アバルトが広げた写真の世界。グランプリ受賞者が語る“風景とクルマ”の撮り方
30分かけて探した“いちばんいい角度”
それでは実際に根岸さんが撮影された写真を見ていこう。まずはアバルトカレンダー 2026の選考でグランプリを獲得した1月の写真について聞いてみた。土壁の前に佇むこの写真は、クルマの角度が絶妙にカッコよく、空、壁、地面からなる背景も計算されている印象だ。根岸さんはどのような意図でこの写真を撮影したのか――。

撮影:根岸さん。
この写真は、応募するために撮ったのか、撮影後に応募しようと思ったのか、どちらですか?
「この写真は応募しようと思って撮りに行ったわけではなく、単純に砂山も絵になると思い、この雰囲気が好きで撮りました。撮影した時期がちょうど応募期間と重なっていたので出してみようという流れでしたね」
撮影のときに気にかけたポイントを教えてください。
「撮影時は、少しカメラを傾けて角度をつけました。タイヤの見え方や、クルマの前にある影、背景とのバランスを意識しました。影は後から見ると、もう少し暗く調整してもよかったかなと思っています」
一人で撮る時、クルマを停車してからカメラを構えたときに、クルマの位置や角度を変えたいと思うこともあると思います。そんな時はどうしていますか?
「実はこの写真を撮ったときも、何度もクルマを移動しています。もう少し後ろかなとか、角度を変えたいなと思い、何回もやり直しました。この場所に30分ぐらいはいたと思います。シャッターは何度切ったかわかりませんけど、そういう意味では30分かけてようやく撮れた1枚と言えるかもしれませんね」

カメラの設定について、この写真ではかなり絞って撮っていますね。
「奥行きを出したいときは、かなり絞ります。背景をぼかすより、全体をしっかり見せたいという考え方です。イルミネーションなどはぼかしてもいいですが、どちらかというとクルマだけでなく、風景全体を見てもらいたいですね。奥行きは横構図でも意識しますが、縦構図のときはさらに意識して撮影します。光の向きも気にかけてボディラインに影が入るように意識しています」

もう一枚の写真についても教えてください。
「もう1枚の写真は、“榛名のストレート”と呼ばれるポイントで撮った絵なんですけど、この場所は奥行きが命のロケーションなんです。望遠レンズで撮っているので、道がだいぶ圧縮されて見えますが、道がずっと遠くの上の方まで続いています。この日は霧が出るなと思っていたので、“じゃあ榛名に行こう”と思って撮ってきた1枚です」

撮影:根岸さん。
霧を予想して撮りに行ったのですね。気候が読めるのですか?
「榛名山なら大体わかります(笑)。何度も通っていますし、自宅から山頂の方が見えるんです。それで、“明日は霧が出るな”とか、“風が強くなりそうだな”とか予測はつきます」
となると、あらかじめ撮影場所とシチュエーションを定めて狙いにいった写真なのですね。
「そうです。この場所では何度も撮っているのですが、霧の写真はまだ撮っていなかったんです。それで“こんな雰囲気の絵を撮りたい”とイメージして撮りに行きました。ただ、その日は思ったように撮れなかったので、次の日にまた撮り直しに行きました。翌日も霧がいい感じに残っていてくれたので、今度は計算通りに撮ることができました」
