幸せを運ぶドクターズイエロー アバルトライフFile.47 高取さんご夫妻と595C Turismo

黄色に込められた想い

イエローのボディカラーにブラックのソフトトップ、そしてブラウンのインテリア。595C Turismoの通常のラインナップにはない組み合わせです。アバルトに詳しい人なら、Make Your Scorpionで作られたクルマだということが一発でわかります。もっとマニアックな人なら、Make Your Scorpionでもこの仕様が選択可能な年は限られていたことをおわかりになるかもしれません。

「はじめてのクルマが黄色のスポーツクーペで、その頃から黄色いスポーツカーが好きだったんですよ。明るい気持ちになれますからね。自分の子どもたちやまわりの同級生たちも、黄色いクルマを見ると、自然とみんなパッと笑顔になるんです。みんなが明るくなれるクルマっていいな、と思いますね」


595C Turismoオーナーの高取さんご夫妻。

このクルマのオーナーは、高取宏昌さん。お父さんが自動車メーカーにお勤めされていたこともあって、幼い頃から大のクルマ好き、高校時代も好きな自動車雑誌の発売日をワクワクしながら待っているような青年だったそうです。そして大学時代に“将来、返します”とご両親に交渉をして手に入れたのが、その黄色いクーペ。なんと17年間も乗り続けたのだとか。

「結婚したときはそのクルマで、実は私、免許を持っていなかったんですけど、いざ免許をとることになったら、“このクルマを運転してほしい”ということで、マニュアル免許を取らされたんです(笑)」と奥さまのちひろさん。宏昌さんも続きます。

「ときどき悔し涙を流しそうになりながら練習してたよね(笑)。後ろにチャイルドシートをつけて、子どもがぴょんぴょんと跳ねてたのを思い出しちゃうな(笑)」

なんだかとってもいい感じ。結婚されてから21年目とのことですが、仲のよさが自然と伝わってきます。おふたりが車内にいるカットを撮影するときに“それじゃ仲むつまじい雰囲気でお願いします”とお伝えしたら、ちひろさんから間髪入れずに“だいじょうぶです。本当に仲がいいので(笑)”と返ってくるほど。並んで立っているときの距離感にも、なにげない会話をしているときの表情にも、間柄が幸せであり続けてきた空気がほんのりと、けれどはっきりと漂ってくるのです。


イエローのボディカラーは、お二人の思い出のクルマと同じ色。

オープン > マニュアル

「黄色のクーペはすごく気に入ってたんですけど、それから家族が増えたこともあって、大きめのSUVを乗り継いで、今では家族用にミニバンがあります。その一方で、いつかまた黄色くてマニュアルで、できれば屋根が開くスポーツカーに乗りたいな、って思っていたんです。アメリカに住んでいたとき、空がすごく青くてカラフルなクルマが似合っていたり、オープンカーやサンルーフのあるクルマも多くて、青い空の下でそういうスポーツカーに乗ったら楽しいだろうな、いつか家族で乗りたいな、って思っていました。でも、そのすべてを満たすクルマってほとんどないんですよね。条件にいちばん合いそうなのがアバルトだったんです」

アメリカに住んでいたのは、研究のための医学留学。宏昌さんはドクターです。帰国してからは大学病院を含むいくつかの病院に勤務して、現在はとある地方都市で最も大きな総合病院の要職についておられます。ドクターといえばドイツか日本の高級セダンというステレオタイプのイメージがありますけど……?


子どもの頃からクルマ好きだったという高取さん。特にスポーツカーが好きで、595C Turismoは様々な要件を満たす1台だった。

「あまり興味はありませんでした(笑)。ホットハッチやスポーツクーペの方が好きなので。僕は昔からいろいろ調べるのが好きだからアバルトも乗る前から何となくイメージはできていて、小さくて速そうで、気になっていたんですよ。正直にいうと、124 spiderにも少し惹かれました。オープンでマニュアルが選べますからね。妻は124 spiderの方がいいかな、という感じでしたね」

「私がそっちを運転したかったんです(笑)。ただ、子どもが3人いて、特に下のふたりは主人が運転してどこかに行こうとすると必ず一緒について行こうとするんですよ。それがリアシート付きのクルマを選ぶ決め手となりました」


家族が多い高取さんファミリーにとってリアシートがあることが購入の決め手に。週末は子どもたちとドライブを楽しむことも。

「僕はマニュアルのクルマに乗りたかったんですけど、でも595C Turismoにはなくて、屋根が開くこととどっちを優先しようか、かなり悩みました。ただ、今住んでいるこのあたりは気候がすごく良くて空も青いものですから、こういう環境の中をオープンで走れたら楽しいだろうな、と。Make Your Scorpionで黄色を選べたのも大きかったですね。アバルトの歴史や伝統よりも、黄色くて屋根が開く、ということの方が重要だったかもしれません(笑)」

奥さまが購入を後押し

はじめてショールームに行かれて試乗されたときには、どんなふうに感じたのでしょう?

「乗った瞬間に“これだ”と感じましたね。仕事柄、毎日元気でいられるわけでもないんですけど、このクルマはものすごく自分のことを元気にしてくれそうだって。思ったとおりに動いてくれるところとか、アクセルを踏んだ瞬間にピュッと出てくれるところとか、エンジンの音だとか、かなり刺激的でした。小さいわりにはしっかりしていて安定感もあって、想像していたほど乗り心地も硬くはありませんでした。印象はものすごく良かったんです。それに、僕は昔から時計やバッグのような持ち物も、質が良くて普遍的なものをできるだけ長く大切に使いたいっていう考えを持っていて、クルマに対しても同じように感じていたんです。ありふれていない、知る人ぞ知るブランドであることや、幼い頃からずっと憧れているスーパーカーを生んだ国のスポーツカーに乗ってみたいという気持ちもありました。ショールームでデザインを細かいところまでじっくり見て、シートに座っていろいろなところに触れてみて、実際に走ってみて、そういうことのすべてがしっくり来て、595C Turismoを選ぶことにしたんです。ただ、自分だけ楽しい想いをしていいのかなって、迷うところはありましたね。けれど妻が後押ししてくれまして……」


595C Turismoの購入に心が傾いている時に、そっと背中を押してくれたのは奥さまの一声だったそう。

「そんなにかっこいいことでもなくて、それで仕事のモチベーションが上がるんだったらいいんじゃないかな、って思ったんですよ。主人にはいつも元気でいてほしいので」

そして高取さんご夫妻は、2019年のMake Your Scorpionで595C Turismoをオーダーします。ちひろさんが“私も昔の黄色いクーペが好きだったので、ふたりとも色は妥協できませんでした”ということで、ボディカラーはイエロー。そしてキャリパーの色と幌の色、インテリアの色をふたりで相談して決めたのだそうです。

「色のセンスとかは妻の方がいいので、そこもずいぶん助けてもらいました。内装の色は黒だと締まりすぎちゃうからブラウンで、とか。おかげでとても気に入った仕様ができましたね」


ボディカラーとインテリアカラーの組み合わせを自由に選べる期間限定のキャンペーンMake Your Scorpionを生かし、イエローのボディカラーにブラウンの内装が組み合わされた高取さんの595C Turismo。

まだまだ本領発揮前

2020年の5月、おそらく日本にはそうはない仕様の595C Turismoが納車になります。普段はどんなふうに使っているのでしょう?

「休日に子どもたちとどこかに出掛けたり、僕は温泉が好きなので日帰り温泉に行ったり。主に休日を楽しむために使っている感じですね。仕事柄、まだ県外に出ることがなかなかできないので、近くばかりですけどね。だからまだ7000kmくらいしか走ってないんですよ。僕はひとりで走りに行くようなこともほとんどしませんし、クルマを見ているだけでもチョイ乗りしてるだけでも割と満足できちゃうようなところがありまして(笑)」


高取さんのお気に入りは、ディフューザー形状が採用されたリアビューの眺め。

「主人がお休みの日は子どもたちがお父さんと一緒にいたいので、どうぞどうぞ、行ってらっしゃい、っていう感じですね。アバルトでは、まだ夫婦でどこかに出かけるっていうのをしたことがないんですよ。あと何年かして子どもたちだけで留守番できるようになったら、って待ち遠しい気持ちですね」

そういえば、ちひろさんはアバルトに乗ることはないのでしょうか?

「実は乗ります。たまにですけど(笑)。納車になってからずっと“ちいちゃんも運転してみなよ”って言ってくれてたんですけど、なかなか思い切れなかったんです。ギアを変えるところのボタンとか、間違えそうで怖くて。でもミニバンを修理に出したときにアバルトを運転せざるをえなくなって……。ドキドキでしたけど、乗ってみたらすごく楽しかった(笑)。ちょっとアクセルを踏んだだけでグッと加速するし。それにエンジンの音、私も大好きなんですよ。すごくかわいいクルマだな、って思います(笑)」

「妻と一緒のときには髪が乱れるのであまり屋根を開けることはないんですけど、このクルマに乗るようになってから、木々の色とか空気の匂いとか、自然の移り変わり、季節が変わっていく様子のようなものを、よく感じるようになりましたね。それはとってもいい気分転換になります。それと職場のまわりの方が興味を持って、いろいろ訊かれる機会ができました。あまり接点がなかった他科の先生との会話も増えて、以前より業務が円滑になったことも感じています。嬉しいですよね」

モチベーションの原動力に

とはいえ、今はまだ未曾有といえる感染症流行の真っ直中。医療の現場はかなり厳しそうです。

「そうですね。病院の中は、今も大変です。二次災害、三次災害のようなことも、現実に起こっています。僕の科は感染症に直接携わるわけではないけれど、同じ病院内ですから、どこかに接点が生じる可能性は少なくありません。病院全体、世の中全体の問題ですからね。ワクチンが普及する前は、私たち医療者も一般の方々と同じように、今後どうなっていくんだろう?と強い不安を感じていたところがありました。接種が進んで感染者も減ったように見えます(註:取材時はまだオミクロン株が猛威をふるい始める前でした)けど、まだ今後がどうなっていくかはまったく予断を許しません。その状況が2年続いてます。皆さんもそうでしょうけど、医療の現場も、頑張っていても消耗はします。僕個人としても一昨年、昨年と、日常的にこれまでにないくらいの緊張感の連続で、気持ちが不安定になりそうなこともありました」

と、やはり医療関係の方にとってかなりの負担となっている模様。お気持ちをお察しします。

「やりがいはありますし、嫌だと思ったことは一度もないですけど、仮に感染症がなかったとしても、仕事になるとどうしても厳しいことが多いですね。自分の専門分野においては研究でわかってきたこともいっぱいあるんですけど、なぜその病気が発症するのかとか、完全にはわかっていないこともまだまだ多いんです。でも実際に治療によって病気がよくなる方が今はいっぱいいますから、患者さんの笑顔を見るのがいちばんのモチベーションになりますね。それに加えて家族がいて、一緒にアバルトでどこかに出掛けられるっていうのが、かなりいい気分転換になってくれています。自分自身の精神の平穏を保つ助けになってくれて、モチベーションをさらに高めてくれるところがありますね。5分乗るだけで気分が変わりますから。眺めているだけでも、エンジンの音を聴くだけでも、リフレッシュできるくらいです」

自分仕様の595C Turismo、いつまで乗り続けますか?

「とても気に入っていますから、乗れなくなるまで乗りたいな、とは思ってます。でも、黄色の595C Turismoのマニュアルが設定されたら、買い換えたくなっちゃうかもしれませんね。自分にとってまさに理想のアバルトなので(笑)」

ちひろさん、そのときになったら後押しなさいますか?

「それがいちばん欲しいものなのだったら、もちろんです(笑)。だって主人が厳しい想いをしながら頑張って働いてくれてるんですから。おかげで私たち家族は今だって十分に幸せに暮らしていられるんです。どうぞどうぞ、っていう感じです」

繰り返しになりますけど、なんだかとってもいい感じ、なのです。宏昌さんが席を外しているタイミングでちひろさんにお話をうかがっているときも、流れの中に“私は主人を尊敬しているので”とか“運転してるときの主人の横顔がとてもかっこいい”とか、そうした言葉が嫌味なく自然に織り込まれていたりしました。そして言葉にすることはあまりありませんが、そういうちひろさんを常に優しく温かな眼差しで見ている宏昌さん。高取さんファミリーはアバルトの存在を抜きにしても、ちひろさんのお言葉どおり、たっぷりと幸せなのです。そしてそれを黄色い595C Turismoが強力に押し上げている。そんな印象でした。稀代のチューナー、カルロ・アバルトのスピリットは、人の幸福までチューンアップするのかな?なんて感じさせられたのでした。
 

文 嶋田智之

595C Turismoの詳細はこちら