「広尾の交差点を颯爽と駆け抜けたい」女優 高橋ひとみさんのアバルトとの日常

1月の渋谷・松濤。695C リヴァーレの運転席から降りてきたのは、女優の高橋ひとみさん。凛としたエレガントな佇まいで、にこやかに微笑む。自然体な語り口でスタッフの緊張をほぐすと、愛車のアバルトについて気さくに話してくださった。

縁が結んだ出会い

「一目惚れでした! 小さくてカッコいいクルマを探していたら、このアバルトに出会ったんです」

高橋ひとみさんが運命の出会いを果たしたのは、695C Rivale(リヴァーレ)。日本ではわずか150台しか販売されなかった限定車である。しかも、オープンモデルはそのうちの65台という希少なモデルだ。

「ネイビーのホロがいいですよね。普通の屋根とはちょっと違います。室内も素敵なんですよ。シートの形がスポーツカーっぽいでしょ。革の感じが高級です。ウッドパネルも使われているんですよ」


アバルトに乗っていらっしゃるということで、Abarth Scorpion Magazineへのご登場をお願いしたところ、快く応じて下さった女優の高橋ひとみさん。愛車は695C リヴァーレ。

695Cリヴァーレは、イタリアの老舗ボートブランド「リーヴァ社」の最新鋭56フィート・フライブリッジボート「リヴァーレ」からインスピレーションを受けてデザインされている。ボディカラーはBicolore Blu / Grigio Rivaのツートーンで、アクアマリンのアクセントラインが鮮やかだ。ダッシュボードやステアリングホイールの一部には、マホガニーがあしらわれている。


695C リヴァーレの真骨頂が、ゴージャスな雰囲気を高めるマホガニーのウッドパネル。イタリアの老舗ボートブランド、リーヴァ社とアバルトがコラボし、名声の高いクラフトマンシップの粋がアバルトに注がれた。

実は、最初に目に留まったのは別のモデルだった。2013年に発売された695 エディツィオーネ マセラティである。

「ボディカラーが紫で、すごく品があっていいなって思いました。でも、聞いてみたらだいぶ前のモデルで。ちょっと自分では扱えないかと思って諦めました」

そこに現れたのが695C リヴァーレ。知り合いの方が乗っているのを見て気に入ったのだが、こちらも2018年に発売された限定車だからすでに完売している。ガッカリしていたら、夢のような言葉をかけられたという。

「譲ってもいいよ、とおっしゃったんです。ほかにもたくさんいいクルマを持っている方で、私が欲しそうにしているのでかわいそうになったのかも(笑)。まだ3500kmしか乗っていなかったからピカピカ。お言葉に甘えて、2021年の11月に譲っていただきました」

ご主人もモモエちゃんもクルマが大好き

高橋さんは695C リヴァーレのデザインに惹かれて購入を決意したわけだが、エレガントな見た目からは想像できないハイパワーな心臓を持つ。1.4リッター直4ターボエンジンは、最高出力180ps、最大トルク250Nm。ということは、高橋さんはアグレッシブな運転をするタイプなのだろうか。

「全然。前にドイツのスポーツカーに乗っていた時、高速道路でパトカーに“危ないのでもっと波に乗って走ってください!”と注意されたことがあります(笑)。慎重派で、いつも安全運転なんですよ。でも、やっぱり馬力があったほうが便利。坂道で下がってしまうことがないし、段差もシュッと上ってくれますから」


これまで数々のクルマを乗り継いでこられた高橋ひとみさん。旦那さまの影響でアバルトに乗るようになり、そこからアバルト愛は急激に深まっている様子。

以前はドイツ製のスポーツカーやステーションワゴンに乗ることが多かったが、イタリア車の魅力を知ることになった。2013年に結婚して、イタリア好きのご主人から感化されたのだそう。

「結婚していなかったら、アバルトに出会わなかったでしょうね。主人は28年間ずっとペーパードライバーで、なんで私ばっか運転するんだろうって思っていました。そう言ったら、大きいのは無理だけど、小さいのならって。主人はクルマの知識はすごいんですよ。それで、影響されちゃいましたね。勧められて買ったのがフィアット 500 クレマ カフェ。これも限定車で、カフェオレみたいな色でした」

夫婦とどこに行くにもいつも乗っていたのが、愛娘犬のモモエちゃん。ゴールデンレトリバーで、14歳になる。


高橋ひとみさんの愛娘犬モモエちゃんと。一緒にいられる時間はいつも一緒。アバルト松濤内のフィアットカフェはワンちゃん連れもOK。一緒にカフェタイムを楽しんだ。

「いつも後席に飛び乗っていたんですよ。ペットシートカバーを取り付けるとちょうどすっぽりハマるんです。窓を開けると風があたって気持ちよさそうにしていましたね。アバルトにも乗せたいんですが、後脚を悪くしてしまって、難しくなってしまいました。ほかのクルマだとあまりうれしそうじゃないので、モモエもアバルトに乗りたいんだと思います」

ロケ現場へもアバルトで

19歳で運転免許をとってから、ずっとクルマのある暮らしを続けている。どこにでも運転して出掛けていく。仕事でも、それは変わらない。

「ロケとか稽古場とかも、いつもクルマです。ほかの役者さんは事務所のクルマでいらっしゃることが多いですね。ロケだと、山梨とか群馬とかだったら、自分で運転していきますよ。695C リヴァーレを買った時はまわりからセカンドカーですか、と言われたけど、遠いところだって大丈夫。小さくたって困ることはありません」


心が通じ合った高橋ひとみさんとモモエちゃん(左)。アバルト松濤のスタッフの方が運んでくれたカプチーノには、素敵なラテアートの演出が!(右)

都内での移動では、小さいことがむしろアドバンテージになる。大きいクルマのほうが不便なのだ。

「劇場の稽古場とかだと、駐車場に大きなクルマが入らないことが多くて。アバルトならどこでも停められます。駐車場で悩むのは嫌なんですよ。自宅の駐車場も狭いので、大きいクルマだと何度も切り返さなくてはならないんです。アバルトは駐車が楽。小さければいいというわけではなくて、サイズが小さくてカッコいいという条件だと今ではなかなかありません」

何台ものクルマを乗り継いできた高橋さんには、選ぶ際にはっきりした基準がある。

「まずは、見た目ですね。あと、壊れないこと。パワーがあって、安全であること。695C リヴァーレはパーフェクトですよね。小さくてもちゃんと4人乗れますし」

アバルトの歴史やメカニズムについては、あまり興味がないという。カルロ・アバルトという名前も知らなかった。

「そういうことは主人が詳しいんです。さそり座だから、それでアバルトを勧めたのかな。でも、主人は運転はうまくないんですよ。このクルマにも乗りたいと言いながら、馬力があるから怖いって言うんです(笑)」

絶対手放さない

高橋さんは1983年のドラマ『ふぞろいの林檎たち』で鮮烈な印象を残した。ボブカットのミステリアスな美少女を演じていたのを覚えている人は多いだろう。ほかにも伝説として語られているシーンがある。1987年の映画『私をスキーに連れてって』で見せたドライビングだ。ドアを開けて雪面を指で触り、「凍ってるね」と言ってニヤリと笑う。

「今でも冬になるとよく言われるんですよ。でも、あれはスタントの方がロン毛のかつらをかぶって運転していたんです。私は発進したぐらい。ドリフトしたり飛んだりするところは、もちろんプロの方がやっています」


クルマ好きの心を鷲掴みにした映画『私をスキーに連れてって』にて、雪道で華麗なドライビングを披露したカッコいい女子、羽田ヒロコを演じた高橋ひとみさん。でも実際にはマニュアル車が得意ではなく、普段の運転もスピードを出さずマイペースで楽しんでいるという。

それ以来、ドラマや映画でクルマに乗ったことはほとんどないという。規制が厳しくなり、役者が自らステアリングを握ることが難しくなっている。

「万が一のことを考えて、運転はダメということに。公道での撮影許可が降りなくなってきていますしね。運転するシーンがあっても、実際には牽引されていることが多いんです。もしアバルトに乗る役があれば、負けないぐらいカッコいい役がいいですね」

現在放送中のドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』では、林遣都が演じるIT企業社長の母親役。残念ながら、クルマを運転するシーンはないらしい。

「最近はカッコいい男の子のお母さん役が多いんですよ。映画『あのこは貴族』では高良健吾さんのお母さんでした。最近はおばあちゃんの役を演じることもあるのですが、昔と違って今のおばあちゃんは若々しい。サザエさんのお母さんのフネはずいぶん老けていましたけど、今は違います。将来は、カッコいいおばあちゃん役をやりたいですね」

若い頃は、おばあちゃんになったら髪を紫に染め、広尾の交差点をスポーツカーで駆け抜けたいと思っていたそう。


ドライビンググローブを身につけ、695C リヴァーレを駆る高橋ひとみさん。その姿は、雪道を疾走する映画のシーンを彷彿とさせた。

「695C リヴァーレは音がいいんですよ。乗るたびに、自分カッコいいんじゃないかと思ってしまいます(笑)。一生乗り続けます。絶対手放さない!」

10年後、広尾の交差点を颯爽と走る695C リヴァーレを見たら、それは高橋さんかもしれない。

文 鈴木真人 写真 荒川正幸

高橋ひとみインスタグラム:hitomi_momoe
撮影協力=アバルト松濤
衣装協力=PYRENEX(ピレネックス)/HARIO Lampwork Factory


 

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