りんご先生の運転お悩み相談室 第2回「ペダル操作のコツと練習法」

「SCORPIONNA DRIVE for WOMAN(スコーピオンナ・ドライブ・フォー・ウーマン)」のインストラクターで、ドリフトクイーンでもあるプロドライバー、“りんごちゃん”こと石川紗織さんにドライビングのコツを教わる『りんご先生の運転お悩み相談室』。第1回目は、ドライビングに適したシューズ選びについてでした。今回は、ペダルを正しく操作するコツとそのトレーニング法を教わります。

どんなときでもデリケートに操作することが大切

──クルマを加速させるにも減速させるにも、まずはペダル操作から、ですね。

そうですね。何も気にしなくてもアクセルペダルを踏めばクルマは前に進むし、ブレーキペダルを踏めばクルマは停まります。でも操作の仕方ひとつで、クルマはスムーズに動いてくれもするし、ギクシャクしちゃったりもするんですよね。軽く考える人もいますけど、例えばサーキットを速く走りたい、コーナーをきれいに曲がりたいっていうときにも、ペダル操作が上手にできているかどうかで、大きな差が生まれます。


運転が上手な人ほど、細かいペダル操作を心掛けているもの。上手なペダル操作をマスターして滑らかに走れるようになりたい。

──操作するときには、どんなところに注意すればいいのでしょう?

まずはペダル操作がちゃんとできるドライビングポジションをとることが大切ですね。ペダル操作がスムーズにできない人って、ペダルが身体に近すぎたり逆に遠すぎたり。ここがちゃんとできてないことが多いんです。近すぎると足首や膝の動きが窮屈で、微妙な操作ができなかったり踏み換えにくかったりするし、遠すぎるとペダルを爪先で踏むようになっちゃうから、やっぱり細かい操作がしにくくなる。それでは上手に操作することはできません。

2ペダル(アクセルとブレーキペダルのみのクルマ)の場合は、右足でブレーキペダルを力一杯踏んだときに、膝が少し曲がるくらい。膝がいっぱい曲がっちゃったら近すぎるし、膝が伸びきっちゃったら遠すぎる。

3ペダルの場合は、クラッチペダルをしっかり踏みきれる位置に調整すると、自然とブレーキやアクセルペダルもちょうどよくなると思います。もしブレーキが近すぎると感じたら、クラッチをちゃんと踏みきれる範囲で少し後ろに調整するなど、操作しやすいポジションを見つけましょう。


まずはペダルを適切に操作できる位置にシートを調整しよう。写真は、りんご先生にサーキット走行時のポジションをとってもらったもの。ポジションが最適だとハンドル操作もしやすい。

そうすると足の動きに無理がなくて、自然に操作できるようになるはずです。だから、まずは足のポジションをしっかり作って、それからステアリング操作をしやすいように背もたれを調整する、というのがいいと思います。ここがスタートラインですね。

──実際にペダルを踏むときに、どんなふうに足を動かすのがいいとか、ありますか?

言葉にするのは難しいんですけど、関節を軸にして踏まないこと。例えば、足首の関節を軸にしてペタッペタッて踏んだり、膝の関節を軸にしてグイッグイッと踏んだりするのはNGです。足の指の付け根あたりをペダルにしっかり触れさせて、カカトはフロアにつけた状態で、指の付け根にチカラを入れるその加減で踏み込み具合をコントロールする、というようなイメージを心掛けていると、足全体が自然にちょうどよく動いてくれるようになると思います。指の付け根を意識しながらペダル操作するのが、デリケートにペダルにチカラを伝えたり抜いたりするコツですね。


ペダルの踏み方は、カカトを床につけ、指の付け根に込めるチカラ加減で踏み込み量を調整するイメージ。

ペダルは、どんな場合にもデリケートに操作することが大切です。例えばアクセルペダルをまったく踏んでない状態を0、全開が10だとしたら、いきなり5のチカラで踏み込んだりするのではなくて、0から0.5、1、1.5、2、3、5……という具合にていねいに踏み込んでいく。それもカクカクと段階的にチカラを入れるんじゃなくて、スムーズに無段階にチカラを入れていく感じで。ペダルはスイッチではなく、0から10までの間、自分の操作の仕方次第で無限に調整できるものですから。

だから抜いていくときも一緒。アクセルだけじゃなくて、ブレーキも同じです。例えば停まるときに、ペダルを踏んでいるチカラを一定に保ったまま速度を落としていって停止するように心掛けるとか、そういう練習を常にしていると、ガクガクしないでスムーズに停まれるようになっていきます。

反復練習で身体に覚えさせれば、自然にできるようになる

──ということは、街中を普通に走っているときにも練習できるわけですね?

というか、走らなくてもできる運転の練習って、たくさんあります。それも、とっても効果的な練習法が。実は今回、それをお伝えしようと考えてたんです。

まず、踏み込む前にペダルに足を載せるでしょう? 実はその瞬間に踏み込もうとする人が多いんですよ。ペダルに足の裏が触れる瞬間は、踏み込むチカラは0であるべきなんです。足の裏をちゃんとペダルに密着させて、0の状態からスムーズに無段階にチカラを入れていくのが正しい操作です。ペダルに足が密着する前から踏み込む動作をするっていうのは、蹴るのと一緒。微妙な踏み込み方はできません。それだと、もちろんクルマはスムーズに動いてはくれません。


アクセル操作は、足の裏をペダルに付けた状態にしてから、ジワリと踏み込んでいくイメージ。ブレーキから踏み替えた足で、いきなりアクセルを踏み込むとガクッとした動きになってしまう。

だから、ペダルに足を載せる瞬間の練習からはじめるといいと思います。この練習は、エンジンをかける必要はありません。ブレーキをしっかり踏み込んだ状態からアクセルに足を移します。そこではアクセルを踏み込んだりしないで、足の裏をちょうどいい具合に、ペダルにちゃんと密着させるだけ。逆にアクセルからパッとブレーキに足を移すときも同じです。ペダルに足がちゃんと密着してるけど踏み込み量は0、という状態で止める。それをパッ! パッ! と何度も繰り返します。ペダルを踏み換える練習ですね。これ、単純なようですけど、実は効果絶大なんですよ。上手にできるようになると、加速や減速の時にガクガクしたり、いわゆる“急”な感じの動きにならないで、スムーズにクルマを走らせられるようになっていきますから。

ここで2ペダル車に乗る人に注意していただきたいのは、本人がまったくそうは思ってなくても、ちょっとダラ〜ッとした姿勢になっていることがあります。3ペダルの場合にはクラッチを踏まないといけないわけだから、自然とペダルに対して身体を正面に向ける姿勢になるんです。でも2ペダルは基本、右足だけなので、ちょっと斜に構えた感じの姿勢になりがち。なので、フットレストをしっかり左足で踏んで、身体を正面に向けた姿勢をとることを意識しましょう。


正しい運転姿勢を取ることも忘れずに。

──デリケートなペダル操作をするには、まずは“0”の状態を身体で覚えることが大切、っていうことですね。

そのとおりです。それができると、次のステップも生きてくるんですよ。
次はエンジンをかけての練習なので、他の方の迷惑にならないように場所を選ぶ必要があるんですけど、同じく走らないでできる練習のひとつです。ちゃんとサイドブレーキをかけてギアはニュートラルにしたままにして、アクセルを踏むだけの練習です。これも単純に思える練習なんですけど、実際にやってみると、思っていたより難しいって感じるかもしれませんよ。


狙った通りのエンジン回転数でピタリと止める。りんご先生も実際に積んだトレーニングなのだとか。

まずはペダルに足を載せて0の状態にします。そこからグッとアクセルを踏んで、ピッタリ3000回転でとめます。次は3000回転をキープした状態からまた踏み込んで、今度は5000回転でとめます。そして、そこからチカラを抜いて3000回転に戻す。エンジンの回転数を、狙ったところへ瞬間的にパッと合わせる練習です。これはいろんな回転数にパッ! パッ! と一瞬でできるようになるくらいまで、繰り返し繰り返し練習する方がいいですね。私もずいぶんやりました(笑)。

──3ペダルの場合には、クラッチをスムーズにつなげない、と悩む人もいそうですね。

クラッチ操作についても、いい練習方法はありますよ。アイドリングのままクラッチミートして発進するという、上級者からも一目置かれる発進ができるようになる方法が。エンジンをかけて、ギアを入れて、実際にクラッチペダルを操作するので、広い場所で前方に何もないことを確認しながらすることが絶対、です。


マニュアル車の場合、スムーズな発進には繊細なクラッチ操作が必須。アクセルを踏まず、クラッチのリリースだけで発進できることを目指したい。

まずはサイドブレーキをしっかり効かせた状態にしてください。その状態でギアを1速に入れて、アクセルは踏まず、クラッチペダルを踏む左足をゆっくり緩めて、リリースしていってください。クラッチがつながりはじめると、その瞬間にエンジンの回転はボボボッて落ちはじめるので、そしたらクラッチを踏み戻してください。それを何度も繰り返すと、自分のクルマのクラッチがつながるポイントと、そのときの足の感覚がわかるようになります。それがわかるようになったら、クラッチがつながりはじめるタイミングでサイドブレーキをリリースしてみてください。アイドリングのままで、クルマがゆっくりスタートするはずです。そこでクラッチが完全につながってから、アクセルペダルを0、0.5、1、2……って、デリケートに踏んでいく。それが最もスムーズで、クルマを傷めず、周りから、特に運転の上級者から“できる女”に思われる(笑)スタート方法ですね。

最初のうちは、エンストしても全然いいと思います。それと、アクセルを踏み込んでいないので、エンジンの回転を上げて発進することを繰り返すよりクラッチも減りません。クルマは想像するほど傷んだりしないから、かなりECOでもありますね(笑)。地味な練習ですけど、クルマをきれいに動かしてあげるためには効果的なステップだと思います。ぜひ試してみてください。

りんご先生の近況報告

実はちょっと前から、一生懸命、縄跳びをやってるんです。というと笑われたりすることもあるんですけど、実は結構ハードなトレーニングなんですよ。子どもの頃にガッツリできたからって、今もやれるとは限りません(笑)。最初はきっと1分も続けばいい方で、息は上がっちゃうし、ふくらはぎとかにかなりの負担がかかって、翌日には筋肉痛になっちゃったりするかもしれません。

ここしばらくはサーキットに行く機会も少なかったですけど、カートでコースを走って、カートから降りたら縄跳びを3分とか5分とかやって、少しウォーキングをしてからまたカートに乗って……みたいに、サーキットでサーキットトレーニングみたいなことをやっていました。もちろんスポーツウォッチで心拍数をチェックしながら(笑)。

今は自宅の前で、ほぼ毎日、跳んでいます。ちょっとしたスペースさえあればどこでもできるし、全身をくまなく使う運動だから、普通にピョンピョン跳んでるだけで、いいトレーニングにもなるんですよ。心拍数をチェックしながら、自分でペースを組み立てながら、楽しんでやってます。

同じ時間やるならジョギングよりもカロリーの消費も大きいから、自粛生活でついてしまったものを落としていくダイエットにも向いてるし(笑)。元手もかかりません。道具にこだわるつもりで色々チェックしましたけど、私が最終的に毎日使ってるのは、実は100均で買ったモノ(笑)。何しろ気軽にはじめられるので、皆さんも試してみてください。

■ABARTH×SCORPIONNAムービー Vol.1ブレーキ編
石川紗織選手が楽しいドライブのコツを伝授するABARTH×SCORPIONNAムービーがスタート! 第一回目はブレーキ編。あわせてご覧ください!

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文 嶋田智之