「自分たちのスタイルで楽しむ、その延長線上にアバルトがあったんです」 アバルトライフFile.39 ほうやさんご夫妻と595C Turismo

家族をつなぐお茶の時間

「アバルトは仕事にも乗っていきます。空港まで1時間ほどかかりますけれど、疲れることはないし、十分実用性もあります。小さな問題点を挙げることもできますけど、そんなものはどうでもいいやって思えます。それに勝る自分たちにとってもっと大事なものをこのクルマは持っていますので」

そう話してくれたのは、パイロットを務めていらっしゃる、ほうやさん。トラベルライターの奥さまと共に愛用されている「595C Turismo」についておうかがいしたときの回答です。ほうやさんはご子息も航空会社に就職され、現在は海外へと渡り、パイロット訓練生として日々励まれているところ。ご子息を立派に育てあげられ、いまは夫婦二人で愛犬のルスカちゃんと一緒に生活を楽しまれています。息子さんにとってパイロットは子どもの頃からの夢だったのですか?


595C Turismoのオーナーであるほうやさんと奥さま。

ほうやさん
「いや、就職間近になるまで聞いたことがなかったです。職業選択の時に自分で選んだのだと思います。こちらからなるように言ったことは一度もありません。なんでも好きなことをやればいい、と思っていましたので」

奥さま
「息子は大学生の時に、グライダーで空を飛んでいましたので、おそらく空への憧れはあったのだと思いますけど」

ご両親が導かれたわけではなく、ご自身の意思で決められたんですね。息子さんからパイロットになりたいと聞いたときはどんな気持ちでしたか?

ほうやさん
「とくに嬉しいとかそういう感情はなかったです。大変だからがんばってね、という感覚でした。どの仕事を選んでも大変なことはあると思いますが、それは自分で乗り越えてね、という感じですね」


パイロットを務められているご主人。ご子息に同じ道を勧めたことはなく、進路の話をしたこともないと言いますが、それでもご子息は自らパイロットを志し、現在は訓練生として海外で勉強中といいます。

息子さんが就職され、これからはそれぞれやりたいことを楽しみながらご夫婦で楽しく過ごしていこうと、そういう感じですか?

ほうやさん
「妻は寂しがっていますけどね」

奥さま
「子どもが巣立ってしまったのは寂しいですね。就職が決まった途端に寮に入ってしまい、ある日突然、海外に行くことが決まったと告げられて。心の準備ができる間もなく突然環境が変わってしまったので。うちは家族3人で仲がいいんですよ。独りっ子で、3人だとIt’s a small Worldで、喧嘩しっぱなしだと辛いので。何かあってもお互い仲直りしていくというのはありますね。これは主人の父から言われたことですけど、“人の命を預かる職業なので、喧嘩しても仕事の前日までには仲直りしてほしい”って。そこは心掛けていますね」


旅行が共通の趣味というほうやファミリーですが、最近は海外へは行けないため、日帰りできる範囲でワンちゃんのルスカちゃんとのお出掛けを楽しまれているようです。

お二人の仲がいいのはとてもよく伝わってきます。一方、奥さまも仕事をされていますし、旦那さまもパイロットという職業柄、出張続きだと思いますが、一緒にいられるときはなるべく一緒に過ごすように心掛けていらっしゃるのですか?

ほうやさん
「僕は休みの日も全然仕事しないわけではなくて、次のフライトの準備もしないといけないし、それぞれにやることはありますので、ずっと一緒にいるということはないですね。でも、お茶の時間には集まって会話をするようにしています」

奥さま
「私たちお茶の時間をすごく大事にしているんです。それぞれ家で他のことをやっていても、朝10時と午後3時には集まって一緒にお茶を飲むようにしています。北欧ってそうなんですよね。フィーカという習慣があり、ホッと一息つく時間を大切にしている。それを真似しているわけではないのですが、お茶の時間を持つようにし、家族でその時間を楽しんでいます」


お茶の時間を大切にされているというほうやファミリー。今後は資格も習得されたテーブルスタイル茶道により、出先でもお茶を楽しもうと考えているそうです。

形式にとらわれず本質を楽しみたい

トラベルライターとして活躍される傍ら、オリジナルの食器を作るポーセラーツのインストラクターや、テーブルスタイル茶道の講師としても活動されている奥さま。活動の幅は広いですが、すべてお茶を軸につながっているようです。いま注力されているテーブルスタイル茶道というのは、どのようなものなのでしょうか?

奥さま
「表千家でも裏千家でもない、テーブルスタイル茶道というのがあるんですけど、その資格を取ったんです。私はもともと中国茶が好きで、最初は日本でお茶の資格を取ろうと思って教室に通っていたんです。その時には、お茶を何度で淹れてとか、カテキンが何%とか、そういう科学的なことも勉強していました。でも台湾に行ってお茶の教室に通っていた時期があるのですが、そこでは科学的なことは一切ナシで、“おうちで美味しいお茶を淹れたら、離婚ってしないですよ”て言われたんです! “美味しいお茶があれば、旦那さんはまっすぐ家に帰ってくる”って。それを言われた時に、カテキンが何%とかそういうことは頭から全部吹っ飛んでしまって、コレだ!と思ったんです。そういえば母もそうだったなと。うちは贅沢していたわけではないのですが、お茶などはすごくいいものを飲むことを習慣にしていたんです。台湾の先生というのは日本統治時代に幼い時期を過ごされていたご年配の方だったんですけど、いまの日本は食事の後にちゃぶ台を囲んで、家族でお茶を飲む時間がなくなってしまったことを指摘されていました。“お母さんが淹れたお茶を飲みながら、今日どうだったとか家族で話す。そういう時間を持てば家族も変わるよ”って。うちの子がまだ小さい時にそれを言われて。すごく納得したんです。それ以来、食事の後に家族3人でお茶を飲みながら話すようになりました。食べ終わってご馳走さまってすぐ席を立つのではなくて、ちょっと話をするんです。もしかしたら家族の仲がいいのもそれが理由なのかもしれません」

お茶そのものを楽しむというより、習慣として、あるいは生活スタイルとしてお茶の時間を楽しんでいらっしゃるのですね。それも形式に囚われるのではなく、本当にお茶が好きで、本質的なところを楽しもうという。

奥さま
「浴衣もそうじゃないですか。一時は日本で着る人が減りましたが、いまは若い子がレースを覗かせたりとかして、もっとカジュアルに着ている。カフェオレを飲むような感じで。それと同じように抹茶を楽しむことができたら、世界の人とつながるコミュニケーションツールにもなると思うんです。お茶には本当に色々な形式や決まりごとがあり、お茶を点てる人と、いただく人という分類がありますけど、でも本当は誰もがお茶を点てる人になれるんです」

なるほど、お茶を楽しむ。そこには様々な想いや、ご家族のストーリーが含まれているのですね。

ほうやさん
「色々なこととつながっていますね。いつも3時になると妻からお茶のご招待をいただくんです(笑)」


テーブルスタイル茶道で実際にお茶を煎れていただきました。お茶を尊び、心を込めて淹れている姿が印象的でした。

いまはお二人の趣味である旅行には行くことができない時期だと思いますが、そのぶんクルマで出かけることは増えましたか?

奥さま
「日帰りで行ける範囲か、犬と一緒に泊まれるところを見つけて行くことが多いですね。犬と行けるカフェは結構回っています。コーヒーも好きですし」

ほうやさん
「本当はもう少し足を延ばしてみたいんですけどね。いまはご時世的に行けないので。落ち着いたら京都など近畿エリアでも犬と一緒に泊まれるところを探して行ってみたいと思っています」


二人に大切にされているルスカちゃん。

自分たちの感覚に従って選んだのがこのクルマだった

アバルトを乗るようになったきっかけを教えてください。

ほうやさん
「もともとフィアット・チンクエチェントに乗っていて、もう一台、スウェーデンのクルマを所有していたのですが、息子が海外に行くことになったので、では1台にしようとなったんです。うちは前の道が狭いので大きいクルマにはしたくなく、でも小さいクルマを探してみると、それほど乗ってみたいと思えるクルマが見当たらなくて。それでチンクエチェントの車検を通すかどうかを考えていたときに、ショールームでそんな話をしたら、“じゃあ、アバルトに乗ってみますか?”と聞かれて。それで乗せてもらったら面白かったんです(笑)」

595C Turismoに乗られていますが、他のグレードは考えなかったですか?

奥さま
「ショールームの中にいたとき、担当の方が持ってきてくれたのが白い595C Turismoだったんです。それが突然目の前に現れたとき、ビビッときたんです。自分がそれに乗って旅するイメージが湧いてきて。後から冷静に見たらトランクも広くはないし、本当に旅に向いているかわからないんですけど(笑)、でも乗ってみて、シートの硬さとか屋根が開くところとか気に入りました。もともと旅人なので自分の中で旅するイメージができ上がってしまったんです」


奥さまは595C Turismoの全体の雰囲気や綺麗な内装を気に入っているそう。

ほうやさん
僕は走りの性能がすごいクルマを求めているというわけではないので、ベースモデルでも十分面白いと考えていたのですが、やはり屋根が開く方がいいというところで。カタログを見た程度であまり深く研究せずに決めました」

決めるまでは早かったですか?

ほうやさん
「早かったですね。試乗して家に帰って一度話をして、数日内にもう一度ショールームに行って、今度はうちの前の駐車場に入ることを確認して、そのあともう一度ふたりで話し合いをして決めたという感じでした」

奥さま
「いつもそうなんです。主人はこれだと思った時は、他のをいくら見ても、それが一番いいっていう理由を探すためにしか他のものを見ていない人なんです。私もそういうところありますけど、これがいいって思ったら、もうそれだなと思ってしまうので」

アバルトの面白さってどういうところでしょう?

奥さま
「私は内装が綺麗なクルマが好きなんです。クルマは中で過ごす時間の方が長いので。アバルトはエンジンかけたときにメーターに出るグラフィックとか、ああいうのがすごく好きですし、乗った感じもシートの硬さや振動の伝わってくる感じとか、感覚的に肌にあっていると思います」


色々な国のクルマに乗り継いでこられたというほうやファミリー。そうしたなかアバルトは、運転しているときの感覚や世界観が自分たちの求める価値観によくフィットし、気に入っているそうです。

ほうやさん
「なんと言ったらいいでしょうね。基本的にアバルトって、近年のクルマに備わっている最新のものはあまり付いていないじゃないですか。前のクルマには自動追従機能とか衝突軽減ブレーキとか、危険を通知する機能とかがありました。アバルトにはそういうものは付いていないけど、でも乗っていてとにかく楽しい。クルマはこれでいいんだなって、そう思わせてくれるところがあると思います」

北欧の文化や食器も好きとおっしゃっていたので、スウェーデンのクルマに乗っていたというのもわかります。それに対してアバルトはイタリアのクルマですが、イタリアっぽい魅力を感じるところはありますか?

ほうやさん
「もともと映画の『グラン・ブルー』が好きで、ジャン・レノが乗っていたフィアット500のイメージや、ルパン三世などもそうですけど、あの世界観。乗っている人が皆楽しそうで、人を元気にしてくれる感じがいいですね。“俺はこのクルマが好きなんだ。この感じが好きなんだ、文句あるか”みたいなところに惹かれます。アバルトは小さな欠点を挙げることもできますが、自分たちが気に入っているところの大切さを考えれば、それ以外のものはさしたる問題じゃないと、そんな風に思います」


奥さまは屋根を開けて走るのが好きなようです。夕焼けや虹などが視界に飛び込んでくると、このクルマにして良かったと実感されるのだとか。

それぞれご自分のスタイルを持っていて、アバルトがそこにスーッと入りこんでいる感じがしますね。最後にそれぞれの挑戦を教えていただけますか。

奥さま
「今はテーブルスタイル茶道の資格をとったばかりなので、いろいろなところでお茶を点てたいと思っていまして、旅とお茶のコラボをこれからの人生のテーマにしたいなと思っています。それが挑戦ですね。ゆくゆくは海外に行けるようになったら、抹茶とかほうじ茶を、日本と世界の人たちをつなぐツールにできたらいいなと思っています。世界にお茶を持って行き、相手の方の雰囲気にあう茶器で淹れてあげたりして、お茶を媒体に人とのつながりを持てていけたらいいですね」

ほうやさん
「仕事の話になってしまいますけど、会社で後輩を育てる部署にいるんです。いわゆる教官という立場なんですけど、いま入ってくる訓練生は、自分の息子と同じぐらいの年齢なんですよね。そういう子たちにこの仕事の楽しいところを教えてあげたいと思っていて、それをどうやって教えたらいいのか、ということをすごく考えていますね。訓練生は勉強しているか寝ているかのどちらかというような生活を2年や3年、ずっと続けていくので大変なんです。そうしたなかで楽しいところも見せてあげたいと思っています。そのためには一昔前のような、いわゆる怖い教官だけではダメだと思っています。飛行機の機能もどんどん新しくなっていくし、飛ばし方やコミュニケーションの取り方もどんどん新しくなっています。自分も若い子たちから刺激を受けながら、自分を超えるパイロットに育てていく。それが挑戦ですね」

責任の重い仕事をやりながら、それを負担と思わずチャレンジし続けている旦那さまと、ご自身のやりたいことと同時に家族との時間を何より大切にされている奥さま。人生をとことん楽しまれているようですが、その幸せは天から降ってきたのではなく、自ら作り上げているもの。そんなことを改めて実感させてくれたほうやファミリーなのでした。

文 曽宮岳大

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