ABARTH DRIVING FUN SCHOOL 1st in Suzuka Circuit

去る2月17日に、鈴鹿サーキットにて行われた「アバルト・ドライビング・ファン・スクール」。世界中の様々な国ですでに開始されているアバルトのドライビング・スクールが、ついに日本国内でも本格始動した。昨年に行われたプレイベントで、その盛況ぶりをお伝えしたが、 今回はより本格的なプログラムが組まれたアバルト・ドライビング・ファン・スクール、 その第一回目の模様をお伝えしよう。
 
 

鈴鹿サーキットの東コースを舞台に行われた今回のドライビ ング・スクール。メインインストラクターには福山英朗氏を、その他に渋谷 勉氏、窪田俊浩氏、水谷竜也氏、阪口良平氏というレーシングフィールドで輝かしい戦績を収める面々を迎え、 かんたんな座学と、クルマとの接し方を学ぶために用意された様々なカリキュラムが実施された。
 

メインインストラクターを務めた福山英朗氏。ビギ ナーに焦点を合わせながらも、ドライバーのスキルに応じてレッスンに変化をつけた個人指導は充実した内容だった。閉会式後にコメントを求めたところ「アバルトのオーナーは自分のクルマに対して凄く関心を持っていて、もっとクルマのことを知りた い、もっと運転が上手になりたいという意識が高い。だから教わったことの吸収力に富んでいて、ア ドバイスによる走りの変化が大きい。事故もなく非常に充実した1日でした」と終始笑顔だった。
レーシングフィールドで確かな 実績を持つ講師陣は、ドライバーが陥っている問題を的確に見抜き、わかりやすい言葉で 「次はこうしてみましょう」と個別に指導。理論的な判断に基 づき次のアクションを指示してくれるので、言われるがままにやってみることで変化を体感、 実感できた人が多かった。

 

最初に行われたブリーフィングで、福山氏から与えられた課題は3つ。レーシングスクールではないので普段は味わうことができない運 転を楽しんでもらって、その合間にちょびっとだけ我々がアドバイスをしますねという言葉と共に「ドライビング・ポジション」と「レコードライン」、「荷重移動」、この3点に注意をして欲しいと告げられた。

具体的には、日常の走行とは比較にならない横方向へのGがかかってもステアリング操作がしっかりと素早く行える様に普段よりもシートポジションを前に移動させて、ステアリングとの距離を縮めること。
そして、コーナーをなるべく大きな半径で曲がれる様にレコードラインを意識するということ。最後に、タイヤが発生させるグリップ力は、タイヤを地面に押さえつけることで増やすことができる、即ちクルマが前荷重になった状態でステアリング操作を行いましょうという3点だ。

 

停止状態から全開加速して、目標のパイロンを過ぎた所から急制動をかける。最初は 制動開始時の踏力が弱かったり、停止する直前でブレーキを緩めてしまうなど、少し躊躇気味だった人も、2回、3回と回を重ねるごとに安定したブレーキングができる様になり、最終的にはブレーキイングしながらの緊急回避にも挑戦。ABSが働く領域でのブレーキの扱い方にも自信がついたようだ。日々のドライブにおける安全性向上に役立つレッスン。

 

一直線上に並べられたパイロンを、交互に左右からかわしていくパイロンスラロー ム。最大の目的は荷重移動をさせてクルマの 向きを変えることを体感してもらうこと。はじめはメリハリに欠けた走りも、インストラ クチャーのアドバイスを受けてパイロンとパイロンの間でノーズがダイブとリフトを繰り返し、リズミカルに走れるように。実際に、前荷重の状態ではクルマの向きが変わりやすく、運転のリズムがつかめたようだ。

 

スクールの内容は、実際に、アバルトならではの俊敏な「加速」「減速」「旋回」を体験して、その上でどうすればもっと思い通りにクルマを操ることができるかを、5つに分かれたプログラムを通じて学ぶことができる構成となっていた。5つに分かれたプログラムとは、急制動と制動しながらの危険回避、パイロンスラローム、1~2 コーナーとS字、そして最終コーナーのライン取りというもので、各プログラムにインストラクターが付いて個別の指導が受けられる。

1回走るごとにインストラクターが 都度都度指導を行う。その場ですぐに問題を指摘され、どうすればよいかを教わることでスキルが一気に向上する。言われたことに意識を集中させて走ることで、自然とあるべきドライビングの姿へと矯正され、そうなるとクルマの動きに不自然さが無くなり人車一体 感を強く感じたという参加者の声も聞かれた。教える側も教わる側も真剣だからこそ、達成した喜び は大きく感動もひとしお。

 

参加された方々は、サーキット走行はコレが初めてというアバルトオーナーもいれば、まだアバルトを手にしたばかりという方、サーキット走行も含めてアバルトの持つポテンシャルを既に存分に堪能している方など、ドライビングスキルはそれぞれであったが、各々のスキルに応じたレクチャーが行われ、新たなドライビングテクニックの発見や、アバルトの更なる魅力に触れることができたという感動体験に、皆一様に興奮した様子だった。
 

鈴鹿サーキットの東コースを3つのセクションに区切って、その区間の走りをレクチャーする。1~2コーナーと、S字、最終コーナーのライン取り、ブレーキングやアクセリングによる荷重移動の様子などをチェックして、その区間を通過するごとに一度停止してアドバイスを行う。コーナーとコーナーの間のライン取りといった難しい問題も、前後のコーナーにおけるクリッピングポイントを的確に示すことで改善させて、レコードラインをトレースさせる。

 
 
特に印象に残ったことは、多くの参加者から聞かれた感謝の言葉だ。
自らのアバルトで、安全に、楽しく、そして効果的なスキル向上の場を、メーカー自らが用意してくれ、他では得がたい貴重な体験ができた、そのことへの純粋なお礼の気持ち、そう、この日、鈴鹿サーキットはたくさんの「ありがとう」で満たされたのだ。
 
次回は、4月28日に富士スピードウェイ・ショートサーキットで開催される。鈴鹿に響い たアバルトの咆哮と人々の笑い声が、富士の麓でもきっと聞けるに違いない。
定員が定められているので、参加を迷っているヒマはない。だって、最高の食材(アバルト)と最高のシェフ(インストラク ター)は準備万端だ、あとはあなた自身が存分にアバルトを味わうだけなのだから。

参加者インタビュー

杉藤武志さん
アバルトの伝統に惹かれます。アバルトには、すごくレーシーなイメージを持っているので、こういったサーキットを走れるイベントには大感激しました。普段は3000rpm以下の領域で走っていますが、今日はエンジンを全開にしてガソリンがなくなるまで走り込めて、街中では絶対に味わえ ない気持ちよさを味わうことができました。
吉田尚史さん
最初はレッスンといってもわからないことだらけだったのですが、徐々に頭と体で理解できるようになって、すごく楽しかったです。普段は出せないような速度でコーナリングを体験してみて、どうやってクルマを曲げてやるのかがよくわかりました。教えてもらったことがちゃんと実践できて いるかどうかが少し心配ですが、荷重移動を含め、コツはつかめました。


山口利久さん
今回、このイベントに参加するまで、知らないで走っていることがとても多かったのに驚きました。前輪に荷重を移してステアリングをきると、想像以上にクルマが曲がってくれるので、パイロンスラロームはすごく参考になりました。とはいえ、走っている時は無我夢中で冷静に考えている余裕なんてないんですけど、集中してドライビングすることがすごく楽しかったです。
高山正江さん
絶対に楽しいだろうと思って、500Cからアバルト500Cに乗り換えたんです。このクルマではABSを初体験しました。パイロンスラロームは恐くはないんですが難しいですね。でも、荷重移動を意識してコースを走ったら、とにかくよくクルマが曲がってくれるので驚きました。ライン取りの重要さも理解できました。


宇野博昭さん・美保さん
新聞広告で見た695トリブート・フェラーリにひと目ぼれして、買おうと思った時にはすでに完売だったんです。だけど、自分の運転スタイルにマッチしていると思い、アバルト500Cを選びました。F1をずっと見ていたせいもあり、パドルシフトには憧れていました。ATとかCVTではなく、MTベースのミッションをパドルで変速させるのは最高ですね。 今日は今まで無理矢理クルマを曲げて、止めていたことを痛感しました。サーキットを走っても、限界点がつかみやすく、一線を越えてもクルマが安定性を保ってくれるので頼もしく感じましたね。
林田浩之さん
パイロンスラロームでは、荷重移動の大切さを知りました。ターンインのタイミングはなんとなくつかめたと思います。驚いたのは、自分が想像しているよりもはるかにタイヤのグリップ力が高くて、思った以上にクルマが曲がるってことですね。こんなスピードでも曲がるんだ! って心底ビックリしました。わかりやすい解説のお陰で、アバルトを存分に味わえて、とても楽しい1日でした。