退屈する道はない アバルト695リヴァーレ試乗インプレッション by 佐藤久実

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計算されたデザイン

「アバルト695Cリヴァーレ」は、イタリアの老舗ボートブランドとして有名な「リーヴァ」社とのコラボレーションにより誕生したモデルで、最新鋭56フィート・フライブリッジボート「リヴァーレ」からのインスピレーションを受けた内外装が特徴だ。砂浜越しに海を見たかのような、グレーとブルーの2トーンカラーのボディ、そして水平線をイメージさせるようなアクアマリンのラインがアクセントとして際立つ。

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特別なモデルのみに与えられる“695”を冠するアバルトの最新作「695リヴァーレ」。Riva社の高級ボート「リヴァーレ」にインスピレーションを受け、専用のエクステリアカラーやマホガニーのウッドパネルなどを採用。エンジンはシリーズ最強の180psユニットを搭載する。

一方で、随所にクロームパーツがあしらわれ、カーボンのエキゾースト、17インチホイールや、そのホイールから覗く、ブラックに塗られたブレンボのブレーキキャリパーなど、走りもタダものではないという雰囲気が漂う。“カワイイ”チンクエチェントがアバルトの手にかかるとここまで精悍になってしまうのだから、不思議だ。

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足回りは、専用の17インチアルミホイールを採用。ブレーキはブレンボのキャリパーにドリルドローターが組み合わされる。

そしてドアを開けると、シートをはじめブルーレザーが目に鮮やかなインテリアが広がる。トップを開けた時のボディカラーとのコーディネートまで計算されている。さらにダッシュボートには、まさにボートさながらの艶やかなマホガニーのウッドパネルがレイアウトされ、Rivaのロゴも。俄然、ラグジュアリー度が増し、ドライバーもボートに乗っているかのような優雅な気分になる。しかし、ステアリングセンターにはアバルトのロゴとエンブレム、足元にはアルミペダルにサソリのマークと、やはりインテリアも単にデザインコンシャスでエレガントなクルマではないことをアピールしている。

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インテリアはブラックを基調に、ブルーレザーを用いたシートやメーターフード、ステアリングホイールを採用。さらにマホガニーのウッドパネルが室内を上質に演出する。

というのも、車名に冠される695は、最上級モデルにのみ許されるものであり、リヴァーレもその心臓部には1.4リッターターボエンジンが搭載される。メーターフードの横に独立したブーストメーターが鎮座していて、あたかも俊足をアピールしているかのようだ。もちろん、それはダテではなかった。

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アバルト595/695を象徴する特徴的なターボメーター。なお、2018年にアップデートされたインフォテインメントシステムUconnect®は、Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応し、地図アプリによるナビゲーション機能やケータイの音楽再生、ハンズフリー通話などが可能。

優雅な気分だけじゃない

ノーマルモードで走ると、走り出しこそシフトアップの息継ぎを感じるが、ひとたびスピードが乗ってしまえばスムーズで、軽快なフットワークも気持ち良い。日常の走り慣れた道さえも、ワクワクしながらドライブできるような気分にしてくれる。そして、「SPORT」ボタンを押すと、インストルメントパネルのメーターのベースが赤くなる。その瞬間、ドライバーもパチッとスイッチを入れられたかのように、スポーツマインドが掻き立てられる。見た目だけでなく、アイドリング時のサウンドも重低音に変わるからなおさらだ。

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最高出力180ps、最大トルク230Nmを発生する1.4リッターターボエンジンには、アクラポビッチ製のカーボン仕上げハイパフォーマンスエキゾーストが組み合わされ、爽快なサウンドを発する。

そして、アクセルを踏んだ瞬間、先ほどまでとは別人、いや、別のクルマのようなレスポンスの良さで、加速していく。レスポンスだけでなく、明らかにトルク感も違う。スポーツモードでは、最大トルクが230Nmから250Nmまで高められるのだ。件のブーストメーターの針の跳ね上がり方も勢いを増している。さらにパドルシフトを使えば、小気味良い走りを楽しめる。

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もちろん、フットワークもこのパワフルなエンジンに負けていない。車体はコンパクトだが、ボディの四隅に配された17インチタイヤのおかげで安定感があり、それでいて、機動性も高い。ドライバーズシートに座った時のアップライトなポジションや、ちょっと大きめのステアリング径からは想像できないほど、キビキビとした走りを楽しめる。

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海を思い起こさせる内外装のブルーや、高級ボートをイメージしたマホガニーのインテリアなど、ラグジュアリーな雰囲気を持ちつつ、その走りにはやっぱりサソリのエンブレムに象徴されるアバルトならではの刺激があった。

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佐藤久実
大学時代からレースに参戦し、GT選手権や内外の耐久レースで活躍、過酷なサーキットとして知られる独ニュルブルクリンク24時間レースでクラス優勝も果たした。モータージャーナリストとして自動車雑誌やwebサイトに寄稿するほか、ドライビングレッスンのインストラクターや講師も務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員。

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