万キロという。ABARTH DRIVING ACADEMYにも第1回から参加している。

今回のピッティでは開催前、山田氏から筆者のもとに「ファッションにはそれほど詳しくないのですが」という謙遜を込めたメッセージが届いていた。だが実際に登場した山田氏は、クール感際立つブラックのレザーブルゾンがベストフィットした長身の紳士だった。彼がイタリア人ファッション・インフルエンサーたちと並んで会話していると、あまりに自然なシーンだったためだろう、他の来場者にカメラを向けられる場面もたびたびあった。

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ファッション・インフルエンサーたちと共にフレームに収まる山田氏。「近年のファッション界における1980年代へ回帰志向は、音楽と通じるものがありますね」

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2016年にローマで誕生した「ロワ・デュ・ラック」は、大胆なフローラル・プリントがブランドのアイコン。山田氏は、クリエイターとしてのチャレンジング・スピリットに共鳴するものを感じたようだ。

会場で山田氏は、さまざまなブランドの創業者やデザイナーから話を聞くこともできた。
彼は語る。「イタリアの服は、所有する人に一定の“手入れ”を要求します。ただし安価なプロダクトが買った途端に古くなってゆくのと対照的に手に入れて、手をかけてゆくごとに着る人との物語が紡がれてゆきます。イタリアの服は、着る人の人生を変えてくれる可能性が秘められています」。そしてこう続けた。
「アバルトも他車とは違い、ガレージに納めた時点から所有する人とのストーリーが始まり、自分で手を加えるごとに愛情が深まってゆく。そればかりか乗る人の人生を変えてしまうパワーがある。そうした意味で、イタリアの服とアバルトは共通点が感じられますね」
そう熱く語る山田氏の眼はトスカーナの空のもと、きらきらと輝いていた。

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今回の「PITTI IMMAGINE UOMOを巡る旅」は、筆者・大矢アキオ(写真左から2番目)が会場ナビゲーターを務めた。

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今回当選した山田氏のイタリア滞在の様子をABARTHのInstagramで公開中!(1週間限定)イタリアで発見したサソリや、山田氏視点のPITTI UOMOもご紹介!
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Report & photo 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA