アバルトで走りたいドライブルート【芦ノ湖スカイライン(神奈川県・静岡県)】
箱根を代表するワインディングロード
日本全国いずれの地方にも、クルマで走ることの大好きな人達が“聖地”と呼ぶワインディングロードがあるようです。今回紹介するルートは、東京近郊や東海地方で広く知られる聖地であり、ワインディングロードの王道的存在ともいえる「芦ノ湖スカイライン」です。
観光地として名高い箱根エリアには、景観の美しい場所や走って楽しい道があちこちに点在していますが、そのふたつを最も気持ちよく堪能できる道が、この芦ノ湖スカイライン。芦ノ湖の西側にそびえる山々の稜線を南北に走る11km弱の有料道路で、道沿いにいくつも設けられている駐車エリアはいずれも展望に優れていて、芦ノ湖や富士山、駿河湾などを見渡すことができます。また駐車エリアが綺麗に整備されていることもあって、美しい景色を背景に愛車を撮影できるポイントも数多くあります。
が、クルマ好きとして賞賛したくなるのは、やはり道そのもの。軽く200mを越える標高差のある10km以上の区間に、登り、下り、低速コーナー、中速コーナー、高速コーナー、そしてそれらの複合コーナーがリズミカルにレイアウトされ、次々とめまぐるしく現れる地形の変化を全身で味わい尽くすことができるのです。その多彩な道の表情は、何十回、いや、何百回走っても、飽きることがありません。
クルマを操る楽しさを堪能
今回は「595 Competizione(コンペティツィオーネ)」の5速MTモデルで出掛けたのですが、2本の足で3つのペダルを踏み替えたり踏力の加減を微妙に調整したり、2本の腕でギアを切り替えたりステアリングを回したり……という“操縦”に、ついつい熱中してしまいました。こうしたコースを自分の脳と手足とをフルに駆使して走るトラディショナルな楽しさには、やっぱり格別の喜びがあるのだな、と感じさせられます。もちろんLSDのような効果を生み出してくれるTTC(トルクトランスファーコントロール)のスイッチも、“スポーツ”モードのスイッチも、ルートに滑り込んだ瞬間にON! にしています。走らせることにまつわるエンターテインメント性に優れたクルマの素晴らしさを、3分もしないうちにあらためて痛感させられました。
芦ノ湖スカイラインは、北側の東名高速の御殿場インターから仙石原を経由してアクセスする特別区間と、南側の国道1号線、箱根峠からアクセスする一般区間の2つの路線が湖尻峠で交わる構成となっていて、料金は特別区間が100円、一般区間は630円(2019年10月〜)です。路面はよくメンテナンスが行われていて、荒れている箇所はほぼなく、コンディションが良好で走りやすいです。往復1車線ずつですが道幅はそれなりに豊かで、アバルトであれば気づかいなしに走れるだけの広さがあります。
また、ルートのやや箱根峠寄りにはほぼ向き合うようにして“フジビュー”と“レイクビュー”という2軒のレストハウスがあって、食事やトイレ休憩をすることができます。ちなみにフジビューの「富士箱根・芦ノ湖カレー」は、インスタ映えすると人気メニューにもなっているようです。
気に留めて置いておきたいこととしては、まず芦ノ湖スカイラインには営業時間があって、箱根峠から湖尻峠までの一般区間は7時から19時の間のみで、夜間は閉鎖となること。芦ノ湖畔といえる湖尻水門から湖尻峠までの特別区間は、静岡県の県道337号線と箱根スカイラインの2つの路線が湖尻峠で交わるという構造上、営業時間外は無料開放となりますが、最も景観も走りも楽しめる一般区間には立ち入ることはできません。また観光道路として有名な道ですので、季節によっては大型バスが走ることもあり、日中の交通量が多い日もあります。道の表情を楽しむため観光のクルマが増え始める前の時間帯にドライブを楽しみ、箱根や御殿場でブランチをして帰る、というのもひとつの楽しみ方です。もうひとつ、天候の流れ次第では霧が出ることがあるというのも覚えておいてください。
くれぐれも安全運転で!
文 嶋田智之
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