「五回目を迎えたアバルト デイズ」

一年で最もドライブ日和となる初夏、5月17-18日に、今年もアバルト愛好家のためのイベント「ABARTH DAYS」が開催された。
このイベントは、新旧アバルトの愛好家によって結成された、日本唯一のアバルト・クラブである“クラブ・アバルト”。および愛知“チンクエチェント博物館”が主催し、フィアット クライスラー ジャパンも特別協賛するものである。

今回のアバルト デイズもこれまでの通例に従って、初日は箱根・伊豆周辺のワインディングロードを堪能するタイム&クイズラリーとウェルカムパーティ。そして二日目は毎年イベントの拠点としてご提供いただいている“ニューウェルサンピア沼津”芝生広場を会場に、美しいクルマたちと愛車談義によるミーティングが開催されることになった。

ラリー1初日のタイム&クイズラリー。FIAT ABARTH 695と595が連なって箱根のワインディングを快走する。2気筒エンジン独特の排気音が、可愛らしくも勇ましいデュエットを奏でる。

この日は初夏の素晴らしい晴天に恵まれ、熱海近辺のシーサイドコースを走る695エディツィオーネ・マセラティと595コンペティツィオーネも、実に気持ち良さそうに見えた。

まずは初日、土曜日のドライブラリーには、約20台の新旧ABARTHが参加。うららかな初夏のドライブを、存分に楽しむことができたようだ。

ラリーを終えて、ニューウェルサンピア沼津にゴールする695トリブート・フェラーリ。ここで到着時刻を告げられ、スタート時刻からの通算タイムでラリーの順位が決定する。

なぜか予測よりかなり遅れて、最後尾でゴールしたFIAT Cinquecento Trofeo。名物コンビの搭乗する1990年代のABARTHは、果たせるかなブービー賞を獲得することになった。

そして夜には、恒例の賑々しいパーティ。この日のラリー表彰式やビンゴ大会で盛り上がったところに、もはやレギュラーともなった人気マンガ家、西風氏が登場し、夜の更けるまで愉しい語らいが続いた。

初日夜、ラリー表彰式を兼ねたパーティが終了したのちは、翌日のミーティング会場となる芝生広場がライトアップ。ここで、さらなるアバルト談議を続行する参加者も多かった。

明けて二日目、日曜日のミーティング会場は約50台のABARTHによって埋め尽くされることになる。クラシックモデルのトピックは、珠玉のレーシングベルリネッタが大集合したこと。ABARTH SIMCA 2000が2台。ABARTH SIMCA 1300、FIAT ABARTH 1000ビアルベロ・ロングノーズ、FIAT ABARTH 850レコルド・モンツァ、そしてFIAT ABARTH OT1300からなる強烈なラインナップが円陣を組んだ。

今回は、往年のクラシックABARTHの中でも最も華やかなレーシングベルリネッタが大集結。世にも豪華な円陣を組むことになった。ABARTH DAYS史上でも稀に見る光景である。

中でも赤いABARTH SIMCA 2000は、約40年前に日本上陸を果たしつつも、これまでほとんど公の場に出たことのない秘蔵車両。SIMCA 2000というだけでも超希少車なのに、新車時のオリジナル状態がほぼ完璧に維持された「奇跡の一台」だったのだ。
さらには、このイベントでは常連であるFIAT ABARTH 1000ベルリーナ・コルサTCRや、FIAT ABARTH 595/695もそれぞれ複数が来場。ここまで凄い布陣は、これまでのABARTH DAYSでも初めてだったのである。

クラブ・アバルトの重鎮S氏が、長い沈黙を破って出品した珠玉のABARTH SIMCA 2000。30年以上に亘り、公の場から姿を消していた一台は、驚異的なオリジナリティを誇る。

そして、この日最高のトピックとなったのは、FIAT ABARTH 595の50周年記念モデルとして誕生した“ABARTH 595 50th Anniversary”の紹介が行われたことだろう。そのオリジンたる、半世紀前のFIAT ABARTH 595の隣でアンベールされたニューカマー“595 50th Anniversary”は、クラシック595のエッセンスをディテールに至るまで完全再現していることから、会場に詰めかけたクラシックABARTH愛好家たちも興味津々。「50台の日本導入分が即完売となった」と聞くと、あちこちからため息が聞こえた。
今回のABARTH DAYSについて、オーガナイザー側から聞いたところによると、実は「第5回」を意識したことはまったく無かったという。しかし、ふたを開けてみれば、5回目の節目に相応しく、素晴らしく内容の濃い二日間となったのである。

ABARTHファンの前で、アンベールが行われたABARTH 595 50th Anniversary。隣には同じホワイトの元祖FIAT ABARTH 595が置かれ、基本デザインからディテールに至るまで忠実に再現されていることを物語っている。こんな素晴らしいお披露目が可能となるのは、国内ではABARTH DAYSをおいて、ほかにはあり得ないだろう。

初回のABARTH DAYSでは数えるほどの台数しかなかった新500系アバルトは、今回30台近くまで拡大。旧き良き595/695とともに、可愛らしくもワイルドな競演を見せた。

全日本ラリー選手権に参戦するmCrtのABARTH 500ラリーR3Tは、今回ゲスト参加。眞貝知志選手その人の操縦で同乗体験試乗が行われ、同乗希望者による長蛇の列ができた。